インディーズゲームを扱う問屋
国産ボードゲームの価格が高止まりしている一因に、製作数の少なさがある。ゲームマーケットは1日しかなく、しかもほかと競合しているのだから、たくさん作れば売れ残るかもしれない。そこで売り切りを目指して50部や100部しか作らなければ、単価はどうしても上がってしまう。
中にはゲームマーケットが終わってから、専門ショップで取り扱いしてもらえるところもあるが、扱ってもらうには知名度や、見かけと内容の両方しっかりしていることが求められるため、一部に限られてしまう。自分のホームページから通信販売を試みても、英訳をつけて海外展開でもしない限り、多くは売れないだろう。
ドイツにはハイデルベルガーという問屋がある。700以上のボードゲームメーカーがあり、個人でやっているところが半数というドイツで、小さいメーカーのゲームを仕入れ、ショップに卸すというかたちで販売を担っている。エッセンに出展されたヤポンブランドのゲームも、毎年ここに取り扱ってもらっている。
近年は自社出版にも力を入れており、2006年までは毎年3タイトル前後だったものが、2007年からは毎年30タイトルも出すようになった。その中には今年ドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた『アラカルト』がある。
聞いたところ、日本でもこのような問屋を作ろうという動きがあるらしい。これができれば、ゲームマーケットで売り切らなくても販路が確保されるから、同人ゲームでも個数をたくさん作ることができる。
問屋の構想はこのような感じだ。まず、ゲームマーケットが終わったら、作ったゲームを問屋の担当者に見て、水準(パッケージ、内容、パクリでないこと、権利問題がないことなど)をクリアしていれば預かる。品物は一括して問屋に送り、問屋からいくつかの専門ショップに卸すので、輸送費も節約される。バーコードも用意し、アマゾンでの取り扱いも可能にする。また、英語ルールを添付すれば海外からの注文にも対応する。ただし買取ではなく、売れなかった分は一定期間後に返却というかたちになるかもしれない(事実ヤポンブランドはそうである)。
このような問屋があることで、同じ品質でも単価が下がることが期待される。また、売れ行きのよいゲームは問屋で自社出版という道もあるだろう。さらには外国メーカーからの引き合いもあるかもしれない。
もちろん、ゲームマーケットだけで完結する同人ゲームもあってよい。だが、日本には世界的に見ても優れたゲームアイデアが眠っていると思う。それを国内外でもっと遊んでもらえれば、輸入ゲーム頼みの現状が面白い方向に進んでいくのではないだろうか。
チョコラトル(Chocolatl)
チョコっと捧げらとる
昨年『カーソンシティ』で好評を博したオランダのメーカー、クワインドゲームズは、オリジナルとしては初めてドイツ人デザイナーを起用した。変態ゲームでコアなファンをもつG.ブルクハルトである。ドイツでの販売はフッフ&フレンズが受け持ち、本格的にドイツに売り込むかまえだ。タイトルはチョコレートの語源となったアステカ人の言葉。
今月ようやく発売となった『チョコラトル』は、アステカ王国でカカオを神々に捧げ、その恩恵を得て、勝利点を集めるゲームである。独特の入札システムを用いて、オリジナリティの高いゲームにしている。
全員がもつカカオカードは各13枚で、0〜12の数字がついている。まずこのうち1枚を裏にして神殿に捧げる。このカードは勝利点になるが、何とゲーム終了までもう使えない。これで残り12枚のカード構成が人によってちょっとずつ変わる。
収穫ダイス、ボーナスダイスを振ってボード上に配置したらいよいよビッド開始。6つのエリアに2枚ずつカードを出して、各エリアで数字の合計が多い人が恩恵を得る。エリアは�@同点タイで勝つチョコラトル神、�Aダイスの分だけ得点できる収穫、�Bビッドを恒久的に上げる小屋、�C最多ボーナスがあるピラミッド、�D大量得点になるカカオ飲料、�E数字の大きいカカオカードに交換できるトラチトリ(アステカのスポーツ)。中にはビッドが一番低い人にペナルティがあるエリアもあって、どこを重点的にビッドするか悩ましい。
ビッドの仕方は3種類あり、1位のプレイヤーの得点マーカーがあるマスによって変わる。エリア1から順番に2枚ずつビッドするもの、全エリアに一挙ににビッドするもの、各エリアに1枚ずつビッドし、オープンしてもう1枚ずつビッドするものがある。変化に富んだビッド方式が楽しい。
ラウンドが終わったらカードを回収して繰り返す。基本的に7ラウンドで終了。
プレイ時間は45分と短めの設定で、することはビッドとオープンの繰り返しだけである。各エリアの処理もボードにアイコンで示されているからわかりやすい。でもバッティングを避け、どこに力をつぎ込むかを考えるのは奥が深い。チョコレートを食べながら遊んでみるのはいかが。
Chocolatl
G.ブルクハルト/クワインドゲームズ(2010年)
3〜5人用/8歳以上/45分
・ホビージャパン:チョコラトル
・Quined Games:Chocolatl