トークから開発目標を推理
SDGsは今あちこちで注目されており、ボードゲームもたくさん制作されているが、そのほとんどは研修・セミナー用であり、ボードゲームとしての面白さが担保されているか疑わしいだけでなく、価格も妙に高い。さらに高額な公認ファシリテーター制度などセミナービジネスが横行し、SDGsのイメージを貶めていることに苦々しい思いでいる(内容的にマルチ商法・ネットワークビジネスと結びつきにくいことだけが不幸中の幸いである)。
そんな状況を知ってか知らずか、「社会派」ボードゲームデザイナーの北条投了氏が今春発表したのがこの作品。オリンピック開会式のゲームとセットで700円という価格である。各プレイヤーに配られた開発目標に当てはまるようにテーマトークをして、誰にも配られなかった開発目標が何だったかを当てる。
テーマは「ウィズコロナ」や「ボードゲーム」など、カードで指示される。トークにあたっては、自分に配られた開発目標の言葉を使ってはならず、その趣旨に合った話をする。例えば「ジェンダー平等を実現しよう」だったら、男性が多いボードゲーム会で、女性も気を遣わないで楽しめるようにしたいなど。
話が終わったら、SDGsの表を見て、誰も話さなかったと思うものを言う。誰も持っていなければOK、誰かが持っていたらアウトとなる。こうして全部挙げられれば全員の勝利(納得できるトークをするという前提で、対戦ゲームにしてもいいと思う)。
遊んでみると気づくことだが、SDGsは内容がいろいろと重複している。「安全な水とトイレを世界中に」と「海の豊かさを守ろう」は水つながり、「産業と技術革新の基盤をつくろう」と「つくる責任つかう責任」は工業つながりである。こういった発見ができるのも素晴らしい。91~94番でさりげなく社会風刺(?)を差し込んでいるのも流石だ。
芸無工房ではいつものことだが、名刺用紙にプリンタで印刷し、ジップ袋に入れるという最小限のコンポーネントで作られている。「持続可能なゲーム社会」という観点から見ても、SDGsの理念にかなったものではないだろうか。
持続可能な開発目標に関するカードゲーム(時事ネタゲーム スーパー合体シリーズ)
ゲームデザイン・北条投了/芸無工房(2021年)
2~5人用/30分
通販:ディスカバリーゲームズ、ボードゲームショップDDT