(写真と文:石川 久)
2011年、最初のメビウス便が1月26日に届いた。今回は全てフランク・コスモス出版のゲームである。1月30日に行われた北新宿ボードゲーム部の月例会で、そのいずれもプレイすることができた。今年もメビウス便で届くゲームをコンスタントにプレイすることを目標に遊んできたい。
●ゴッドファーザー(コスモス)12歳以上/2〜4人/60〜70分(7点)
アメリカ人作家、マリオ・プーゾが1969年に発表した同名小説をボードゲーム化。これまでも「80日間世界一周」「大聖堂」「セイラムの魔法使い」とコスモスの小説シリーズを得意とする44歳の新鋭、ミヒャエル・リーネックのデザイン。
「ゴッドファーザー」とはマフィアのボスへの敬称である。1940年代のニューヨーク・マンハッタンを舞台に、コルレオーネ、タッタリア、バルジーニ、ストラッチの4大ファミリーが、血を血で争う仁義なき戦いを繰り広げるボードゲームで、お子様にはちょっと刺激の強い内容。その分対象年齢が上がっている。
ショバ代、密輸、ブッキー(ノミ屋)、高利貸し、カジノといった非合法ビジネスで利益を上げ、最もお金を稼ぐのが目的。ただし、ゲーム終了時にボードのKOマスに置かれた影響力か名声のどちらかの自分の発展チャートが最後のマスに到達していなければ、ゲームから脱落してしまうルールになっている。マフィアのしのぎも厳しいのだ。
マリオネットのタイトルロゴが象徴的
イベントカードにより、名声か影響力が1マス上昇
イベントチャート。灰色が名声で、赤色が影響力
このゲームは、全部で7ラウンドに渡ってプレイされ、ひとつのラウンドは3つのフェイズで構成される。
第1フェイズでは、各ファミリーは合法的な表のビジネスでの収益を受け取る。
第2フェイズでは、イベントカードをめくり、そのテキストの指示に従う。これによりボードのイベントチャートにある名声か影響力のどちらかのマーカーが1マス上昇する。いずれかのラウンドでどちらかのマーカーが4マス目のKOマスに進んだら、これがゲーム終了時の脱落判定の対象となる。
第3フェイズが、このゲームのメインフェイズで、各自のプレイヤーボードにある4つのアクションに対して、上列から順番に1個のダイスを対応させ、そのアクションを実行していくものである。これはダイス・プレイスメントと呼ばれるシステムで、ワーカー・プレイスメントから発展した新しいアプローチでもある。
コルレオーネ・ファミリーのプレイヤーボード
プレイヤーは4個のダイスを振って。その目の中からダイス1個を選択して一番上の列のアクションに配置して実行する。次の列は、残った3個のダイスを全て振って、その中から選び‥‥というようにやっていくので、一番下の列の時にはダイスは1個になので選択の余地はない。ダイスの残し方や出目によっては、他のプレイヤーを得させてしまう結果も招きかねない。もしそれが気に入らなければ、法律家チットを使って、再度ダイスを振り直すこともできる。ただし1度限りなのでこの使いどころも悩ましい。
アクション内容は、相手ファミリーの縄張りを襲撃して、その死体をハドソン川に沈めたり、FBIを買収してガサ入れを行なわせて相手を刑務所送りにしたりと、マフィアらしい非合法な手口が用意されている。
7ラウンド終了した時点で、ボードの店に置かれたコマひとつにつき、3,000ドルが受け取れる。さらに刑務所にあるコマひとつにつき保釈金1,000ドルを支払い、相手のマフィアをハドソン川に沈めた際に受け取った罪マーカー1枚につき、2,000ドルを当該プレイヤーに支払って罪滅ぼしをする。
マンハッタン南部が描かれたメインボード
ギャングの車のあるエリアは不可侵
メビウス訳で10ページほどのルールで、プレイヤーボードのアクション、イベントカードの内容も丁寧に説明して40分。プレイ時間は90分だった。意外にもプレイ感は軽く、誰ひとり脱落することなく現金での勝負となった。
◎スコア ※敬称略
たくみ(ストラッチ)$48,000
Rael (バルジーニ)$88,000
しびれ(タッタリア)$78,000
石川(コルレオーネ)$76,000
このゲームは、パラウント映画から版権を得ているようで、プレイヤーボードの裏には、パラマウント映画のトレードマークがプリントされている。
私はお正月になると、シリーズ全3作を自宅のプロジェクターで映写して一気に鑑賞していた時期がある。それぐらい好きな映画で、このゲームをプレイする前に映画を観てから、思い入れたっぷりに遊ばれることをお薦めしたい。
◎Der Pate for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/74102/der-pate
●ハイファイブ!(コスモス)8歳以上/2〜4人/30分(4点)
作者のニルス・ファン・タイリンゲンはオランダ人で、オランダメーカーの999(スリーナイン)ゲームズから発表していた「ハイファイブ!」をコスモスがドイツ語版としてリリースした。数字タイルをボードの8×8のマスに配置して、5枚のタイルで役の組み合わせを作っては得点を重ねていくゲーム。
ボックスアート
1と14を兼ねたタイルと、2から13までが各4色、それにオールマイティのジョーカーが4枚、合計で52枚のタイルをゲームに使用する。各プレイヤーはジョーカー1枚と4枚のタイルを手札にゲームスタート。
最初の一周だけは、例外的に3枚ずつタイルを配置しなければならないが、それ以降は手札から最低1枚、最大4枚をボードに配置する。そして、既にボード上にあるタイルと手番で配置したタイルとで、縦列か横列のどちらかに連続する5枚で役を作って得点する。この5枚のタイルの向きや並び順は影響しない。
得点チャート
ジョーカーを使用しないといけないが、同じ数字を5枚並べられたら、ファイブカードという最高役で30点を獲得する。他にもロイヤルストレートフラッシュ、フルハウス、フラッシュ、ツーペア、ワンペアなどなど、「ポーカー」でお馴染みの役なので容易に理解できるだろう。
得点を獲得したら、手番に何枚のタイルを配置したかに拘らず、山札から2枚のタイルを補充して手番終了。手札上限もなく、山札が尽きたらそれ以上の補充はできなくなって、最初に手札を使い切ったプレイヤーには2点のボーナスが与えられる。全てのプレイヤーが手札を置き切った時点でゲームが終了。まるで古典ゲームのようなシンプルなルールである。
ボードとタイルラックが合体!
既にボード上に置かれたタイルだけでは役を作れないので、最低でも1枚のタイルは役を作るために配置しなければならない。稀に5枚の役が作れないことがあるようだが、その場合にはタイル1枚を任意のマスに配置して、得点できずにタイル2枚の補充して手番を終えなければならない。こうなったらちょっと不運だ。
基本的には有利なパスを下家に送らないように気をつけないといけない。ジョーカータイルも配置後に他のプレイヤーに利用されるので、使いどころが難しい。
トランプで代用できなくもないゲームではあるが、ボードとタイルスタンドが一体化したプレイアビリティーを重視した設計になっていて、得点枠の存在により混乱を防ぐ工夫もなされている。残念なのは、ボード端に得点枠を持っていくと、タイルスタンドに入れたタイルと接触してしまうことである。もう少しスペースがあれば良かったのに‥‥。
複雑なルールやフェイズ処理のゲームが多い中で、シンプルな面白さを感じさせてくれるはずだと期待してプレイしたのだが、先手番が高得点をマークするケースが多く、一緒にプレイしたメンバーも微妙な反応だった。しかも、タイブレイクして引き分けてしまった。面子を変えてもう一度プレイしてみたら、最終番手のプレイヤーが大差で勝利して、展開的にも少しは面白く感じられた。
◎High Five! for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/69205/high-five
●大聖堂カードゲーム(コスモス)10歳以上/3,4人/60分(8点)
イギリス人作家、ケン・フォレットの小説をボードゲーム化して、2007年のドイツゲーム賞(DSP)1位をはじめ、数々の賞に輝いた「大聖堂」のカードゲーム版である。「大聖堂」では共作者だったシュテファン・シュタドラーの名前はクレジットされておらず、「ゴッドファーザー」と同様に、ミヒャエル・リーネックの単独作となっている。
ボックス(アミーゴと同じ小箱サイズ)
何と「大聖堂カードゲーム」は、変形トリックテイキングゲームだった。資源カードや特典カードをトリックで獲得しては、自分の職人カードを使って資源を勝利ポイントに変換。これを5ラウンド行って、最も勝利ポイントを稼いだプレイヤーが勝利する。
プレイヤーカラーと同じ職人カード
中立カラーのカード
まず各プレイヤーは自分の色が決めて、カードを均等に配ったら、手札にアリエナ(シャーリング伯爵令嬢)のカードを持つプレイヤーからゲームを始める。以降は時計回りの順で、色をフォローする義務はなく、任意のカード1枚をプレイする。
プレイされたカードの中で、最も数字の大きいカードがトリックを獲得するのだが、それが職人カードの場合には誰がプレイしたかに拘らず、その色のプレイヤーがトリックを獲得するところが特徴的だ。
同数値のカードは後出しが優先され、国王カードでトリックを取った場合には、その時点では誰のものにもならない。もしも、そのラウンドで全くトリックが取れなかったプレイヤーがいた場合には、このトリックが貰える。国王だけでも3ポイントの価値があるので手札次第ではミゼールを狙うのも悪くない。
他プレイヤーの色のカードを獲得しても、これが全くポイントにならないところが面白い。トム・ビルダー(主人公の建築家)を獲得したら、カードに描かれた資源のうちの1つが貰え、自分の色の職人カードがあれば、この資源を勝利ポイントに変換できる仕組みになっている。次のラウンドに持ち越せる資源は3つまで。さらに職人カード1枚につき1ポイントになる。
カードには、ローマからやってきた大聖堂建設計画を妨害しようと企むキャラクターもいたりして、そのカードを獲得してしまうとマイナスポイントになる。単純にトリックを取れば良いわけでもなかったりする。
途中からトリックテイキングゲームであることも忘れ、誰にどのカードを取らせるかを考えることの方が多く、戦略的な発見も見い出せてとても面白かった。全ラウンドやると、時間もかかって間延びすることもあるかも知れない、それでもこのゲームの面白さがより味えるだろう。
資源を得て、それを得点化!
◎スコア ※敬称略
rkusaba 44 , プラティニ 35 , Rael 32 , 石川 32
リドリー・スコットが製作総指揮の「ダークエイジドラマ・大聖堂」(全8回)が2月5日からBS-hiでオン・エアーされる。愛と欲望に満ちた中世の世界を壮大なスケールで描く娯楽大作とのこと。
◎Die Saulen der Erde Das Kartenspiel for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/67593/die-saulen-der-erde-das-kartenspiel
◎NHK BShi ダークエイジドラマ・大聖堂
http://www9.nhk.or.jp/kaigai/daiseidou/
今回のメビウス便は“コスモスづくし”だったので、このメーカーの社史について、簡単だが調べてみた。
創業は1822年7月6日と意外にも古く、作家のヨハン・フリードリッヒ・フランクが弟ゴットローブの協力を得て、ドイツ南西部に位置するシュトゥットガルトにフランク出版として設立。発足当時はゲームメーカーではなく、古典や海外小説を印刷する小さな出版社だった、日本がまだ江戸時代(文政5年)の頃である。
1903年に創刊した科学テクノロジーをテーマとする月刊誌「コスモス」は、1912年には発行部数10万部を超える。これをきっかけにフランク・コスモス出版へと社名を変更。コスモス(Kosmos)とはギリシア語で、世界、宇宙、秩序を意味する。
1921年には「コスモス・科学実験キット」、1924年には「ラジオのすべて」が共に大ヒット。幅広いジャンルを扱ったガイドブック、ノンフィクション、児童向け実験教材図書の出版社としてドイツ国内では広く認知される。日本のゲーマーたちが「学研のような会社」と形容する所以がここにある。
1985年のドイツ年間ゲーム大賞(SDJ)に輝いたゲームブック「シャーロック・ホームズ10の怪事件」の出版を機に、ボードゲーム事業にも本格的に乗り出し、1995年の「カタンの開拓者たち」のメガヒットを経て、ボードゲームのメジャー・メーカーへと大きく躍進を遂げた。2008年には「ケルト」でもドイツ年間ゲーム大賞(SDJ)を受賞している。
2006年の時点で従業員数は106名。ドイツ国内のゲームメーカーとしては業界3位の売り上げを誇る。それでも、日本企業のそれと比べても吃驚するほど少人数である。
◎KOSMOS
http://www.kosmos.de/