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モンバサ(Mombasa)

ゲーマーの快楽ポイントぎっしり
モンバサ
19世紀アフリカを舞台に、4つの都市から東アフリカ会社の交易所を増やしていくゲーム。カードのプロット、デッキ構築、セットコレクション、陣取り、特殊能力、ワーカープレイスメントと、要素をぎっしり詰め込んだゲーマーズゲームだが、煩雑な手続きがなくスマートに仕上げられているのは見事というほかない。
メインとなるのはカードのプロットによるアクション選択である。毎ラウンド、手札のアクションカードから3枚(後で増やせる)を選び、自分の前に置く。そしてカードに対応するアクションを1つずつ行っていく。アクションは以下の5種類。
「商品カード(コーヒー、バナナ、綿花)」を使って、場から更に強いアクションカードを取る。こうして自分のデッキを強化していくことができる。あるいは「会社トラック」のマーカーを進めると、特殊能力のボーナスやゲーム終了時に得点になる株が手に入る。[デッキ構築・特殊能力]
「探検カード」を使って、いずれかの会社の周辺からアフリカの奥地に向かって交易所を建設していく。交易所はたくさん建てるほど、その会社の株価が上がる仕組みだが、アフリカは思いのほか狭い。一度建ててもほかの会社に乗っ取られることがある。[陣取り]
「簿記係カード」を使うと、未使用の商品カードで帳簿を達成することができる。帳簿には「綿花2+コーヒー2」などと指示されており、その商品が手元にあれば達成となる。ゲーム終了までにどれだけ多くの帳簿を達成できるかも、勝敗を左右する。[セットコレクション]
「ダイヤモンド商人カード」を使うと、ダイヤモンドトラックを進めることができる。これも終了時までにどれくらいダイヤモンドを集めたかによって得点が変わるので重要だ。
5つ目のアクションはカードを使わない。自分のマーカーを早い者勝ちでボーナススペースに置いて、アドバンテージを得る。スタートプレイヤー、カードの廃棄、商品の優勢ボーナス(ほかの人より多く商品を出していれば会社トラックのマーカーを進める)、追加アクションなどがこれにあたる。[ワーカープレイスメント・特殊能力]
アクションは1つずつ、全員がパスするまで続けるが、早い者勝ちのアクションもあるため、優先順位をよく考えてアクションを選ばなければならない。どのカードをプロットするか、プロットしたカードをどの順番で使うかを考えるのは非常にワクワクする。
アクションが終わってからもひとひねり。使用済みカードは3つのスロット(後で増やせる)に分けて休息させ、次のラウンドで手札に戻ってくるのは1スロットしかないのである。カードを早く手札に戻そうとすると戻ってくるカードが少なくなり、たくさん戻そうとすると、何ラウンドか休ませて置かなければならない。このため先の先を考えた手札マネージメントが求められる。
7ラウンドでゲーム終了。所持金、持ち株数×株価、ダイヤモンドトラック、帳簿トラックの得点を合計して最も多い人が勝ち。全ての得点を伸ばすよりも、偏り気味のほうが得点が高い。
4人プレイで180分。私は会社トラックで「バナナでカードを取るときは1安くなる」という特殊能力を取ったので、これを活かして商品を増やし、交易所に注力する作戦。高いバナナカードを獲得して、さらに高い商品を狙った。しかし簿記係カードをあまり取れなかったのが響き、帳簿トラックが狙ったほど進まず。会社トラックが分散してしまい、大株主になることもできない。その間に同じ会社を協力して育てた鴉さんとぽちょむきんすたーさんの得点が伸び、さらにダイヤモンドトラックも充実させた鴉さんが1位。一方、何度かカードを廃棄してボーナスを獲得していたhataさんは終盤身動きが取れなくなっていた。足の引っ張り合いはもってのほか、相乗りや協力がポイントのようだ。
要素ぎっしりでプレイ時間は長めだが、できることが可視化されていてゲームを見通せる上に、プロットは全員同時で、アクション選択は割とさくさく進むのでストレスを感じない。やりたいことがたくさんあるのに少ししかできないというタイプのゲームで、最後まで熱中して楽しめる。
Mombasa
A.プフィスター作/エッガートシュピーレ(2015年)
2~5人用/12歳以上/75~150分

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ドイツ年間ゲーム大賞2016ノミネート:審査員評

2016年のボードゲームについてドイツ年間ゲーム大賞審査員長のコメント
「やっとリストができた。」ほぼ10ヶ月にわたる選考作業と3日間の缶詰の後、38回目の準備ができた。評論家による「ドイツ年間ゲーム大賞」審査員が、ボードゲームに関心のある皆さんに、傑作のボードゲームを提示する。我々の推薦とノミネートの目的は、1年間を通して質の高いボードゲームを概観すると同時に、さまざまなボードゲームのシステムについて、できる限りの多様性を提示することである。我々の願いは、このリストの中からボードゲームを遊ぶ人なら誰でも1タイトルは、好みと要望に合ったものを見つけて頂くことだ。
今年、みなさんご存知の3色のカテゴリーで24タイトルを推薦しよう。青はキッズゲームで、別の審査員によって選ばれている。赤は全ての方々向け、灰色はゲームのルールの習得と運用についてすでに経験のある方々向けである。
「ドイツ年間ゲーム大賞」と「ドイツ年間エキスパートゲーム大賞」の審査員9名で、14タイトルをリストに入れた。もともとのボードゲームメーカーはさらに国際的で、以前のデザインスタイルを逸する驚くような新しいオリジナルシステムも現れている。審査員がリストに挙げたのはとてもコミュニカティブで、より協力的なボードゲームであり、また重要なトレンドとして、ストーリーを語るボードゲームがある。
エキスパートゲームの分野では、ほとんど文学に匹敵する品質をもち、ノミネートに値する革新的なシステムが2つある。『パンデミック・レガシー』と『タイムストーリーズ』はどちらも協力ゲームで、一晩で終わるような古典的な枠組みでは終わらない。TVシリーズの原理がボードゲームのテーブルに移植されている。深遠なストーリーが数ゲームにわたって展開していく。『パンデミック・レガシー』は有機体のように絶えず変異し、ゲームボードとルールが変わる。『タイムストーリーズ』ではタイムトラベラーが繰り返し冒険をして謎を解いていく。この2つのボードゲームはナラティブな驚きがあり、「消費される」ため、古典的なボードゲームのように何度も繰り返し遊ぶことができない。その点、3つ目のノミネート作『スカイアイランド』とは対照的である。『スカイアイランド』では有名なスコットランドの島でウィスキーと羊の世界にプレイヤーを招待する。発売時期は早かったものの、繰り返し遊んでも飽きることがない。
謎を解いてコードを解読するゲームは、推薦リストにも入っている。『コードネーム』『スパイフォール』『クレージーヴォルツ』で、多人数でもコミュニカティブな連帯経験を強調したい。『コードネーム』のほかに「ドイツ年間ゲーム大賞」にノミネートされた2タイトル『カルバ』と『インホテップ』は、みんな同時にひとつのイベントに巻き込み、長い待ち時間が発生しない。テーマ的に3つのノミネート作品は、スパイ、ジャングルでの研究旅行、古代エジプトのモニュメント建築現場にプレイヤーを誘う。リストで注目するところは、ハバ社のような古典的なキッズゲームの出版社が突然ファミリーゲーム分野に進出する一方、主に難易度の高いゲームで知られる出版社が、キッズゲームを発表しているところだ。
灰色の賞にノミネートされた『世界の七不思議デュエル』は洗練された2人用ゲームで、『パンデミック・レガシー』やダイスゲームの推薦『クウィント』と同様、既存のボードゲームシリーズに属する。『ブラッドレイジ』は攻撃的な外見と実際の雰囲気が異なるのに驚かされる。『モンバサ』はこれまでと同様、難易度的にノミネート可能なエキスパートゲームの水準を超えているため推薦リストに入れた。
発表している対象年齢とプレイ時間は、出版社によるものをそのまま採用していない。つまり実際にプレイしてみて相応しいものにしている。もうひとつ指摘したいことは、「ドイツ年間ゲーム大賞」の審査員はゲームのルールも評価していることである。出版社によっては注意深く構成されたルールに力を入れているが明らかに分かるものがある一方、ゲームとして素晴らしいのでルールブックの小さな不足を大目に見たものもある。しかし今年も残念ながら、よいゲームながら理解できないルールのために落選したものもある。外国の出版社のボードゲームでは、ルールの構成や記述が翻訳で改善されず、そのままになっているものもある。そのほかの認識としては、審査員の観察ではボードゲーム分野での電子化・デジタル化はまだ本格的に達成されていない。
まだ2ヶ月間のお楽しみがある。それぞれ3タイトルずつノミネートされた「ドイツ年間ゲーム大賞」「ドイツ年間エキスパートゲーム大賞」でどれが大賞に選ばれるかは、7月18日月曜日にベルリンで行われる授賞式で決定される。再びライブストリームで中継される予定だ。それまでたくさんボードゲームを楽しまれることを希望する。
トム・フェルバー
ドイツ年間ゲーム大賞審査員長
Spiel des Jahres e.V.: Kommentar des „Spiel des Jahres”-Vorsitzenden zum Spielejahrgang 2016