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ドイツ・ボードゲーム評論の日レポート

第1回となる「ボードゲーム評論の日」というイベントが6月、ドイツ・ハンブルクで開催された。ドイツ年間ゲーム大賞公式サイトに掲載されているレポートを翻訳。
文化的な評論と新聞の学芸欄
ドイツ年間ゲーム大賞協会がハンブルクで「ボードゲーム評論の日2019」を開催したとき、60人以上のボードゲームジャーナリストとブロガーが訪れた。「残念なことに、ボードゲームに関する記事の多くは、何をするのかほとんど理解できません」と、オープニングスピーチでS.ゴーリッシュ氏(『ノイエン・プレッセ』学芸欄編集者)は語り、ワークショップとディスカッションに共通する主題を説明した。
「私たちが書いているレビューは、ルールの要約に終始しています。」ドイツ年間ゲーム大賞の審査員でもあるゴーリッシュ氏は嘆く。「私たちは人々がボードゲームを開封するところだけ見て、カードの運とかメカニズムについて議論する。でも、プレイヤーが何を感じるかについてはほとんど分かっていません。」本当に遊び心があり、人を笑わせたり、私たちを感動させたりするボードゲーム評論は稀だという。ハノーファーの地方紙『ノイエン・プレッセ』の学芸欄編集者でもあるゴーリッシュ氏は、なぜ冷静なゲームの説明ばかりが配信され、感情の説明があまりにも稀なのはなぜか問いかけた。
「でも現代のボードゲームには、エキサイティングで楽しいレビューの可能性があります。『パンデミック・レガシー』には、少なくとも人気のあるテレビシリーズと同じくらいの物語の深さがあります。『グリッズルド』は、最後のページを読み終わった後でも閉じたくない小説のように私たちを感動させます。」とゴーリッシュ氏は語気を強める。「なぜ私たちは、何を経験するかではなく、ルールの枠組みだけでボードゲームを評価しまうことが多いのだろうか?」
ボードゲームを体験することは、基本的なことである。「ボードゲームが私たちに喜びを与えるとき、私たちを苛立たせるとき、私たちにユニークな経験をもたらすときを私たちは知っています。それを表す言葉を見つけましょう! 他の人々を楽しませ、ボードゲームを遊ばないと何かを取り逃がしているような感覚をもたせましょう! 私たちがやっていることを誇りに思いましょう!」ゴーリッシュ氏は、「ボードゲーム評論の日」の参加者に訴えた。「批判的であり続けること! そして遊び心があること!」
(つづく)
Spiel des Jahres e.V.:Tag der Brettspielkritik Teil 1:Kulturkritik und Feuilleton

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四国(Shikoku)

「お先にどうぞ!」「いえいえ、そちらこそお先に!」
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お遍路で知られる四国八十八箇所霊場の23番薬王寺。徳島にあり、名前の通り薬師如来を本尊とするお寺だ。ここには厄坂という厄落としの石段があり、一段ずつ賽銭を置いて登ると厄が落ちるとされる。実に年間100万人以上が訪れるという。
この厄坂を舞台にしたスペインのボードゲームが『四国』だ。33段の女厄坂を競って上るレースゲームだが、勝利するのは前から/後ろから2番目の謙虚な参拝者だ。
コマの進め方はカードプレイによる。順番に手札から1枚を出し、そのカードに書かれたわらじマークの分だけ自分のコマを進める。ただし、数字順に前から/後ろから2番目のカードを出した人は進めない。自分のコマは、遅すぎても早すぎてもいけないから、うまくコントロールしたい。
手札の補充は、一番数字の小さいカードを出した人が山札から引き、後は小さい順に前のラウンドで出されたカードから好きなものを1枚ずつ取っていく。こうして出されたカードの多くが循環し、誰かの手札に返っていくことになる。現在の状況だけでなく、少し先の展開も見据え、さらにライバルがどのカードを補充するかも考えると悩ましい。
最後にカードを出す人は、手札が許せば進むか進まないかをコントロールできるが、前に出す人ほど確実ではなくなる。しかし、カードが循環することによって次第にほかのプレイヤーの手札内容が読めるようになり、「おそらく1番を取れる」「多分後ろから2番目にはならない」といったプレイができる。こうして運の要素をうまく抑えているところが面白い。
誰かがゴールに到達したときゲームは終了となるが、ゴールしてしまったプレイヤーは敗者である。ゴール手前でみんなが踏み止まろうとする終盤はとてもエキサイティングだ。
5人プレイで30分ほど。序盤に他プレイヤーの策略ですっかり置いていかれた鴉さん。とりあえず1人が最下位確定となれば、カードプレイも楽になる。しかし鴉さんはわらじの多いカードで巻き返し、終盤は混沌とした状況に。わらじの小さいカードでしのぎを削っていたが、私が我慢しきれずゴールしてゲーム終了。
各プレイヤーが1枚ずつカードを出すところで、読み通りだった嬉しさや、予想を覆される驚きでゲームが盛り上がった。プレイ時間が短く、プレイ人数の幅が3~8人と広いので、多人数ゲームの定番にもなりそうだ。
Shikoku
ゲームデザイン・E.プハダス/イラスト・A.サレス
GDMゲームズ(スペイン、2018年)+グループSNE(2019年)
3~8人用/8歳以上/30~40分