ドイツ年間ゲーム大賞2016ノミネート
ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)選考委員会は本日、各部門のノミネート作品と推薦リストを発表した。例年通り、赤いポーンの年間ゲーム大賞、青いポーンの年間キッズゲーム大賞、灰色のポーンの年間エキスパートゲーム大賞の3部門について各3タイトル、合計9タイトルがノミネートされた。ノミネート作品の中から、赤と灰色のポーンは7月18日にベルリンで、青いポーンは6月20日にハンブルクで大賞を決定する。
メインである年間大賞(赤)にノミネートされたのは、チーム戦のヒントゲーム『コードネーム』と、エジプトを舞台にした石材建設ゲーム『インホテップ』、ジャングル探険ゲーム『カルバ』の3タイトル。新機軸のコミュニケーションゲームと、骨太のドイツゲーム2タイトルの競争となった。推薦リストにはバラエティ豊かな5タイトルが選ばれている。
エキスパートゲーム大賞(灰色)のノミネートには、スコットランドを舞台にしたタイル値付けゲーム『スカイアイランド』、人気協力ゲームにキャンペーン制を導入した『パンデミックレガシー:シーズン1』、フランスのストーリー謎解きゲーム『タイムストーリーズ』が選ばれた。やや難易度の高いドイツゲームに、ネタバレ禁止のナラティブゲーム2タイトルの一騎打ちとなっている。推薦リストには、ゲーマーから高い評価を集めている『モンバサ』など3タイトルが入った。
キッズゲームはアバクス、ペガサス、ハンスと、一般・ゲーマー向けの出版社が発表したものが選ばれた。この点、キッズゲーム専門だったハバ社が年間ゲーム大賞にノミネートされているのと交差しているところが面白い。今年のボードゲームシーンを概観するT.フェルバー審査員のコメントは後ほど発表される予定。
【年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)ノミネート】
コードネーム
(Codenames / V.フヴァチル / チェコゲーム出版)
インホテップ
(Imhotep / P.ウォーカー・ハーディング / コスモス)
カルバ
(Karuba / R.ドーン / ハバ)
推薦リスト:スパイフォール、アニマルオンボード、7人のマフィア、クレージーヴォルツ(Krazy Wortz)、クウィント
【年間エキスパートゲーム大賞(Kennerspiel des Jahres)ノミネート】
スカイアイランド
(Isle of Skye / A.ペリカン&A.プフィスター / ルックアウトシュピーレ)
パンデミックレガシー:シーズン1
(Pandemic Legacy Season 1 / M.リーコック&R.ダヴィオー / ズィーマンゲームズ)
タイムストーリーズ
(T.I.M.E Stories / M.ロゾイ / スペースカウボーイズ)
推薦リスト:世界の七不思議デュエル、ブラッドレイジ(Blood Rage)、モンバサ
【年間キッズゲーム大賞(Kinderspiel des Jahres)ノミネート】
レオ
(Leo muss zum Friseur / L.コロヴィーニ / アバクスシュピーレ)
チャーリーのキッチン
(MMM! / R.クニツィア / ペガサスシュピーレ)
ストーンエイジ・ジュニア
(Stone Age Junior / M.トイブナー / ハンス・イム・グリュック)
推薦リスト:フラッターシュタイン城(Burg Flatterstein)、いねむり城、秘密のドラゴン洞くつ(Die geheimnisvolle Drachenhöhle)、ジャングル仲間(Dschungelbande)、ハリーホッパー、私の宝(Mein Schatz)、それ言ってジュニア(Sag’s mir! Junior)
・Spiel des Jahres e.V.:Die Nominierten 2016 stehen fest
インホテップ(Imhotep)
どの現場に運んでやろうか
船に石材を積み込んで5つの現場に届け、ピラミッドやオベリスクなどを建設するゲーム。オーストラリアのデザイナー、P.W.ハーディング(『すしごー』)がコスモス社(ドイツ)から発表した作品で、多様な得点方法の選択が悩ましい。
手番には石材をそりの上に3個補充するか、そりの上の石材を船に1個載せるか、石材が載った船を1隻空いている現場に移動するかの3択。船が現場に着くと、石材をおろしてさまざまなことが起こる。
市場では置いてあるカードを獲得する。カードは2アクションを続けて行えるもの、最後に得点になるもの、石材を直接現場に置けるものなどがあってゲームの進行を有利にしてくれる。
ピラミッドではピラミッド状に石材を積み、その位置によって得点。神殿は5つごとに重ねておき、ラウンド終了時に上から見えるものについて得点、埋葬室は石材を並べ、縦横につながっていればいるほど得点が増える。オベリスクは色ごとに分けて積み上げ、ゲーム終了時に高い順に得点が入る(現場ボードは表裏になっていて、少しずつ効果が異なり、自由に組み合わせて遊ぶことができる)。
なお石材は、船に載っている順で現場に下ろされるので、船の中での順序も重要である。ピラミッドなら高得点が入る位置を狙い、神殿なら、できるだけ上に重ねられない位置を狙う。しかしみんながそれを狙っているからなかなか思い通りにはいかない。明らかにこの現場狙いだろうという置き方をすると、別の現場に流されてしまうだろう。
全部の船が現場に着いたらラウンド終了。6ラウンドでゲーム終了となる。ラウンドが進むにつれて、石材を届けたい現場と別にいらない現場がはっきり分かれてくるので、ほかの人の有利にならないように船を移動したいところ。しかし船には複数のプレイヤーの石材が相乗りしているので、利害が一致するとは限らない。
4人プレイで30分。お互いに高得点を出させないように牽制しあう厳しい展開になった。しかし相手の妨害にばかり気を取られていると、肝心の自分の得点が下がってしまう。いろいろなプレイヤーと部分部分で協力して、得点を伸ばしたほうが効率がよいと気付いたのはもう終盤だった。
エリアマジョリティーのインタラクションに加えて、石材を補充するタイミング、石材を積む場所、どの現場に移動するかといった選択に考えどころが多い作品。それでいて無闇に複雑にしていないところに好感がもてる。
Imhotep
P.W.ハーディング作/コスモス(2016年)
2~4人用/10歳以上/40分