塩の海の上で/ソルティーオーシャン(Upon a Salty Ocean)
塩漬けの相場だだ下がり
昨日のエントリーでは、ドイツ以東への広がりとレベル・ポーランド(Rebel.pl)を取り上げたが、今度はドイツ以南への広がりである。どちらもホームページ名のようなメーカー名で、ジョーキックス・イタリア(Giochix.it)というメーカーが近年注目されている。
イタリアはもともとキダルト社やダヴィンチ社などパーティーゲームが得意だったが、ほかの国と同様にゲーマーズゲームも発表するようになった。その旗頭が、『バスコ・ダ・ガマ』と『ヴィニョス』で有名になったホワッツ・ユア・ゲームズ?社と、このジョーキックス社である。
ジョーキックス社も、自社ショップで国外の名作のイタリア語版を扱っている。その中で、ゲーム開発やマーケティングのノウハウを蓄積し、オリジナル製品の発売に至る。こうした手順を踏んだ作品は、ゲーマーのユニバーサルデザインとでもいうべきものを備えており、日本人も安心して楽しめるのだ。
フランス西部、ドーバー海峡に臨む小都市ルーアン。遠洋漁業でニシンとタラを取り、塩田で取った塩で塩漬けにし、相場が高いときに売ってお金を儲けるボードゲームである。といっても利益はあまり出ない上に、すぐ建物に使ってしまうため、なかなか貯まらないどころか、借金までしてマネージメントするゲームだ。
アクションは建物を建てる、航海する、船を作る、売買するの4つ。この中から毎手番1つずつ、全員がパスするまで何周でも行うが、誰かが選ぶごとにそのアクションのコストが1つずつ上がっていく仕組みだ。ここですでに相当のお金を使わなくてはならない。
建物はボード上に14軒広がっており、建物を建てるアクションを選ぶと、好きなところに自分のコマを置く。塩の産出量が増える「塩田」、塩や魚の貯蔵量が増える「倉庫」、持ち金の上限を上げる「銀行」、船の建設が無料になる「造船所」と「海軍学校」、海賊や悪天候で壊れた船を直す「灯台」、コツコツと寄付していればゲーム終了時に大きな収入をもたらす「ノートルダム」など効果はさまざま。ここでもお金を払って建設しなければならない。
船は最初1隻だけ、小さいものをもっている。塩を積み、航海のアクションで港から海に行くと、塩が魚に変わる。魚はニシンかタラのどちらか。そのときの相場を見て、高く売れる方を選ぼう。海から港に帰るには、航海のアクションがもう1回必要だ。
船を作るアクションで船を2隻、3隻と増やすこともできる。そうすれば1回のアクションで全部を動かせるため、ある船は海に出て、同時にある船は港に戻るといった効率のよい漁業ができるようになるだろう。
そしていよいよ売買のアクションで船の魚を販売できる。販売すると相場が下がるので、早く売っておかないと儲けがない。ちなみに相場は各ラウンドのはじめに、イベントカードによって上下する。このイベントカードには、航海した船にダメージを与える嵐や海賊、取れる魚が減る不漁などがあって、前のラウンドから見ることができる。
自宅ゲーム会で3人プレイ。序盤からいきなり借金に走るkarokuさんとふうかさん。2人とも建物に先行投資して、そのメリットを積み重ねる作戦である。私は借金を避けて、小金を稼ぐという小ぶりな経営。そのうちkarokuさんが大量の魚をさばき、一気に収入を上げてトップ。私にはそのような爆発力はなかった。一方のふうかさん、儲からない漁にはほとんど出ず、最後の最後まで借金漬けでノートルダム大聖堂に貢ぎ続けたが、借金の利子に足を引っ張られていた。プレイ時間は約80分。
大儲けのチャンスはゲーム中1〜2度しか回ってこない。それ以外は自転車操業を余儀なくされる。しかし設備投資と先見の明、そして思い切りのよさが、そのチャンスを引き寄せる。複雑なルールはないが、お金がない中で、建物や船を優先するか、先に漁に出るべきか、考えることが多い。
Upon a Salty Ocean
M.プランゾ/ジョーキックス・イタリア(2011年)
2〜4人用/13歳以上/120分
ゲームストアバネスト:塩の海の上で
ふうかのボードゲーム日記:塩の海の上で
シティ・タイクーン(City Tycoon)
物入りでカツカツの都市経営
昨年11月、東京・三鷹のボードゲームショップ、テンデイズゲームズが相次いでポーランドのメーカーと代理店契約を結んだ。ドイツを中心としてきたボードゲームのトレンドは、西側のフランス、東側のチェコ・ポーランドに拡散している。
ポーランドの代表的なメーカーであるレベル・ポーランドは、登山ゲーム『K2』の人気で知られるようになった。国内では『世界の七不思議』『モダンアート』『スモールワールド』などのポーランド語版を扱う、日本でいえばホビージャパンのようなメーカーである。世界の最新トレンドを熟知して、オリジナル作品を作るというパターンは、他国にも見られる。
『シティ・タイクーン』は近未来都市をタイルで広げ、物資を輸送して勝利点を増やすゲーム。タイル配置、ピック&デリバリーといったオーソドックスなシステムを使いつつ、絶妙なバランスでシビアなマネージメントを楽しめる。このゲームの中心は、カツカツのお金をどうやりくりするかというところにあるようだ。
各ラウンドは、タイルのドラフトから始まる。各自配られた6枚から1枚を選び、残りを隣の人へ。かわって隣の人から渡された5枚から1枚を選び…こうして6枚のタイルを選ぶ。『世界の七不思議』に見られるドラフト方式で、自分の戦略に合ったタイルを集められるようになっている。
次にタイル配置。順番に1枚ずつ、場にタイルを置いて建設するか、タイルを捨てて代わりにプラント(資源の源)を建設するか、何も建設せずタイルを捨ててお金をもらうか。建設するときは、タイルに記されたお金を払わなければならない。タイルもプラントも、後から出てくるものほど効果が高く、値段も高い。お金は常にカツカツで、タイルを捨てまくってお金をもらい、やっと建設できるようになることも。
さてタイル配置が終わると、今度は建物の稼働である。順番にプラントから資源を自分の建物に運び、収入や得点を得る。資源は水(青いコマ)と電力(赤いコマ)がプラントで発生し、それを別の建物まで運ぶと商品(黄色いコマ)ができる。水や電力のままでも収入や得点になるが、商品にかえればそれだけ高く売れるようになる。
ここで重要になるのがタイルの位置。資源は早い者勝ちでなくなるのと、建物の効果によって隣接する建物の得点が上がるほか、他人のプラントから資源を購入する上で位置取りが大きく左右する。購入した資源を自分の建物に運ぶとき、他人の土地を通れば通行料が発生するので、むやみに遠い所からは買えない。それを見越してプラントや建物を配置し、利益を出すのはなかなか難しい。
タイルは4時代でグレードアップし、値段も上がっていくので乗り遅れないようにしたい。旧時代の建物から速やかに乗り換えられるような配置が勝敗を分ける。
江別のゲーム会で4人プレイ。建物にセットでついてくる湖や緑地を使って、お互いに距離を取り合う展開。建物のコンボと商品の安定生産で順調に得点した西宮さんが先行したが、後半に、佐藤さんと相乗りして高得点の建物エリアを作った筒井さんが逆転1位。私は旧時代の建物にしがみつくしかなくなってジリ貧になり最下位。もう少し、他人の建物やプラントを利用する位置取りをしたほうがよかったかもしれない。プレイ時間約2時間。
所持金と建物のコスト、アイテム配達の収入と支出の勘定、さらにタイルを置く位置と使う順番と、多岐にわたって頭を使う。タイルの値段と所持金を見比べて費用を計算し、1金だけ足りず悶絶することも多い。金策も含めて、終わってから「もっとこうすれば」という思いがふつふつと湧いてきた。
City Tycoon
H.バルトス、L.S.コワル作/レベル・ポーランド(2011年)
2〜5人用/10歳以上/75分
テンデイズゲームズ:シティ・タイクーン