ミヒャエル・シャハト:マイベスト
テンデイズラジオのフォローの続き。第2回の三人用、第3回の六人用については私の中でそういう枠組みがなかったり、候補が少なすぎたりしてパス。三人専用なら『百科審議官』が好きで、六人専用は思いつかないが六人くらいいれば何かパーティゲームをやればいいのではないかと思う。
というわけで第4回のミヒャエル・シャハト。キリキリした分かりやすいジレンマが特徴のデザイナーだが、公開情報が多く、ややもすると人間ではなくゲームと戦っているようなドライな気になってくるのが好みじゃなくて、あまり所有していない。名作といわれる『王と枢機卿』およびそのリメイク『チャイナ』もとうの昔に放出している。
私のノミネートは『ズーロレット』『ムガル』『かくれんぼオバケ』。
『ズーロレット(Zooloretto)』は、動物園のオリに動物を種類別にうまくつめていくボードゲーム。動物園というテーマでなければかなり殺伐としていたと思うが、名作カードゲームの『コロレット』のシステムを継承し、悩ましいゲームにしてある。→TGW
アバクス(2007年)
『ムガル(Mogul)』は鉄道会社の株券を、サバイブ式(『ゲシェンク』のような)の競りで手に入れ配当を受け取るゲーム。競りだけでなく、暴落前に株を売れるかどうかの見切りが面白い。自社出版だったこのゲームが、なぜいまだリメイクされていないのか不思議。今年のゲームマーケットでは同じテーマの『夢JAL』という同人ゲームもあった。→TGW
シュピーレ・アオス・ティンブクトゥ(2002年)
『かくれんぼオバケ(Gespenstisch!)』は鬼がこっそり決めた部屋に入らないように移動する読み合いのキッズゲーム。大人だけで遊ぶとゲームは様変わりし、前回の移動や好きな色など、ありとあらゆる要素を推理に加えた深い心理戦が楽しめる。→TGW
ハバ(2006年)
エッセン国際ゲーム祭でシャハトと会ったことがある。アバクス専属のようになる以前は個人ブランドのシュピール・アオス・ティンブクトゥのブースを出していたので、そこで会うことができた。メールでのやり取りがもとで、彼の交遊アルバムに掲載されている。
さてベストゲームだが『ムガル』にした。プレイヤーの心理をクローズアップしていて、ほかでは味わえない深みがある。リオグランデゲームズで2009年の春にリメイクする計画があったが、その後音沙汰なしで立ち消えになっているのが残念だ。
キャット&チョコレート(Cat & Chocolate)
ネコとチョコレートでどうしろと?
お化け屋敷に迷い込んだ人たちが、まったく役に立たなそうなアイテムを頓知で組み合わせ、難局を乗り切るコミュニケーションゲーム。作者の川口亮氏はグループSNEで活躍する秋口ぎぐる氏の本名。『ボードゲーム・ジャンクション』ではリプレイ記事を執筆している。
手札のアイテムはたった3枚。手番にはアクシデントカードを引き、同時に使うアイテム数が1〜3個指定される。手札からアイテムを出して、アクシデントに対処するが、ただ出すだけではいけない。そのアイテムをどうやって使うか、みんなに説明する。
みんなは説明を聞いて、納得したらOK、できなければNGのカードを出す。多数決で納得してもらえれば得点。
ボイラー室で火災にあったふうかさんがジーンズを出す。「これでばたばたはたいて火を消します」「ボイラーはジーンズぐらいじゃ消えないよね」NG。
庭で生垣の迷路に迷い込んだかゆかゆさんは運動靴。「これで一気に駆け抜けます!」「いやいやいや、解決になってないし」NG。
書斎で昔の恋人から電話がかかってきたkarokuさんは毛皮のコートと香水。「これをプレゼントしてなだめます」「電話じゃ意味ないでしょ」NG。
判定はそのアクシデントに役に立ったかどうかが問われるが、失敗を覚悟での苦しい説明ほど聞いていて楽しい。
全員が勝敗にこだわるとひたすらNGを出し続ける恐れがあるので(ペア戦のルールも機能していない)、勝敗にこだわらないでゆるく遊ぶのがよさそう。勝敗にこだわりたいならば、全員がプレゼンしてから順位をつけて集計するなどの遊び方もできるだろう。
キャット&チョコレート
川上亮/クウィンタ・エッセンティア(2010年)
3〜6人/8歳以上/20 分
Qvinta Essentiaものづくり部