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バッグビルドで映画館経営『シネマポップコーン』日本語版、7月上旬発売

ホビージャパンは7月上旬、『シネマポップコーン(Popcorn)』日本語版を発売する。ゲームデザイン:V.ソーモン、イラスト:E.ロティヴァル、2~4人用、10歳以上、60分、5940円(税込)。

ドキュメント映画制作者でもあるパリのデザイナーの作品で、イエロ(フランス)の新作。映画館を経営して収益を競い合うバッグビルドゲームだ。

ラウンドごとに自分の袋からポーン(映画館にやってきた客)を引き、自分の映画館ボードで映画がセットされたシアターの座席に配置する。映画と客にはコメディやSFなどの色があり、配置した客と映画の色が同じであれば、映画に表記されたアクションが実行できる。さらに配置した客と座席の色が同じであれば、座席に表記されたアクションも実行できる。

アクションには、新たな映画の購入やシアターの改良に必要な資金獲得、袋から引く客を増やせる人気上昇、袋の中の客を調整する広告トークン配置、そして勝利につながるポップコーン獲得などがある。

映画は初回上映から時間が経つごとに話題性がなくなるため、ラウンドごとに選択できるアクションが減っていく。潮時だと感じたら新しい映画に差し替えよう。新たな映画の購入やシアターの改良、広告トークンの使用は、客を袋から引く前に行う。来て欲しい色の客を袋に追加すれば、たくさんのアクションを実行できるだろう。最終得点計算後にバケットの中に最も多くポップコーンを持っていたプレイヤーが勝者となる。

ゲームに登場する映画は実在する映画のパロディとなっており、映画ファンもニヤリとなる作品だ。

内容物:映画カード 48枚、映画館ボード 4枚、布袋 4つ、ポップコーンバケット 4個、シアタータイル 28枚、賞カード 26枚、客ポーン 60個、シアタートロフィー 2つ、開始プレイヤーマーカー 1個、映画タイル 2枚、広告ボード 1枚、広告トークン 12個、$トークンとポップコーントークン……ポップコーントークンはとにかくいっぱい!


(写真はフランス語版)

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超重量級ゲームの登場と愛好者の乖離

Copilotで画像生成した「ルールもコンポーネントも多く、時間がかかりそうなボードゲーム」なので実在しません

近頃、ボードゲーム歴が長くてもあまり重量級ゲームをプレイしなくなった愛好者がおり、「重度のボードゲーム愛好者ほど重量級を好む」という図式が崩れつつある。私もそのひとりで、プレイ時間120分の新作(初プレイはだいたい180分)は、大好きなローゼンベルク作品でもない限り手を出さなくなった。理由は、値段が高くなって気軽に買えなくなったこと、複雑すぎたり集中力がもたなかったりして疲れてしまうこと、新作が次々と出てくる中でそう何回も遊べないことである(逆に言えば、優先的に遊びたい新作がないときに、誰かが買ったものを、気心の知れたメンバーでプレイさせてもらえるならば、重量級でも喜んでプレイする)。

しかしこれは重量級ゲームをプレイしなくなったのではなく、超重量級が登場したために、今までプレイしていたゲームが重量級と呼ばれなくなっている可能性もある。かつてゲーマーズゲームの代表格だったアレア作品は今プレイすると中量級ぐらいに感じられ、プレイ時間90分というだけでは必ずしも重量級と言えなくなってきた。「昔はもっと重いと思っていたけど、今遊ぶとそれほどでもないね?」

BGGには「ウェイト(重さ)」という評価項目があり、かつては「ゲームの理解の難しさ」と説明されていたが、現在は次の要素を組み合わせて総合的に判断するようになっている。ユーザーは(1)ライト(2)ミドルライト(3)ミドル(4)ミドルヘビー(5)ヘビーの5段階で評価し、平均が表示される。

  • ルールブックの複雑さや厚さはどれくらいか? ルールを覚えるのにどれくらいの時間がかかるか?
  • 行動を解決する時間よりも、思考や計画に費やす時間の割合はどれくらいか?
  • 勝利の確率を上げるために、どれくらい長く深く考えなければならないか?
  • ゲーム内のランダム要素はどれくらい少ないか?
  • 必要な技術的スキル(数学、先読みなど)はどれくらいか?
  • ゲームを「理解する」までに何回プレイする必要があるか?

BGGには世界中の重量級を好むユーザーが集まっていることもあって、120分以上でもヘビー認定を受けるものはラセルダ作品ぐらいのものでほとんどなく、中ににはミドルライト~ミドルと評価される作品も少なくない。10分程度で遊べる超軽量級(「レベル0」)も多い日本では(ステップアップ幻想)、ウェイト+1ぐらいで考えたほうが実情に合っている。ここでも「最近は重量級をプレイしていない」というよりは「いつもプレイしているゲームが今どきの重量級ではない」といえるだろう。

ミドルライト:モノポリー(1.62)、カタン(2.29)
ミドル:エンデバー:ディープ・シー(2.90)、アルナックの失われし遺跡(2.93)、エルグランデ(2.94)、プエルトリコ(3.27)、テラフォーミング・マーズ(3.27)
ミドルヘビー:アグリコラ(3.63)、グレートウェスタントレイル(3.70)、アーク・ノヴァ(3.78)、オーディンの祝祭(3.86)、ブラス:バーミンガム(3.87)、グルームヘイヴン(3.91)、テラミスティカ(3.98)、バラージ(4.12)、ヘゲモニー(4.22)、ガイアプロジェクト(4.40)
ヘビー:ウェザーマシン(4.61)、ヴォイドフォール(4.64)、オン・マーズ(4.67)

BGGのウェイト評価に対して、アメリカのポッドキャスト「ザ・ゲーミング・モーグル」が提唱する「モーグル度」では、ルール難易度を1~5、戦略性複雑さをA~Eにして二次元で難易度を表している。ルール難易度と戦略的複雑さはたいてい比例関係にあるが、ルールが簡単なにの奥が深いアブストラクトゲームや、その逆でルールに癖がある割に戦略性はそれほどでもない作品(笑)を目立たせるのには成功している。

3B:ニア&ファー
3C:テオティワカン、オルレアン、横濱紳商伝
3D:蒸気の時代、ブラス:バーミンガム、カヴェルナ
3E:フードチェーンマグネイト、パックス・パミール
4D:ガイアプロジェクト、グレートウェスタントレイル
5D:リスボア

ゲームの重さに選択肢の幅が増えた中で、愛好者はそれぞれの「これくらいがちょうどいいよね」を見つけて楽しめるようになったのはいいことである。ドイツ年間ゲーム大賞が軽すぎると感じたり、国際ゲーマーズ賞が重すぎると感じたりするのも、選択肢の幅が広がった結果だろう。楽しめる幅が広ければそれだけいろいろな人といろいろなボードゲームを遊べるが、不幸なミスマッチも起こりやすくなっており、ゲームの選択はますます悩ましい。限られた時間の中で、Xで評判のゲームであっても自分たちには合わない(あるいはその逆の)可能性も考慮に入れて吟味したいものである。

なお、当サイトではプレイ時間30~45分のボードゲームに「ミドル」、90分以上に「コンプレックス」というタグをつけている。

このエッセイのきっかけとなったXポスト

プレイ時間とBGGウェイト
“超重量級ゲームの登場と愛好者の乖離” 続きを読む