SdJノミネート作品遊び比べ
去る21日に発表されたドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)のノミネート作品を遊び比べる機会にあずかった。審査員の考える「できるだけすべての人が楽しめるゲーム」とはどのようなイメージなのかを追った。
左側がドイツ年間ゲーム大賞、右側がドイツ年間エキスパートゲーム大賞のノミネート作品
簡単なゲーム紹介から。『ロバの橋』は、ストーリーを作ってタイルを記憶するゲーム。ランダムに引いた3〜5枚のタイルを、みんなで暗記する。暗記するタイル枚数は4人プレイでも合計57枚。羅列するだけではとても覚えきれない。そこで親がでっちあげたストーリーを手がかりにして覚えやすくする。インパクトのあるストーリーほど、覚えてもらいやすい。即興でインパクトのあるストーリーを作れるかどうか、そしてそれをヒントにしてタイルを思い出せるかどうか、独特なゲームである。デザイナーはドラとリンデ。
『キングダムビルダー』は、六角形のマスを使った陣取りゲーム。カードで指示された地形にコマを置いて、得点カードの条件をできるだけたくさん満たせば得点になる。地形の指示はランダムなので、毎手番追加アクションを可能にする建物でどうカバーするかがポイントだ。また建物は8種類から毎回4つ、得点パターンは10種類から毎回3つしか登場せず、その組み合わせによってさまざまな展開が生まれる。それでいて1ゲームは45分ほどにまとめられていて、サクサクプレイできる。デザイナーは『ドミニオン』のヴァッカリーノ。
『ベガス』は、1〜6のテーブルにサイコロをビッドして、お金を稼ぐギャンブルゲーム。全員8つのサイコロをもっていて、自分の番にはサイコロを振り、1つの目を選んでその目が出たサイコロを全部置かなければいけない。全員が置き終わった後に、テーブルごとにバッティングしていない上位からお金カードを取る。テーブルのお金は全て5万ドル以上あるが、高額紙幣が1枚しかないか、安いものもあるかで置き方に迷う。デザイナーはドーン。
箱の大きさは写真の通りで、『キングダムビルダー』が特大(正方形で厚さもある)、『ロバの橋』がLサイズ、『ベガス』はSサイズである。ルール分量もほぼこれに準じており、『キングダムビルダー』が一番多く、『ベガス』が一番少ない(ついでにいえば値段もそう)。
ただしルールの分量とゲームの難易度は別の話である。『ロバの橋』は記憶ゲームで、ずっと頭を使い続ける。しかも1回間違っただけで、それまでに貯めた得点が根こそぎ奪われるのがせつなく、本当に得点が増えない。プレイ時間も自ずと延びる。一番の重さを感じるのは『ロバの橋』である。
ゲーマー向けという観点では、種々の得点方法がある『キングダムビルダー』が一番で、サイコロの選択肢に悩みどころがある『ベガス』が2番、記憶ゲームは得意不得意が出やすいので敬遠されるかもしれない。もっとも、『キングダムビルダー』はゲーマーズゲームというほどでもなく、物足りなさを感じる人も多いだろう。
一般向けには『ベガス』が一番とっつきやすい。ルールが簡単で、サイコロ運もあり、時間も一番短い。それゆえに「これがあのアレア(『プエルトリコ』や『ドラゴンイヤー』でゲーマーに人気のメーカー)なのか?」という声が多く聞かれるほどである。一方『キングダムビルダー』は建物の追加アクションをうまく使えるかどうかは経験や思考能力が問われる。
こうして比べてみると、ノミネート作品は同じ系統が重ならないようにバランスよく選んでいることが分かる。どれを大賞に選んでも、百人中百人が楽しめるとは限らない。だとすれば、大賞がイマイチだった人はノミネートをどうぞということなのだろう。
大賞の発表は7月9日。
ドリームチーム(Dream Team)
負傷者続出!
ファンタジー世界の住人たちが繰り広げるホッケーゲーム。山の民族、森の住人、アトランティス、アバロンなど6つの種族を率いる。特殊カードで負傷者が続出するのと、シュートの合否判定はサイコロだが、サイコロは振るのではなく置くところが斬新だ。
基本は2人ゲーム。4人の場合は2試合、6人の場合は3試合を同時進行する(奇数の場合は1人がお休み)。リーグ戦の勝ち点で1位を決める。
試合に出場するのは選手5人とキーパー1人。これを手札のプレイヤーカード9枚から選ぶ。それぞれ能力に違いがあり、中には特殊能力をもつ選手もいる。先攻、後攻の順にカードを選ぶ。
カードには攻撃力、防御力があり、相手を上回った分だけシュートチャンスになる。相手が3、自分が5だったらシュートチャンスは2。サイコロ2個でシュートする。
サイコロといっても、振るのではなくて隠してビッドするところがポイント。守る方もキーパーで定められた数だけサイコロをビッドする。キーパーがビッドした目ははじかれ、シュート不成功。ビッドしていなかった目を出せば、キーパーをすり抜けてゴールとなる。
例えばシュートチャンス2回で、サイコロの1と6をビッドしたとする。キーパーのサイコロは4つで、1,2,3,4とビッドしたならば、1ははじかれるが、6は見事ゴール! これで1点。先攻後攻を交替して(この時選手交代もできる)3回行い、試合結果が決まる。
このゲームがファンタジー世界であることを忘れてはいけない。プレイヤーカードのほかにもっているアクションカードで試合の行方が見えなくなる。相手の攻撃力や防御力を0にしてしまう「四つ葉のクローバー」、ゴールキーパーが1個もサイコロを出せなくなる(=無防備になる)「ファウル」、さらにそのファウルを無効にする「マジック」など。1試合中に4枚まで出せ、試合の行方を全く分からなくする。
4人で2試合。carlさんがファウルやマジックを駆使して着実に得点を上げ、得失点差で1位。部族のイラストには共通の特徴があり、向い合って対面すると本当に戦っている気分になる。ホッケーなのか殴り合いなのか、もう分からない。
Dream Team
H.ヴィット/アバクスシュピーレ(1997年)
2〜6人用/12歳以上/30分
絶版・入手難