オーストリアゲーム賞2016に『ケララ』
ウィーン・ボードゲーム・アカデミー(D.デ・カサン代表)は、今年のオーストリアゲーム賞(Spiel der Spiele)を発表し、インド象のお祭りをテーマにしたタイル配置ゲーム『ケララ(Kerala)』が大賞に選ばれた。このほか、キッズ・ファミリー・友人・フリークの4つの部門でヒットゲームが発表されている。
オーストリアゲーム賞は、選考委員が予め候補作を絞り込み、最終的にゲーム経験の少ない人に遊んでもらってその評価で決めている。コアな愛好者が選ぶことが多いゲーム賞の中で、広く遊びやすい作品を選んでおり、ドイツ語圏のショップではドイツ年間ゲーム大賞に次いで影響力の大きい賞とされる。
『ケララ』はコスモス社(ドイツ)から発売されたゲームで、タイルを選んで各自のタイルにつなげて配置していく。タイルは象コマに隣接して置き、置いたら象をそのタイルに移動する。こうして同じ色がつながるように配置していき、最後にできあがったパターンによって得点や失点がある。日本国内では未発売。
毎年キッズ、ファミリー、フレンド、エキスパートの部門で「ヒットゲーム」が挙げられているが、今年は各部門のベスト(simply the best)が選出されるようになった。選ばれたのはキッズ部門で『フラッターシュタイン城』、フレンド部門で『スカイアイランド』、フリーク部門で『モンバサ』。また昨年に初めて設けられた2人ゲームの特別賞は今年は選出されていない。
【オーストリアゲーム賞2016】
大賞(Spiel der Spiele)
ケララ(Kerala / K.ヒーゼ / コスモス)
キッズ部門ベスト
フラッターシュタイン城(Burg Flatterstein / G.ホフマン / ドライマギア)
キッズ部門
キツネ探し(Ausgefuchst)、レオ(Leo muss zum Friseur)、カラス追い(Raben schubsen)、トロピカーノ(Tropicano)
ファミリー部門ベスト
アドベンチャーランド(Abenteuerland / W.クラマー、M.キースリング / ハバ)
ファミリー部門ヒット
リンゴの木のオママ(Die Omama im Apfelbaum)、メモリーボードゲーム(Memory Das Brettspiel)、ニトログリセリン(Nitro Glyxerol)、スカルキング・ダイスゲーム(Skull King Das Würfelspiel)
フレンド部門ベスト
スカイアイランド(Isle of Skye / A.プフィスター、A.ペリカン / ルックアウト)
フレンド部門ヒット
コードネーム(Codenames)、ガムガムマシーン(Gum Gum Machine)、マジック:ザ・ギャザリングボードゲーム(Magic: The Gathering Arena of the Planeswalkers)、
フリーク部門ベスト
モンバサ(Mombasa / A.プフィスター / エッガート)
フリーク部門ヒット
ダイナスティーズ(Dynasties)、ラグランハ(La Granja)、シニョーリエ(La Granja)
グリフィンスクロール
エピックPvP(Epic PvP)、ヴァルスキルの霧(Nebel über Valskyrr)
・Der Östreichische Spielepreis:Spiel der Spiele 2016
・TGiW:ニュルンベルク’16新作情報:コスモス
どうやって審査員になるか―ドイツ年間ゲーム大賞審査員コラム
ドイツ年間ゲーム大賞の審査員ウド・バルチ氏が公式ウェブサイトに投稿したコラムの翻訳。
ドイツ年間ゲーム大賞の審査員は応募制ではない。ポストの公募はないし、誰も申請書を送らない。
そうではなく、審査委員会は任命制である。あるいはそんな大げさな言い方をしなければ、ほかの審査員から一緒にやりたいかどうか訊かれる。実際のところ誰もやりたくない。審査員であるということは、かなりの時間が費やされることを意味するからだ。
私の場合、審査員が連絡をしてきたのは2007年6月だった。電話が鳴り、ドイツ年間ゲーム大賞の審査委員長からだった。彼は自分がドイツ年間ゲーム大賞の審査委員長であると言い、一度会おうと提案してきた。ここは応募手続きとちょっと同じで、実際に会って、お互い自己紹介をした。
もちろん給与の提案はない。審査委員は名誉職である。しかし周知の通り、名誉職は名誉だけでなく仕事もあるものだ。候補者には、そのことを予め説明しておくべきである。私にもそのことを確認するために、詳しい説明があった。
審査委員は期日に集まってドイツ年間ゲーム大賞を選ぶだけではない。数ヶ月にわたり、インターネットの関係者限定フォーラムで予め経験を交換し、議論し、分析していく。それに誰でも審査委員の仕事について想像するように、本当にたくさんたくさんボードゲームをプレイする。審査員として、これだけ頻繁にやれば十分ということは決してない。
とりわけ、個人的な環境以外にも一緒にプレイする仲間が必要だし、いつも同じ好みや予備知識をもつグループだけでプレイしないほうがよい。審査員になりたければ、人生の重要な場面や、少なくとも空き時間にボードゲームを入れる覚悟がなければならない。
しかしプレイすることだけが全てではない。ドイツ年間ゲーム大賞は委員会である。現在は16名のメンバーからなるとても小さな委員会だ。この委員会は、授賞式を開き、小冊子を出版し、インターネットで広報し、メッセに出展し、奨励金を授与し……。この全てを誰かが組織し、実行しなければならない。仕事の一部は事務局が行うが、メンバーが行う仕事もある。
たくさんの時間と労力を使い、たくさんプレイし、意見交換することは、メンバーになるための大事な条件である。しかし何よりも重要な基準は、ボードゲーム評論家であることだ。というのもドイツ年間ゲーム大賞の審査員は評論家の審査員だからである。
ではどうやってボードゲーム評論家になるのか?
まず第一に、ボードゲーム評論家とは一体何だろうか? 私がよく出くわすのは、そのことを知らない人たちだ。ボードゲーム評論は残念ながら、ボードゲーム愛好者が望むほどには普及していない。ボードゲーム評論家はボードゲームを考案する人ではないし、ボードゲーム出版社のためではなく、発売予定のボードゲームを事前にチェックする。ボードゲーム評論家は、ちょうど音楽、演劇、映画、書籍の評論家と同じことを、ボードゲームでするのだ。
だから、ボードゲーム評論家はボードゲームをプレイし、評価を発表する。その対象読者は消費者であり、例えばラジオリスナー、新聞・雑誌・ブログの読者、ビデオチャンネルの加入者を指す。
したがってボードゲーム評論家になるためには、ボードゲームの評論を公開するメディアが必要となる。私が90年代終わりにレビューを始めたとき、記事を発表できるのはまだ新聞だけだった。今日、ボードゲーム評論家は、比較的容易にインターネット上で発表することができる。
ただし発表の種類と方法が重要である。ドイツ年間ゲーム大賞はボードゲームに詳しい人たちをあまりターゲットにしていない。エキスパートゲームに特化したボードゲーム評論家が、すぐに審査員として通用するわけではない。また評論家でなくて愛好者で、対象と距離をおいてに評論できる人は少ない。
さらに継続性と経験が条件となる。また非常に重要なのは、独立していることがある。ドイツ年間ゲーム大賞は、独立した評論家の賞である。自分でボードゲームを開発している人、ボードゲームを販売している人、ボードゲーム出版社のために働いている人は審査員になれない。
そしてもうひとつ、ボードゲームの取材記者はそのまま評論家でない。評論には分析、評価、比較が含まれる。つまり評論家であるためには、背景知識が必要なのだ。そのため根っからのプレイヤーでなければならず、非常に長い時間がかかる。
ではどうやってプレイヤーになるのか?
私の命題によれば、プレイヤーにはなるのではなく、はじめからもうプレイヤーなのだ。人間は誕生時から遊んでいる。遊びは我々が世界を知る本質的なやり方のひとつである。人間は生まれつきプレイヤーなのであり、そのうちの一部がいつからか遊びをやめてしまうだけなのである。
家族や仕事で人生を満たす者もいれば、一緒に遊ぶ人がいない者もいる。また遊びの楽しさを失う者もいる。しかし多くの人々は遊び続け、大人として遊びを新発見する。
特に遊びたくなる原因は個人的な好み、生活条件、友達、社会的地位や職業などさまざまだろう。これは個人的なものであり、ここでは深く立ち入らない。「遊ぶ人がプレイヤーである」と確認できれば十分である。
再びプレイヤーになりたい、これまでよりもっと遊びたいという人は、例えばドイツ年間ゲーム大賞で推薦したボードゲームを遊んでみよう。私達が推薦するのは、遊びを支援し、広め、たくさんの人に遊んでもらうためなのだから。
Spiel des Jahres:Wie man Juror wird