私がまだゲーマーでなかった頃(1):ウノ
小学生の頃、子供会で夏休みに公民館に一泊するという行事があった。バーベキューや花火をしたらあとは自由時間。大人は家に帰るので、いつまで起きていても怒られない。それだけでもう嬉しかった。
そこで夜遅くまで遊んだのが『ウノ』である。前の人が出したカードと、同じ数字か色があれば出し、出せなければ山札から引く。引いたカードが出せればすぐ出せるので、「来い!」などと気合を入れて引く。
盛り上がるのが特殊カード。ドロー2とドロー4で、次の人が「くそう」とか言いながらカードを引くのを見て喜ぶ。黒いワイルドカードが手札にたくさんくると嬉しいが、自分の番をやり過ごせるだけのワイルドと、次の人に4枚引かせるワイルドドロー4とでは嬉しさが雲泥の差である。
ドロー4に対してドロー4を出せると、次の人に累積していくのがまたスリルがあってよかった。「頼む、俺の番まで回ってこないで」と心の中で祈るも空しく、大量のカードを引くことになったときの悔しさったら!
「ドローツー!」「ドローフォー!」今はすっかりいい大人になった友人が、嬉々として叫んでいた声を、今でも鮮明に思い出す。
本当は知らないUNOのルールによれば、ワイルド・ドロー4を出したときに、本当に手札に同色のカードがないかチャレンジでき、あればドロー4を返せるという「チャレンジ・ドロー4」や、3回まで裏にしてカードを出せる「チャレンジ・ダウト」というルールが競技ルールとなっている。『ウノ』というと運だけのゲームとしてバカにしてかかるゲーマーもいるが、結構よくできているのではないかと思う。さすが世界80ヶ国で1億5000万個売れていて、コンビニでも売っているカードゲームだけのことはある。
ドイツ年間ゲーム大賞審査員のU.バルチ氏のブログRezension für Millionenで行われている”Als ich noch kein Spieler war”に倣って、思い出のゲームを取り上げていきます。
Spiele entwickeln 2010
Spiele entwickeln(ボードゲーム開発)は、2006年から毎年発行されているゲームデザイナーのためのペーパーバックである(ドイツ語)。3月にドイツのヴァイルブルクで行われるドイツ・ボードゲームデザイナー会議の発表を収録。編集にはM.A.カサソラ、C.コンラート、F.フリーゼ、A.マイヤー、H.ペール、A.ヴェッターという錚々たる顔ぶれが並ぶ。価格は16.90ユーロ。毎回ゲームメーカーが協賛してこの価格に抑えている。
目次と概要は次の通り。デザイナー間で、ボードゲームの開発の方法論を共有し役立てようという態度を見て取ることができる。近年、新人デザイナーが次々と発表しているのも、こうした蓄積を利用しているのかもしれない。入手はドイツアマゾンにて。
第1部:総括テーマ
・子供は何ができるか?(C.ヴィツォレック)―子供の発達を年齢別にまとめ、キッズゲームのあり方を提言
・たくさんの頭で1つのゲーム(I.ブラント、M.ブラント)―協力の要素をもったゲームの長所と短所、開発方法を提案
・メーカーに要望したいルールブック(A.ブロンスヴィク)―ルールの記述で分かりにくい部分や抜けやすいポイントを列挙
・論理哲学論考(M.シュトイビヒ)―カサソラが行ったボードゲーム開発ワークショップのまとめ
・カードはエンジンだ(U.ブレンネマン)―カードドリブンゲームの仕組みを実例に基づいて解説
・ボードゲームの中のタブーとタブー破り(A.マイヤー)―タブーになるテーマと、タブー破りをゲームの面白さにする方法
第2部:手作業の問い
・テーマからのボードゲーム開発(A.マイヤー)―テーマの見つけ方と膨らませ方、ゲームへのつなげ方
・雪玉システム(F.フリーゼ)―ゲーム中の成長曲線の描き方と、先手番・後手番の有利不利を考察
・プレイヤー人数による変更(C.コンラート)―多人数ゲームの2人用ルールを考える際の注意点
・ボードゲームにおける非対称性(H.コマレル)―プレイヤーの条件が同じでないゲームの是非
・ゲームの改良(M.A.カサソラ)―テストプレイの後に行われるバランス調整の方法
・立体ボードゲーム(H.ペール)―立体を使ったボードゲームの特徴
・ボードゲームにおける時間(H.ペール)―プレイ時間、ダウンタイム、実際に時間を使うゲーム
第3部:方法と試行
・試作品の制作ツール(C.バイアースドルフ)―コンピュータを使った製図の方法、ソフトウェア案内
・電源ありゲームの試作品(U.ブルム)―コンピュータを用いるボードゲームの開発
・創造的にシンプルに:形態表(R.ヴィティヒ)―システム・テーマ・舞台・用具・ターゲット・時間似合わせてアイデアを組み合わせる