江戸幕府は、地方大名が反旗を翻すことを防ぐため、財政負担と人質を目的とする参勤交代制度を義務化した。以来200年以上この制度は継続し、交通の発達や文化の交流など現代にも大きな影響を与えている。
そんな参勤交代の中で、江戸で一旗揚げたい地方大名が、国元で資材を調達し、建物を作って権力を競うドイツのボードゲーム。ソフトウェア会社社長のS.マルツとその息子のL.マルツがデザインした作品で、2010年のヒッポダイス・ゲームデザインコンテストで長時間ゲーム特別賞に選ばれた。このときはアンデス高原が舞台だったが、クイーンゲームズから発売されるに及び日本のテーマに変更された。
ゲームの特徴はタイルを回転させてプロットするアクション選択である。全員が3枚ずつもっているタイルには、4辺に1つずつアクションがついており、合計3つのアクションを選ぶ。これと同時に、侍コマをそれぞれのアクションに振り分ける。そしてスタートプレイヤーから順に、1枚目のアクションを実行。全員が終わったら2枚目、3枚目と順番に行う。
このラウンドのアクションは、ほかの人の動きを見る前に全て予め決めておかなければならない(プロット)のと、1枚のタイルにあるアクションはやりたいものが2つあっても択一なところが悩ましい。
アクションの種類は、お金(両)、米、移動、侍の雇用、追加タイルの購入、木材の切り出し、石材の切り出し、米の収穫、建設、交換(売買)と多岐にわたり、アクションによって、プロット用の侍のほかに、ボード上の侍も必要となる。例えば木材を切り出すには、プロット用の侍がいて、その上、森林にもう1人いなければいけない。しかも同じ森のほかの侍がいると取れる木材が減る。たくさん木材を手に入れて建設に取り掛かるつもりでいたら、ほかの侍が乗り込んできて取り分が減り、建設中止になることも。その読み合いと裏のかきあいが、プロットゲームの面白さである。
勝敗に重要なのは建物で、屋敷と石垣と商館(越後屋とか?)の3種類がある。木材・石材・お金を払ってこれを江戸の各町に建てると、権力ポイントがもらえるだけでなく、その町の中での影響力を上げ、ラウンドごとに収入が入ってくる。アクションが終わったら、江戸に残したい侍全員に給料として米を与えなければならない。米を与えないと国元に帰ってしまう。
タイルの選択が悩ましく、またプロットゲーム特有のハプニングがあちこちで起こって楽しい。米もお金もかつかつなのは、地方大名の厳しい財政状況をうまく再現していると思う。
侍は東海道からも日光街道からも、どこからでも江戸入りできるのが不思議。いったいどこの藩なのか。浮世絵風のマップに、でかでかと掲げられている俳句と「日本 徳川家康」の文字がおかしい。
Edo
L.マルツ、S.マルツ/クイーンゲームズ(2012年)
2~4人用/12歳以上/60分