無の美学
厳しい師範の目にさらされながら、美しい石庭を作るアメリカのボードゲーム。石は次々と運ばれてくるが、はっきり言って全くないほうがいい。要らないのに、引き取らなければいけない石をうまく分散させて、罰点を少なくすることを競う。
毎ラウンド、集石場に袋から引いて石を置く。プレイヤー人数分より1つ少ないセット。これを、自分の庭にある石で競る。入札するときは、「すでに入札されている石の価値より少ない」か、「同じ価値なら、石の個数が少ない」というのがルール。0個で入札するのが最強である。なぜこんなルールなのかといえば、石が全く要らないからである。できるだけたくさん石を放出して、できるだけ少ない石を競り落とすために繰り広げられる洗面器ゲーム。
入札はいわゆる「ところてん式」で、自分が入札しているところにより少ない入札があったら追い出され、もっと少なく入札するか、ほかのところに入札することになる。「ええっ! それだけの石で入札しちゃっていいんですか?」「仕方がないですよ、もう・・・」
集積場にある石のセット全部に入札が入ったら、追い出された人は石を受け取らないで済むが、代わりに「怠惰」の罰カード(失点)を受け取り、袋から石を1個引かなければならない。入札に使った石は捨てて、競り落とした石を庭園に並べる。ここで師範による評価。
評価は減点方式で、加点されることは一切ない。石は5色3種類あり、その組み合わせによって減点される。減点対象となるのは、山河蹂躙(全く同じ石3つ)、黄泉飾言(同じ種類で4色)、廉波惨烈(同色で3種類)のいずれか。罰点カードを受け取り、対象となった石を取り除くことができる。
袋から黒い石が引かれるか、罰点カードが1種類なくなったらゲーム終了。罰点の最も少ないプレイヤーの勝利。
3人で45分ほど。あるだけで減点し続けられる拡張セット「雑草」も入れたら更に苦しいゲームになった。油断しているとすぐ庭が石でいっぱいになり、どの石を引き取っても罰点になってしまう。そうなる前に、今どの石を引き取っても大丈夫なのか、またどの石を放出しておけば安全なのか考えなければならない。ほかのプレイヤーの状況も分かるので足元を見た入札に苦しめられることも。守りに入らない(「怠惰」カードを受け取らない)で、獲得する石を見極めた鴉さんの勝利。無を目指す哲学と共に、近年複雑化するゲームにおいて、シンプルなルールで楽しさを凝縮したところがとても印象に残った。
Karesansui
J.キセンウェザー作/グリフォンゲームズ(2013年)
3~6人用/10歳以上/45~60分
アークライトゲームズ:枯山水の石庭