ボードゲーム十大ニュース2023
大晦日に恒例の今年の主なニュースをまとめ。当サイトの記事のアクセス数を参考にして、今年を特徴づけるものという観点で管理人の独断でランキングした。昨年の十大ニュースはこちら。
- 『カタン』の作者K.トイバー逝去
『カタン』の作者であるクラウス・トイバー氏が4月1日、70歳で急逝した。ドイツ年間ゲーム大賞を4回受賞し(『バルバロッサ』『貴族の務め』『ドリュンター・ドリューバー』『カタン』)、W.クラマー、R.クニツィアらと共に「ドイツゲーム」の黄金期を作ったボードゲームデザイナーで、特に『カタン』シリーズでは拡張セットやシナリオを含め200タイトル近い製品を発表し、41カ国70カ国で4000万セット以上を売り上げた。
「良いボードゲームとは、敗者も楽しいボードゲームである」「対戦相手が『また明日あなたと遊びたい』と思うようなプレイをしよう」などの名言を遺す。カタン大会やエッセン・シュピールでは追悼スライドが流された。
・『カタン』の作者クラウス・トイバー氏逝去
・ボードゲームの名言集 - ガチャガチャにボードゲーム
各社が競い合うようにミニチュアボードゲーム・カードゲームを発売。3月にバンダイのガシャポンで「ミニチュアオセロコレクション」(全4種、1回500円)、5月にタカラトミーアーツのガチャで「すごろくや ミニチュアカードゲームコレクション」(全4種、1回400円)、7月にアイピーフォーのカプセルトイで「カプセルボードゲーム ーはぁって言うゲームminiー」(全4種、1回300円)、8月にバンダイのガシャポンで「ボードゲームミニチュアコレクション」(全3種、1回500円)が発売された。「すごろくや ミニチュアカードゲームコレクション」はゲームマーケットのすごろくやブースでも販売され、すぐに売り切れ。サイズが小さくて遊びにくいという問題も指摘されている。
・ガチャガチャにすごろくやのカードゲーム
・カプセルトイで『はぁって言うゲームmini』発売
・ガシャポンに「ボードゲームミニチュアコレクション」 - エッセン・シュピール新体制で40回目
10月のエッセン・シュピールが40回目を迎え体制を一新。昨年1月から経営はフリードヘルム・メルツ社からニュルンベルク・シュピールヴァーレンメッセ社に引き継がれていたが、長年主宰してきたドミニク・メツラー氏が今年から引退。新しいスタッフでロゴの変更(生成AIのイラストで物議)、マスコットキャラ「ウィープル」、ホールのジャンル分け、専用アプリなど新しい試みを次々と打ち出した。シュピールでは40年の歴史を振り返るトークショーが行われたほか、ゲームマーケットとのコラボも始まり、2023秋にはコミュニケーションディレクターのR.デ・クルア氏が来日して相互出展について対談を行った。来年はゲームマーケット発の合同ブースが企画されている。
・シュピール’23:ドイツゲーム賞授賞式&プレビュー
・ゲームマーケット2023秋:レポート - ボードゲームカフェ・プレイスペース全都道府県に
47都道府県で唯一ボードゲームのプレイスペースがなかった佐賀県で、4月にオープンした「さいふる モラージュ佐賀店」でプレイスペースを設置し、全都道府県にボードゲームカフェまたはボードゲームプレイスペースが存在する状態となった。その一方で大阪・日本橋のボードゲームショップ「キウイゲームズ」が閉店するなど、新型コロナ5類移行の後も客足が戻らず苦しい経営実態も明らかになっている。
・ボードゲームショップさいふる、佐賀に2号店をオープン
・キウイゲームズ閉店、12年の歴史に幕
・ボードゲームカフェ/プレイスペースの「平均寿命」 - 『IKI:江戸職人物語』が初のドイツ年間エキスパート大賞ノミネート
5月、山田空太氏のボードゲーム『IKI:江戸職人物語』が日本人作品としては初めて、ドイツ年間エキスパート大賞(Kennerspiel des Jahres)にノミネートされた。同賞は2012年に始まり、12年目を迎える。過去には上杉真人氏の『ペーパーテイルズ』(2019年)と慶應HQの『コーラ:ライズ・オブ・アン・エンパイア』(2022年)が推薦リストに選ばれていた。凱旋日本語版はグループSNEから発売されている。
・ドイツ年間ゲーム大賞2023ノミネート
・火事と喧嘩は江戸の華『IKI:江戸職人物語』日本語版、9月22日発売 - ゲームマーケットにルチアーニとウォレス
5月のゲームマーケット2023春に、イタリア人ボードゲームデザイナー、S.ルチアーニ(『マルコポーロの旅路』『バラージ』『ダーウィンズ・ジャーニー』)がゲスト来場。12月のゲームマーケット2023秋にはオーストラリア在住のイギリス人ボードゲームデザイナー、M.ウォレス(『ブラス』『蒸気の時代』)がゲスト来場し、特設ステージでファンからの質問に答えた。日本語版やファン拡張の制作が盛んで、多くのファンが集まった。
・ゲームマーケット2023春:1日目レポート
・ゲームマーケット2023秋:レポート - BGGランキング1位に『ブラス:バーミンガム』
ボードゲームデータベース「ボードゲームギーク」にて2月、『ブラス:バーミンガム』がランキング1位となった。それまでの1位は2017年12月から『グルームヘイヴン』で、約5年ぶりの交代となった。その前には『パンデミック:レガシーシーズン1』『トワイライトストラグル』『アグリコラ』『プエルトリコ』『チグリス・ユーフラテス』が1位になったことがある。
『ブラス:バーミンガム』は12月に行われた日本版The One Hudredでも前年の4位から2位に上昇した。
・日本版The One Hundred 2023、1位『テラフォーミング・マーズ』7年連続 - ゲームマーケットでユーロゲーム体験コーナー
5月と12月のゲームマーケットにて、特設ブース「本当に面白いユーロゲームの世界」が設置。ドイツ年間ゲーム大賞の受賞作を中心としたいわゆる「ユーロゲーム」がスタッフのルール説明付きで遊ばれ、多くの人で賑わった。太田出版のムック本とのタイアップ企画にとどまらず、定番の輸入ボードゲームを再評価するものとして注目される。
・ムック『本当に面白いボードゲームの世界 Vol.2』9月8日発売 - ゴールデンボックス賞制定
国内のボードゲーム制作者にフォーカスして優れた活動を讃える賞が発足。4月に7部門で『まちがいさがし開発課』など7作品が発表された。賞品として金のボードゲーム箱が授与された。デザイナー・イラストレーター・プロデューサー・ディレクター・翻訳者などの会員約40名が専門家の目で推薦し、運営委員会がノミネートした上で、再び会員による最終投票で選ぶという、ボードゲーム業界従事者によるアワードで、今年も同じ時期に開催予定となっている。
・ゴールデンボックス賞2022ノミネート発表
・ゴールデンボックス賞2022に『まちがいさがし開発課』ほか - ボードゲーム新書発売
11月に河出書房新社より新書『ボードゲームで社会が変わる: 遊戯するケアへ』が発売された。著者は現代評論家の與那覇潤氏と当サイトの管理人で、購入ガイドにとどまらず、各界の専門家が関連するボードゲームをプレイした体験記や、「えっ!」と驚くテーマのボードゲームなど、趣向を変えて一般層にアピールした。
・書籍『ボードゲームで社会が変わる: 遊戯するケアへ』11月20日発売
ごきぶりループ(Kakerlaloop)/ごきぶラキュラ(Kakerlacula)
小学生向けのボードゲーム体験教室では、できるだけ国内で入手可能なものをもっていくようにしているが、毎回大人気で外せないのが『ごきぶりキッチン(Kakerlakak、2013)』である(手に入らないことはないが、輸入版で高い)。私の所有する中で今年最も多く遊ばれたゲームといってよい。どれくらい人気かというと、途中でボタン電池が切れるので予備をもっていかなければならないほどである。
そこで後継作が気になり、エッセン・シュピールの中古ショップで購入してきたのがこの2タイトルである。どちらもブラント夫妻のデザインと期待が高まる。ちなみに『ごきぶりキッチン』も15ユーロ(2300円)で山積みになっていた。
『ごきぶりループ(Kakerlaloop、2015)』はすごろく。ゴキブリが立体通路を通って地下と地上を行ったり来たりしており、突進してマスの外に押し出されると振り出しに戻らなければならない。ゴキブリがぶつからない途中の高台に避難しつつゴールを目指す。
コースは2コースあってどちらを通ってもよいが、混んでいるほうが先に進みやすい。微妙なのは判定で、ゴキブリに押し出された結果、マスの円からはみ出していなければセーフだが、微妙なところでどっちだろうかと協議しているうちにゴキブリがまたぶつかってきてまた位置が変わる。そのあたりのアナログぶりがスピードスリルと相容れない。あと立体コースを通るときに馬力がいるせいかゴキブリがへばりやすいようだ。
『ごきぶラキュラ(Kakerlacula、2018)』はゴキブリが動き回るお城の中をロウソクに火をつけて回る協力ゲーム(対戦モードもあり)。ゴキブリにぶつけかるとスタートに戻ってニンニクを失う。すべてのロウソクに火をつければ全員の勝ち、その前にニンニクがなくなれば全員の負け。
お城の外にカタパルトがあり、たまにゴキブリがそこまで行くと(行き止まりになっている)、ニンニクを取り返すチャンス。カタパルトを飛ばして月の穴に命中するとニンニクが戻る(笑)。
カタパルトが面白い仕掛けだが、ゴキブリがなかなかカタパルトに行ってくれず、1ゲームに1~2回行くかどうかぐらいの頻度。その前に普通にクリアしてしまった。ゴキブリは壁沿いに移動するので、子どもたちのコマが部屋の中央にあるとなかなかぶつからない。
比較した結果、第一弾の『ごきぶりキッチン』が最も面白い。ルートパズルのような趣きと、人を陥れようとしたら自分のところにやってくるというような、空気を読むようなゴキブリの動きに歓声が上がる。来年エッセン・シュピールに行ったら『ごきぶりキッチン』を買うつもりだ。