ボードゲームにハマりやすい人の特徴
「ボードゲームの初心者未満」では、ボードゲームを趣味としないさまざまな楽しみ方があり、もはや「初心者」という括りでは捉えきれないことを考察した。これについて、初めてボードゲームを体験した人のごく一部が、急速にボードゲームにハマる現象について、テツロー@ボ育てさんが「人はボードゲーマーになるのではない。ボードゲーマーであることに気づくのである」という印象深い言葉を述べている。
ステップアップ幻想説は、ボードゲームに興味を持った人にライトなゲームを紹介して、そこから徐々に難易度を上げていくという方法論を疑問視する。どんなに工夫してもハマらない人はハマらないし、その逆もあることはよくある話。そうなるとボードゲームには、元からハマりやすい人とそうでない人がいるという可能性を考えたくなる。
ボードゲームにハマりやすい人の特徴には、どんなものがあるだろうか。これを考えることで、自分の身の回りで誰にボードゲームを紹介すると(ハマるかどうかは別として)楽しんでもらえそうかという指針にもつながりそうだ。該当する人の全てがハマるということでもないし、該当しない人でもハマる人はいるだろうが(ちなみに当サイトの管理人はほとんど当てはまらない)、手当たり次第に勧めるよりもヒット率は高いのではないだろうか。
『ユーロゲーム』では、コンピューティング(IT関係・エンジニアリング)との関連を指摘している。「ゲームにおける良くデザインされたエレガントなシステムへの敬意がそこにはあり、ちょうどそれは、良くデザインされたエレガントなコンピュータ処理への敬意と同様のものだ(175ページ)。」フェイズやラウンドを順次進めていくことで結果が出る仕組みや、その中で考える短期的・長期的戦略は、プログラミング思考と親和性がある。日本でも、IT関係やエンジニアリングを職業としているボードゲーム愛好者は多い。この中には、論理性や合理性を重んじる性格も含まれる。
デジタルゲーマーであることも特徴としてあげられるだろう。以前に当サイトでとったアンケートでは、読者の7割がデジタルゲームも遊んでいると回答している。要するにゲーム好きにアナログとデジタルの区別はないのである。この中には、クリアするまであきらめないような熱中しやすさ、根気強さ(M気質)、負けず嫌い、研究熱心であることや、ゲームの世界観に入り込める感受性、そして何よりもゲームにお金や時間のコストをかけることにためらいがないようなプライオリティの高さも含まれる。
熱中しやすいこととも関連するが、オタク気質ということもあるだろう。興味を持ったり好きになったものにとことんまで没頭できる性格。調査・研究に余念がなく、コンプリート欲求のためにコレクションも大好きである。ボードゲーム愛好者には、アニメや映画などの別な趣味を究めている人、新しく始めた趣味でもすぐにアイテムに凝り出す人も少なくない。知識量も熱量も尖って高い一方、興味のないことには反応が薄くなりがちで、コミュニケーションは苦手だと思っている。
上記のことを総合すると、典型的なのは「理系のゲームオタク」で、「ボードゲームの初心者未満」で考察した「ノンプレイヤー」「ミーハー」「パリピ」「暇つぶし」とはあまり重ならないように思う。ボードゲームに求めることどころか、ボードゲームの捉え方自体も違えば、ディスコミュニケーションが生まれるというもの。また、これらの属性だと現状、女性が少なくなりがちなのも問題である。
とはいえ、これらに該当しない人でも、ボードゲームの多様化のおかげで楽しめるようにはなってきている。「人間の営みは何であれボードゲームに反映することができる」(T.ヴェルネック)であり、「万人に合うボードゲームはないが、どんなグループにもそれぞれ合うボードゲームは必ずある」(M.フクス)である。そこを希望にして、いろいろな人にボードゲームを紹介する試みは続けていきたい。