20世紀(20th Century)
環境か経済か
経済発展と環境問題の折り合いをつけて、勝利点を獲得するチェコのボードゲーム。科学技術の開発状況を見て、どこまで経済発展を進め、どこから環境保全に切り替えるかを絶えず考えさせられる。複数のパラメーター、2つの競り、パズルチックなタイル配置と、『スルージエイジズ』のチェコゲームズらしい、じっくり系のゲームである。
各ラウンドは、土地タイルの競りから始まる。場に並んだいろんな土地タイルから、スタートプレイヤーが指定したタイルを時計回りに値付け。何周でもして、最も高い値をつけた人が土地タイルを取って手元に置く。そしてまた次の土地タイルの競りへ。
土地タイルには、工場などで働いてくれる市民コマと、廃棄物コマがついてくる。お金さえ支払えれば1人で何枚競り落としてもかまわないが、廃棄物コマが増えるので、広げれば広げるほどリスクも上がる。さらに競りをやめるともらえる技術タイルの選択肢も少なくなってしまう。
土地タイルは線路が書いてあり、線路をつなげると廃棄物処理や生産力アップがしやすくなる。今後取ってくるタイルも考えて配置するのは、パズルチックな要素がある。また、技術タイルは市民を増やしたり、生産力を上げたり、線路をつないだりする効果があり、この活用も重要である。
さて、全員が競りをやめると環境破壊防止の競りが始まる。今度はお金ではなく科学力。一番いいのが環境悪化なしというもので、廃棄物や公害ポイントをできるだけ増やさないで済むかを競る。より高い科学力をビッドされると、さらに多く出すか、より悪いところに移るという、いわゆるところてん式の競りで、科学力がない国は辛酸を舐めることになる。悲鳴が上がりまくるこのフェイズが、ゲーム中一番好きな部分である。
土地タイルを整理してから収入。土地タイル上で、市民が置かれた工場に応じて、お金と科学力が補充され、勝利点が入る。また処理場で廃棄物を取り除く。これでラウンド終了。
ゲームは6ラウンドあるが、6ラウンド後の最終決算のほかに、第2、第4ラウンドでは中間決算がある。中間決算はいくつかあって毎回異なるので、展開も変わるだろう。最終決算では、廃棄物がないタイルが得点、廃棄物が2個以上あるタイルが失点。また、各自の公害ポイントに応じて、得点や失点がある。経済発展を優先しすぎると、ここで手痛いツケが回ってくるだろう。
4人で2時間ちょっとのプレイ。私は、最初のラウンドで取った追加の労働者を処理場に置いて、どんどん廃棄物処理を進めた。また、お金よりも科学力を増やし、環境破壊防止の競りでは常に全力投球。さらに「公園」で公害ポイントを改善と、徹底してエコな国づくり。そのため土地タイルこそ少なかったものの、終盤の「病院」で大量得点して1位。ぽちょむきんすたーさん、神尾さんは後半大量のお金が入ってきたが、使い切れないまま終わった。
環境に気を配っているとお金も得点も入らなくなり、ゲームに置いていかれる。かといって金儲けに走れば終了時にものすごいペナルティを食らう。メインが競りなので、ほかの人の動向によっても進め方は変わる。そういった中での両極端にならないバランスというのは、つくづく悩ましいものだと感じた。取ったタイルによっても戦略は大きく変わるので、また遊んでみたい。
20th Century
V.スーキー/チェコゲームズ出版(2010年)
3〜5人用/13歳以上/120分
年間デザイナー賞にボウザ
アメリカのボードゲーム評論家L.レヴィ氏は、2010年の年間デザイナー賞(Designer of the Year)としてA.ボウザ氏(フランス)を選んだ。
この賞はアメリカのニュースサイト「ボードゲームニュース」で5年前から行われている企画。過去1年間で、デザインが最も注目されたボードゲームデザイナーを選んでいる。「ボードゲームニュース」が閉鎖したため、今年は新サイト「ジ・オピニオネーテッド・ゲーマーズ」で発表された。
大賞に選ばれたA.ボウザ氏は、昨秋にエッセンで発表されて以来、世界的な人気を集めている『世界の七不思議(7 Wonders)』の作者。ほかに『花火&生花』、『ミステリーエクスプレス』などを昨年発表している。
ほかにもB.カタラ、S.フェルト、F.フリーゼ、C.コニエツカ、W.クラマー、J.マチューズ&C.リオンハルド、M.リーネック、M.ワレスの各氏がノミネートされた。
『世界の七不思議』は国内で品薄状態が続いているが、来月末に日本語ルールが同梱された多言語版がホビージャパンから発売されることになっている。
・The Opinionated Gamers:2010 Designer of the Year
・テンデイズゲームズ:アントワーヌ・ボザフェア