ゲームマーケット2024春:新作ボードゲーム
会場内で見かけた新作をいくつか紹介。時間の都合で全部回り切ることができず、注目しておきながらチェックしきれなかったものが多数ある。紹介しきれなかった作品については、事前に行った識者注目の新作ボードゲーム、フォアシュピアクション2024春を参照のこと。また、これから開催されるゲームマーケット新作評価アンケートでフォローアップしていきたい。
『モンスターヘクス』(ゲームNOWA)はパワーが等しくなるようにモンスタータイルを配置し、パワーのマジョリティで魔石ポイントを獲得するタイル配置ゲーム。バリアントで非対称の能力や個人目標を設定することもできる。
『空島の商人』(さとーふぁみりあ)は島がつながるようにヘックスタイルを配置して資源を獲得し、商館・塔・港を建設するタイル配置ゲーム。得点はエリアマジョリティで入り、大きい島は影響力争いが激しくなる。
『バラドリー』(Sui Works)は分配されたダイスでヘックス上の観光客を目的地まで案内するとともに、観光ガイドを増やしたり強化したりするダイスプレイスメント&ピックアンドデリバリーゲーム。小箱にコンポーネントがぎっしり詰まっており、重量が1kgもある。
『UMATAKA 馬高』(銅鐸舎)はワーカーを置いてリソースを集め、土器を作るゲーマーズゲーム。置いたワーカーの数だけコマが進み、追加アクションやアドバンテージが得られるので数を置かなければいけないこともある。足りないワーカーはイヌで補う。特殊能力をもたらす拡張土器タイル別売。
『トリックステークス』(カワサキファクトリー)はどの馬が勝つかを予想してトリックテイキングで馬を進める。カードの配分で弱い馬は倍率が上がり、小さい数字で勝つと一気に進むので穴馬狙いも。
『VIVO』(ヴィックヴィレッジ)は全体で出さなければいけないスート数が毎回指定されるトリックテイキングゲーム。1色ならマストフォローだが、2色だと1人、3色だと2人、4色だと全員(4人プレイ時)がマストノットフォローになる。守れないとペナルティになり、後手ほど縛りがきつい。
『Shut The Books/シャットザブックス』(倦怠期)はトリックテイキングゲームで、手札からカードを出してビッドを予想し、スートか数字が合っていれば裏返せる。見事全部裏返せれば得点になるが、少なくても、多くても失点になってしまう。
『Sweet Memory』(REPLICATE)はお手伝いロボットが、死んだ主人の子孫が幸せになるように相談しないでカードを調整し合う協力ゲーム。手札制限がある上に、失敗するとバグカードが入って手札を圧迫する。成績によってマルチエンディングになっている。
『銀座ロマン喫茶』(ななつむ)は振り直しやダイス目変更でダイスを揃えてお客様に料理を提供するダイスゲーム。1人のお客様は複数の注文をしており、一定時間経つと帰ってしまうため、時には協力も必要となる。早々に売り切れたため、Kickstarterによる再版が発表された。
『ダイビィ!』(ハーベストバレー)は5つのダイスを振って役を作るライトなダイスゲーム。一投目でできるともらえるボーナスや、一投で全部同じ目だと即勝利となる役も。
『TROPICARTA(トロピカルタ)』(POLAR POND GAMES)は同時プレイで指定された色と形の果物を探し、コマを置いていくパターン認識ゲーム。果物はカードの両面に印刷されており、記憶力も求められるが同時プレイなので、他のプレイヤーがめくって出てくることも。
『バックパック・ハザード』(こげこげ堂)は迫りくるゾンビに対抗するべく、ドラフトで選んだタイルをバックパックに重ねて配置して、銃、弾薬、ハーブ、鍵のパターンで得点するタイル配置ゲーム。
『ハリコッツ』(HOY GAMES)は先に手札をなくすことを目指すゴーアウト系カードゲームで、同じ数字なら何枚でも出せる。パスするには自分の山札から1枚引かなければならず、山札が切れたら脱落。先に手札をなくしても勝ちだが、他の全員が脱落すれば手札が残っていても勝ちとなるため、こまめに出す戦法もある。
『シンソクキネマ』(Azb.Studio)は透明カードと普通のカードを組み合わせて、お題に合った映画ポスターを作り、他のプレイヤーに当ててもらう協力ゲーム。おなじみの映画が組み合わせの妙でとんでもないものに。数日前まで発表がなかったのでサプライズ新作となった。
『Eden’s Shadow』(Domina)は『桜降る代に決闘を』のBakaFire氏デザインで、聖遺物と魔石による能力開放で悪魔との最終決戦に挑む。特装版も販売され、長い行列ができた。
今回も多くの海外ゲーム日本語版が先行販売されたほか、発売決定が告知された海外ゲームもたくさんあった。『ミスターダイヤモンド(Mister Diamond)』(ハナヤマ)は1993年にラベンスバーガー社から発売された幻の記憶ゲームのリメイクで、インタラクションが生まれる宝石カードが加わっている。JELLY JELLY GAMESは『私はロボットではありません(I’m Not a Robot、ホビーワールド)』、『ファイブタワーズ(5 Towers、ディーププリント)』のリリースを発表。コロコロ堂はクニツィアの古い作品『カテナ』のリメイク『コニック(Conic)』、ジーピーは『カタン:エネルギー版(Catan: New Energies)』、ブリオジャパンは『ザッツ・ノット・ア・ハット(That’s Not a Hut)』と『マイセリア(Mycelia)』、CMONジャパンは『フロストヘイヴン(Frosthaven)』の日本語版を展示した。
ほかにも『もっふぁ。(boop)』『スシボート(Sushi Boat)』『ラーメン!ラーメン!(Ramen! Ramen!)』はアメリカのメーカーが独自に日本語版を製作して持ち込んだもので、国内での販売先を探していた。
ゲームマーケット2024春レポート
4月27日(土)と28日(日)の2日間にわたって、東京ビッグサイト東1,2,3ホールにて「ゲームマーケット2024春」が開催された。合計25690平方メートルのホールに915団体が出展し、2日間でのべ25000人が来場した。国際色がどんどん豊かになってきた会場の様子をお伝えしよう。
1日目は曇りで小雨もぱらつき、最高気温20度ちょっとという肌寒さ。先行入場券2500枚は前日までに売り切れ、開場前にはいつものように長い待機列が形成された。開場のアナウンスが流れると、拍手の響きとともに待ちに待った客が会場に流れ込む。
開場後1時間くらいはお買い物タイムで、先行販売や限定販売の情報を予めチェックしてきた来場者たちがあちこちのブースに長い行列を創っていた。やがて12時になると一般入場が始まり、さらに各ブースは混雑し、幅広く取られた通路も渋滞し始める。
今回初めての試みはアメリカからの出展である。サンダーグリフゲームズ、アーケーンワンダーズ、ゲーム生産者組合(GAMA)、ジャパニメゲームズ、そしてワシントン州卓上ゲーム連合である。ワシントン州務長官のスティーブ・龍馬・ホーブス氏によると、今回の出展は貿易使節団であり、アナログ・デジタル共にゲームメーカーが多い(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト、ポケモンカードの製造など)ワシントン州で、中小企業を束ねてアナログゲーム産業の振興に取り組み、デジタルゲームとのシナジーや、デザイナーの相互交流を考えているという。
アメリカの他にも、アジアからは多数の出展があった。台湾は今月初めの地震で大きな被害を受けた工場もあったが、無事に出展できたことが喜ばしい。
今回会場の話題をさらったのは、ドイツのボードゲームデザイナー、F.フリーゼ氏である。1日目の午後から行われたスペシャルステージ「フリーゼに聞く!ボードゲームのデザインとは?」は多くのファンが詰めかけたほか、会場内でも同人作品を購入し、記念撮影に気軽に応じていた(togetter:野生のフリーゼ氏まとめ)。
フリーゼ氏はエッセン・シュピールでもボードゲームを購入して回る姿をよく見かけるが、毎日1つは新しいゲームを遊ぶことにしているといい、所有ゲームは2500タイトルにのぼる。ゲームデザインは、メカニクスから起こすことも、テーマから起こすことも、たまにコンポーネントから起こすこともある。例えば『ファイユーム』はメカニクスから起こし、テーマは辞書でFから始まる言葉を探して後づけしたが、テーマ設定によってメカニクスを変更した。ゲームデザイナーには「自分のゲームを好きになりすぎないこと。遊ぶのは他の人だから。そして試作品は友達ではなくきちんと批判できる他のデザイナーに見てもらおう」とアドバイスした。
2日目にはスペシャルステージ「デュトレに聞く!ボードゲームのアートワークとは?」としてV.デュトレ氏が登壇。フランス・リヨンでイラストレーションを学び、数多くのアートワークを手掛けてきたデュトレ氏は、テストプレイよりも出版社とのテーマやムードについての相談に力を入れているという。国・年齢・文化が違っても受け容れられるアクセシビリティから、コントラストや彩度にも気を遣う。「カバーはゲームの世界の窓」といい、イラストはすべて手描きで、デジタル機器を使わない。生成AIはすばらしいツールだが、自分が自由にできること、人間としての仕事に自身と誇りをもつことが大切だと述べた。
会場内では購入だけでなく、滞在して遊べる場所が随所に用意されていた。今回で3回目となる「本当に面白いユーロゲームの世界」では、テンデイズゲームズやメビウスゲームズが協賛し、空き席待ちが出るほどの大人気ぶり。気に入ったゲームはすぐとなりのイエローサブマリンで購入することもでき、有名定番ゲームを遊びたい人たちが絶えなかった。ほかにもキッズコーナーや、特大版のゲームを遊べるビッグゲームパークでは親子連れが楽しむ様子が見られ、コロナ禍後では初となるフードコーナーも常に行列ができていた。
1月1日の能登半島地震を受けて設けられた特設ブース「ごいたコーナー」。『ごいたカード』の販売やチャリティ物販の売上は全額、日本赤十字の災害義援金に寄付される。
4月15日の火災で全焼したボードゲームカフェ「B-Cafe」はマーダーミステリー2作を出展。募金箱や応援メッセージコーナーが設けられた。支援クラウドファンディングが計画されている。
4月6日に発表された「日本ボードゲーム大賞」の表彰が各ブースにて行われた。選考部門「ゆうもあ賞」の『アクロポリス』、投票部門の『チャレンジャーズ!』について、日本語版を制作販売しているEngamesとホビージャパンに、草場純氏から表彰状が手渡された。
会場内は6時間では到底回りきれないたくさんのブースがあったが、その中からピックアップ。
会場内で注目されたボードゲームについては、別の記事で紹介したい。次回のゲームマーケットは、ゲームマーケット2024京都が9月21・22日(土日)京都市勧業館「みやこめっせ」にて、ゲームマーケット2024秋が11月16・17日(土日)千葉・幕張メッセにて。