暗黒評議会(Council of Shadows)
みんな違う目標勝利点
『ベガス・ロイヤル』から始まったアレア新大箱シリーズは、これまでのアレア作品のリメイクがメインだったが、昨年発売された6番のこのゲームは完全新作、しかも初めての宇宙テーマである。パッケージもこれまでのシリーズとは雰囲気が異なるため、本当にアレアなのかと思うほどだが、「目標勝利点を自分で設定する」という非常に目新しいメカニクスに、ゲーマーズゲームの最先端を走ってきたアレアの魂が感じられる。
基本的なメカニクスは3枚のアクションカードのプロットと実行である。最初は同じセットを持っているが、コストを支払って新しいカードを購入すると共に、プレイヤーボードをアップグレードして活動範囲を広げることができる。
アクションカードでできることは、惑星に自分のコロニーを置く「開拓」、自分のコロニーがあるところから鉱石を獲得する「採掘」、タイルを引いて未知のエリアに置く「発見」、新しいカードの購入やプレイヤーボードのアップグレードのコストになる鉱石の獲得や改良である。最初はパーセク(距離の単位)1の水の惑星しか開拓できないが、プレイヤーボードをアップグレードすることでより遠くの、砂や火山の惑星も開拓できるようになる。
新しいカードもできることは同じだが、消費ポイントが下がる。毎ラウンドプロットした3枚のカードの消費ポイントを合計して、マーカーを進めていくが、この累積が「目標勝利点」なのである。消費ポイントの多い強いアクションばかり選択していると、目標勝利点が上がって達成が遠のく。かといって消費ポイントを節約ばかりしていると地味なアクションで勝利点が伸ばせない。プレイヤーごとに各自の選択で変わる目標勝利点が、ゲームの展開を大きく分ける。
勝利点であるエネルギーの獲得にはいくつかの方法があるが、最も大きいのが、自分のコロニーを除去することで得られるものだ。除去する時点でそのエリアでマジョリティを取っていると勝利点が大きく、除去することで2位が1位に繰り上がったりするため、ダイナミックな得点合戦が繰り広げられる。
ラウンドが進むに連れて上がっていく目標勝利点を、勝利点が上回ると、自分の「ダークテック」レベルが上がり、ボーナスが得られる。その代わりエネルギーマーカーは0に戻り、また遠くにある目標勝利点を目指すことになる。再び追い越すとレベルが上がってより強いボーナスが得られ、3回目に追い越したらゲームに勝利となる。
先にレベルを上げたほうが有利なのは間違いないが、レベルが下のプレイヤーには鉱石の補償があるため追いつきやすくなっている。最後は手持ちの鉱石やカード、終了時ボーナスなどでエネルギーを増やして、3回目の目標勝利点をどれくらい追い越したかで勝敗を決める。
あんな遠くにある目標勝利点にはたして到達できるのかと思うが、収入の多い遠くの惑星で、コロニーを除去しまくる終盤は勝利点がばんばん入ってきて気持ちいい。他にも目標勝利点を下げる手段なども用意されていて、ゲームが進むにつれてどんどん差がついてくるゴールをめいめいで目指すのが革新的である。
Council of Shadows
ゲームデザイン:マーティン・カレンボーン&ヨヘン・シェラー
イラスト:アーミン・ランガニ
アレア(2022年)
1~4人用/14歳以上/60~90分
マーダーミステリーゲーム『優しい死神の席』3月24日発売
グループSNE/cosaicは3月29日、マーダーミステリーゲーム『優しい死神の席』を発売する。ゲームデザイン:鯖井凌、監修:三遊亭楽天、アートワーク:タンサン、5~6人用、15歳以上、150分、3520円(税込)。
ゲームマスターなしでプレイできるパッケージ型オリジナルマーダーミステリーシリーズ第16弾。今回は落語をテーマにしており、TRPG落語で知られる三遊亭楽天氏が監修し、シリーズ初登場の鯖井凌氏が制作した。
落語界の頂点と言われた大名人「演匠れん」。100歳の誕生日に落語の独演会を開き、最後の演目で、『死神』というお噺を披露した。そのお噺の直後彼は倒れ、もう二度と起き上がらなかった。そして、その口からは黄みがかった泡が溢れはじめ……。
プレイヤーは落語家となって、師匠の死の謎を解明しなければならない。運命的な寿命にも思えるこの死は毒殺の可能性を孕んでいる。しかし、ただ捜査を進めるだけではいけない。なぜなら、プレイヤーたちはまだ前座なので、いくら捜査中といっても、「師匠の世話」と「演技の鍛錬」を怠ってはいけないからだ。