ドイツ年間ゲーム大賞2015に『コルト・エクスプレス』、エキスパート大賞は『ブルームサービス』
ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres)選考委員会は本日10時30分(日本時間の17時30分)、ベルリン市内のホテルにて今年度大賞の発表と授賞式を行った。5月18日に発表されていた(TGiWニュース)各3タイトルのノミネート作品から、大賞には『コルト・エクスプレス』、エキスパートゲーム大賞には『ブルームサービス』が選ばれた。
審査員は授賞式の前夜に投票して大賞を決定する。当日はノミネート作品のデザイナー、イラストレーター、出版社の代表が招かれ、それぞれ3タイトルのノミネート作品を順番に紹介した後、大賞が発表された。
大賞には『コルト・エクスプレス』(ルドノート)が選ばれた。西部劇をテーマにしたフランスの出版社のボードゲームで、審査委員会は「西部劇のパロディーのようなゲーム。ドタバタの中で盗賊たちは確実だと思っていた獲物を殴られて失ったり、誰もいないところに銃を撃ったりする。ほかのプレイヤーが失敗したのを笑っていると、今度は自分がハチの巣になる。このような計画性とカオスの混合が魅力と機知を生み出す。立体のボードになった機関車と客車がさらに目を引く」とコメントしている。フランスの作品が受賞するのは一昨年の『花火』以来2年ぶり4回目。フランスの躍進を印象付ける結果となった。
今年の大賞には日本ゲームの『街コロ』がノミネートされた。このためデザイナーの菅沼正夫氏と、ドイツ市場に紹介したヤポンブランドの健部伸明氏らも授賞式に出席している。日本ゲーム初の大賞受賞はならなかったが、壇上で賞状を受け取った。
エキスパートゲーム大賞に選ばれたのは『ブルームサービス』。2008年に年間大賞にノミネートされた『魔法にかかったみたい』のボードゲーム版が5年目となる同賞を受賞することになった。リメイクで大賞を受賞するのは『ズーロレット』などの先例があるが珍しい。審査委員会は「強気か弱気か。この問題は赤い糸のように『ブルームサービス』にもある。ハイリスクのアクションで強力な効果を狙うか、慎重に確実にいくかという選択に常に迫られるのがエキサイティング。臨機応変の戦術で相手を煙に巻けば、本当に魔法の瞬間を経験できる。特に素晴らしいのは追加可能な上級バリアントルールによってリプレイ性を高めていることだ」という。
ドイツ年間キッズゲーム大賞の発表は先月10日に発表され『スピンデレラ』が選ばれている(TGiWニュース)。
『コルト・エクスプレス』は日本語版が発売されているが、『ブルームサービス』の流通はまだ始まっていない。
・Spiel des Jahres e.V.
・TGiWレビュー:コルト・エクスプレス
・TGiWレビュー:ブルームサービス
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ミネルウァ(Minerva)
縦横上手に都市計画
施設を並べてローマ帝国の都市を作るタイル配置ゲーム。OKAZU Brandがゲームマーケット2015春に発表した作品で、当サイトの新作評価アンケートで2位になっている。タイルを縦横一列に並べて一気に発動させるシステムが面白い。
毎ラウンド、施設タイルが全員の前に並べられている。この中から1枚を選び、建設コストを支払って自分の都市に加えていく。施設には資材が手に入る「生産施設」、手持ちの資材に応じて収入が入る「商業施設」、都市の文化レベルを上げる「文化施設」、資材を軍事力に換える「軍事施設」、さまざまな効果をもつ「特殊施設」があり、どの要素に力を入れ、どういうコンボを作っていくかが考えどころとなっている。
これらの施設の多くは、配置しただけでは使えない。「住宅」を建てると、そこから見て縦か横に一方向に並んでいる施設が全部発動するのだ。資材が手に入り、その資材が収入になり、資材を軍事力に換え……これまでの計画が実るときだ。
施設はできるだけ増やしてから、一気に使ったほうがよい。しかし使わないままだと、資材や収入が手に入らないので新しい施設が入手しにくくなっていく。資材が少なくなっていくのを我慢して施設を増やすか、早めに使って資材を手に入れ選択の幅を増やすかも悩ましい。
住宅の建設によって発動する施設は、別の住宅に到着するまでとなっているため、ひとつの列は、両端に住宅を置くと(2回使うと)もう使えなくなる。そこで今度は縦に施設を並べ、別の方向から施設を発動させなければならない。こうしてクロスワードのような都市ができあがる。
最終的に得点になるのは「神殿」である。「周囲8マスにある商業施設1軒につき3点」「最後に残った石材1個につき2点」などの条件があり、これが各プレイヤーの戦略となっていく。建設コストは高いが、できるだけ早いうちに建設して方針を決めておきたい。
こうして場にある施設・神殿・住宅を配置していき、全員がパスをしたら、お金か軍事力を支払って「補佐官チップ」を獲得できる。これは一度使った住宅を再利用できる強力なチップで、列を長く伸ばすのに役立つ。そしてラウンドの最後に軍事力を比べ、上位に得点が入る。6ラウンドでゲーム終了。
4人プレイで90分。資材を節約し、補佐官チップを使って長い列を作ったcarlさんが1位。縦横にこまめに使い分けた神尾さんが最下位で、列の長さが勝敗を分けた結果となったが、carlさんは資材のやり繰り上手で、いいタイルを効果的に集めたのが勝因のようだ。
効果を一度に発動したり、神殿で得点化したりするのは『デウス』と軌を一にするが、タイルを縦横に並べていくパズル感覚が楽しく(どこまで広がるか分からないので床推奨)、また施設の先取りだけでなく、文化マークや軍事力の競争もあって適度なインタラクションもある。遊びごたえたっぷりの本格的なボードゲームである。
Minerva
林尚志/OKAZU Brand(2015年)
1~4人用/10歳以上/60~90分