アズール:サマーパビリオン(Azul: Summer Pavilion)
揃えて大得点、囲んでボーナスタイル
『アズール』がドイツ年間ゲーム大賞とドイツゲーム賞をダブル受賞して3年目。このゲームの特性として拡張が入れにくいということもあったのだろう。互換性のないスタンドアローンの作品である『シントラのステンドグラス』が昨年発売され、さらに今年この作品が発売された。お披露目となったシュピール’19のスカウトアクションで4位。新作が急増して何を遊んだらいいか分からなくなっているご時世に、安心して楽しめるシリーズとしてブランディングに成功したといえよう。『ドミニオン』は昨年の『夜想曲』で拡張11タイトル目を数える。『アズール』も(キースリングのアイデアが尽きない限り)まだまだ発売されそうだ。
シリーズといっても、共通するのはタイルを取り方だけである。円形のお皿に袋からランダムに4つずつタイルが置いてあり、手番には1つのお皿を選んでその中の1色を取る。残ったタイルは中央に行き、中央から最初に取る人はマイナス点になるスタートプレイヤータイルも引き取らなければならない。
なお今回はラウンドごとにジョーカー色があり、その色のタイルを1枚追加で取る(しかもジョーカーとしてどの色にでも使える)というルールが加えられている。1回の手番で取れる枚数が増え、ゲームのテンポが上がった。
さて獲得したタイルの置き方だが、今回は色別にひし形を(六芒)星状に配置する。1つの星の中には1枚で置けるところから6枚いるところまであり、全部揃えるには同じ色のタイルが1+2+3+4+5+6=21枚必要ということになる。なお中央の星も1~6枚だが、6色全部を使わなければならない。
ゲーム終了時には、完成した星で大得点が入るので、基本的に一色を集めていく作戦だが、ほかにも、1のマス全部、2のマス全部……4のマス全部の得点もある。前手番のプレイヤーの動向を見て考えたいところだ。
さて、マスとマスの隙間にはタイルを置かないスペースがある。これが勝敗の鍵となるボーナスタイルだ。このスペースの周囲4マスをタイルで囲むと、中央ボードからボーナスタイルを1~3枚選んでもらえる。このボーナスタイルがあると星の完成も早まるが、スペースは5と6のマスの外側か、複数の星の間にあるため、どうしてもいろいろな星に手を出さざるを得ない。そうなると星の完成が遠のくというジレンマがある。
どこから置いたらいいかな?なんて思っているとあっという間に中盤。テンポが早い分、うまく回らなくてそのまま終了ということもある。ゲームが進むにつれてボーナスタイルのスペースが囲みやすくなってくるので、こっちも出来た、あっちも出来たと終盤にかけてブーストがかかるのが気持ちいい。
6枚まで置けるマスができたことで、最終手番の人がまとめて引き取って大量失点という事態はだいぶ少ない(4枚までなら次のラウンドに持ち越しもできる)。その代わり、スタートプレイヤータイルの失点は、そのとき取ったタイル枚数分ということになった。たくさん取りにくくなったが、その分、選択肢の広さでカバーされている。
タイルの材質は『アズール』初代と同じだが菱形になっており、美しく並んでいくさまは壮観。タイル配置の仕方、コンポーネントの美しさともに、初代・二代とはまた違った魅力を持つ作品である。エッセン・シュピールの試遊卓ではド下手で最下位だったので(対面の御夫人がダントツ1位)、次はもっと上手くやりたい。
Azul: Summer Pavilion
ゲームデザイン・M.キースリング/イラスト・C.クイリアムス
プランBゲームズ(2019年)
2~4人用/8歳以上/30~45分
シュピール、ごったがえす『アズール:サマーパビリオン(Azul: Summer Pavillion)』のブース。いつものシステムを使いつつ配置による連鎖置きを狙っていくためパズル的要素が強い。同色マスをすべて埋めれば高得点。これが完成したときの達成感がたまらない。個人的にはシリーズでいちばん好きかも。 pic.twitter.com/abT2PIQKQA
— カワカミ (@mojamoja_hobby) October 25, 2019
マーダーミステリーゲーム『九頭竜館の殺人』『何度だって青い月に火を灯した』11月29日発売
グループSNE/cosaicは11月29日、オリジナルマーダーミステリーゲーム『九頭竜館の殺人(The Murder at Cthulhu Manor)』(ゲームデザイン・秋口ぎぐる、7~9人用、15歳以上、120分)と『何度だって青い月に火を灯した(Once in a Bluemoon)』(ゲームデザイン・河野裕、黒田尚吾、6~7人用、15歳以上、150分)を発売する。各3200円。
専門のプレイスペースが開店するなど、日本で流行しつつあるマーダーミステリーゲーム(殺人などの事件が起きたシナリオが用意され、参加者は物語の登場人物となって犯人を探し出す/犯人役の人は逃げ切る正体隠匿推理ゲームの総称)。現在、主に台湾や中国から輸入されたものがプレイされているが、グループSNE/cosaicは国産オリジナルをパッケージ型(箱入り)シリーズとして展開する。
『九頭竜館の殺人』は館とホラーがテーマのノスタルジックな作品。デザインは「川上亮」として『人狼ゲーム』や『ガールズ・アンダーグラウンド』などの小説を手掛けている秋口ぎぐる氏があたった。降霊会や「太古の化け物」といった要素があり、クトゥルフ神話をテーマにしたTRPGが好きな人、また入門用としてもおすすめの作品だ。
内容物:ルールブック1冊、設定書×9冊、調査トークン各4個×9キャラクター分(合計36個)、キャラクターごとの部屋カード各4枚×9キャラクター分(合計36枚)、使用人部屋カード14枚、地下室カード3枚、塔カード3枚、特別な手がかりカード2枚、注釈カード2枚、エンディングブック1冊
『何度だって青い月に火を灯した』は20世紀半ば、イタリアのマフィアにまつわる事件を題材にしており、ハードボイルドな雰囲気でプレイできる。小説家の河野裕とゲームデザイナーの黒田尚吾がタッグを組んだ本作。ボスの不可解な死、「組織のナンバー2」「ロープマン」など個性的なキャラクターの群像劇が楽しめる。
内容物:ルールブック1冊、設定書×7冊、調査トークン×35個+予備、キャラクターごとの初期カード×7枚、調査カード×72枚、施錠カード×1枚、エンディングブック1冊、それぞれのエピローグ×8部