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枯山水のボードゲーム4タイトル

朝日新聞で紹介されたことを受けて、ボードゲーム『枯山水』の情報を求めてアクセスされる方が増えているようだ。しかし、枯山水をテーマにしたボードゲームはいくつかあるため、聞いていたのと違うものを参照しているかもしれない。
枯山水・日本庭園をテーマにしたボードゲームは、今話題急騰中の『枯山水』のほかに、日本で発売された『京都』、アメリカで発売された『枯山水の石庭』と『ゼンガーデン:枯山水と石庭』がある。順次紹介していこう。ゲーム内容だけでなく、それぞれのアートワークにも注目して、お間違えのないようにしていただきたい。
枯山水(Stone Garden)
砂紋と石の配置で美しい禅庭を作るゲーム。日本人の山田空太氏がデザインし、2014年11月に東京・立川のニューゲームズオーダーから発売された。砂紋タイルを絵柄が合うように並べ、その上に石コマを得点パターンができるように配置する。さまざまな得点パターンがあり、そのうちどれを狙い、どれを両立させていくかがポイントとなる。砂紋タイルの美しさと、塗装済みの石コマの取り合わせが何とも美しく、現在大きな話題となっている。2~4人用、10歳以上、60~90分。少量生産のため品薄となっているが、毎月150セットのペースで生産されているので、待っていれば入手可能。→ボードゲームショップ検索:枯山水
枯山水
京都(Kyoto)
自分の得意分野を伸ばして美しい庭園を作るタイル配置ゲーム。イギリス在住のドイツ人R.クニツィア氏がデザインし、同氏の来日を記念して2013年、東京・水道橋のメビウスゲームズから発売された。池・コケ・紅葉・砂利という4つの地形がさまざまなパターンで描かれているタイルを並べ。同じ模様でつながっているタイル枚数が得点になる。前の人に乗じて模様を延ばし、さらに大きな得点につなげられるかどうかがポイント。2~4人用、8歳以上、20~30分。入手が容易であり、日本語ルールも付いている。→Amazon.co.jp: 京都(KYOTO)/メビウスゲームズ/Reiner Knizia/
京都
枯山水の石庭(Karesansui: The Rock Garden)
厳しい師範の目にさらされながら、美しい石庭を作るゲーム。アメリカ人のJ.キセンウェザー氏がデザインし、同じくアメリカのグリフォンゲームズから2013年に発売された。集石場に集まっていく石を、自分の庭にある石と交換していく。石は少なければ少ないほどよく、あるパターンで配置されていると減点されてしまう。ひたすら石を取らないようにする我慢大会が繰り広げられる。イラストは勘違い和風。3~6人用、10歳以上、45~60分。今回紹介した4タイトルの中で1番のおすすめだが、残念ながら現在国内販売はなく、アメリカから個人輸入となる(英語ルール)。→Funagain Games: Karesansui
枯山水の石庭
ゼンガーデン:枯山水と石庭(Zen Garden)
池、松、石、芝のタイルを並べて、得点パターンを作るゲーム。ベルギー出身でカナダ在住のH.J.ヴァネーズ氏がデザインし、アメリカのメイフェアゲームズから2013年に発売された。庭園は全員共通なので、どんなパターンでもできるような広い庭を作ると、皆に利用されてしまう。自分のタイルだけに当てはまるようなちょっと入り組んだ地形を作りつつ、ほかの人の狙っているパターンを崩す。イラストは淡い水墨画調。2~4人用、10歳以上、25分。こちらも現在国内販売はなく、アメリカからの個人輸入(英語ルール)。→Amazon.com: Zen Garden Board Game
ゼンガーデン
今回の『枯山水』ブームに関して気になっているのは、興味をもった人のほとんどが遊んでいないということである。朝日新聞の記者さんから「実際に遊んだことがあるという人は初めてです!」と言われた。
確かに8100円という価格、累計で1000個も出荷されていないという品薄で入手しにくいということもある。しかしそれ以上にボードゲームを遊ぶには、遊んでくれる人を募り、時間と場所を約束し、そこに約束通りに集合しなければならない。ボードゲーム愛好者の中でさえ、このハードルのために、買うだけで遊べない人が多く存在する。
さらに『枯山水』はタイルの譲渡や略奪ルール、人物カードの特殊能力などがあって単純ではなく、得点パターンも一度で憶えられるような数ではない。普段ボードゲームを遊ばない人が、何とか『枯山水』を入手したとして、無事遊ぶところまで至るか。せっかく入手できたのに数々のハードルが立ちはだかり、「ボードゲームは懲り懲り!」になってしまわないか。
そのようなわけで普段ボードゲームを遊ばない方が『枯山水』を入手できて、人を集めて遊ぶ機会ができたならば、もう1品2品ついでに買って用意しておくことをオススメしたい。『枯山水』の発売元であるニューゲームズオーダーからも、遊ぶ年齢や人数に合わせてたくさんの面白いゲームが発売されている。『コヨーテ』『交易王』『モダンアート』『ナゲッツ』『ビッグチーズ』あたりなど、検索してみてピンときたらどうぞ。

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クレムリン(Kremlin)

目立ったら粛清
クレムリン
ソビエト政界の黒幕に扮し、息のかかった政治家を出世させて書記長に仕立てあげる政治ゲーム。ソ連崩壊前の1986年にファタ・モルガーナ社(スイス)より発売され、ドイツ年間ゲーム大賞にノミネート。アヴァロンヒル社(アメリカ)から英語版も発売されたことがある作品を、昨年、ニューゲームズオーダーが日本語版にした。ファタ・モルガーナ版とアヴァロンヒル版の両方のルールが選べるようになっており、緻密な陰謀合戦も、どんでん返し合戦も両方楽しめる。
26人の候補者から密かに10名を選び、1~10点の影響力をつけてスタート。最終的に3回パレードに成功した書記長か、いなければ最後に書記長だった人物に、影響力を多くつけていたプレイヤーが勝利する。しかし影響力をどれくらい付けているかは、できるだけ明かさないほうがよい。明かせばみんなに目をつけられ、シベリア送りになってしまうからだ。
ゲームは年単位で進める。KGB長官による粛清、国防大臣による告発とスパイ容疑、書記長による人事異動などがあり、そのときに各ポストに付いている人物に対し、最も多く影響力をつけているプレイヤーが意のままにできる。このとき、影響力は自分が実際につけている数字以下まで宣言できるというのがルール。目立たないようできるだけ低い数字を言っておき、ほかの人が上げてきたら応じるのがよい。「オシリペンコに1つけてます」「私は2」「じゃあ3」「……譲ります」
このほかに注意しなければいけないのが病気と年齢である。粛清やスパイ容疑など、ストレスの多い仕事をした人物は(肉体)年齢が上がり、ダイスによる健康チェックで病気になりやすくなる。病気マーカーが3つになると死亡してしまうので、療養して病気マーカーを取り除こう。
シベリア送りになっても終わりではない。政治局員(上層部)の人物を使い、5歳加齢させることでシベリアから帰還できる。帰還しても、「人民リスト」、「政治局員候補」「二級局員」「一級局員」と、書記長になるにはたいへんな道のりが横たわっているわけだが。
5人プレイで2時間。最初にKGB長官で、すぐに書記長に昇進した「ヌイキン」が2回パレードを行ったところでシベリア送りに。大本命だったことが警戒されて影響力を多くつけるプレイヤーがいなかった。書記長はあまり動かなかったものの、就任時には高齢で病気になっていることが多く、パレードが成功できない。膠着状態の中、終盤に大幅な若返り人事があり、それを見越していた鴉さんが上層部を掌握し、誰が書記長になっても勝てる状態を築いて勝利。私も若手を何人かもっていたが、健康チェックのとき20分の1の確率で突然死してしまうなど、不運が続いた。
「こいつ、そろそろ粛清しておきましょうよ」「せやな」「サナトリウムに行ってる間に、スパイ容疑かけられた!」「まあ当然でしょう」。オリジナルが発売された30年前ならではの冗長さを感じてしまうが(シベリア送りになった人物にもうワンチャンスあるぐらいの長さ)、ゲーム中の会話が録音したいくらいに楽しい。
クレムリン
U.ホステトラー/ニューゲームズオーダー(2014年)
3~6人用/50歳以上/20~120分