BRIっとでるワン!(John Bull’s Brexit)
痛恨のおもらし
犬のジョンブル(John Bull)ちゃんがEUから出ないように、移民受け入れの限度を予想してカードをめくるギャンブルゲーム。毎回ホットな話題を扱う北条投了氏の作品で、ホットすぎてレビューも遅れられない。
検討国プレイヤーがはじめにカードを2枚引く。カードには1~10の数字があり、2枚の掛け算が今回の移民受け入れ限度となる。つまり最低で1×1=1万人、最高で10×10=100万人である。ほかのプレイヤーには中身を知らせない。
次のプレイヤーから順に山札から1枚引き、その移民を自国に受け入れる(手札に入れるか)、検討国に押し付けるかを選ぶ。「10万人、受け入れてもらえるでしょうか」「大丈夫ですよ」手札は2枚までしかもてず、2枚取ったらもう否応なく押し付けるしかない。
検討国に押し付けられた移民は累積し、限度を超えたら「ブリグジット(Brexit、英国がEUを離脱すること)」が発生する。このとき、検討国プレイヤーは「ブリグジット」の最初の2文字を繰り返し唱えることになっている。「ブリブリブリ!」
バーストさせてしまったプレイヤーは、検討国プレイヤーの高い方のカードが失点となる。さらにそれまで自国に受け入れた移民の数が最も多ければ、2枚とも失点になってしまう。失点の合計が規定に達したらゲーム終了で、失点の少ないプレイヤーが勝つ。
「12万人!」「セーフ!」「18万人!」「通し!」検討国プレイヤーの顔色を伺いながら、受け入れるか押し付けるかを選ぶのは実にスリルがある。整数の掛け算なので、絶対安全な数字があるところがニクい(81の次は90、90の次は100しかないので、そこまで数字が上がると誰が貧乏くじを引くかの争いとなる)。6人プレイで30分ほど。数字が低くていきなり終わるのも驚くし、数字が高くてなかなか終わらないのもジリジリとした緊張感が合って盛り上がった。
どこでジョンブルちゃんがブリっと出るか、なかなか予測できないところがこのたびのEU離脱をうまく表している。めざせ英語版。
BRIっとでるワン!
北条投了/芸無工房(2016年)
2~8人用/30分
アフリカ交易ゲーム『モンバサ』日本語版、9月3日発売
アークライトは9月3日、アフリカを舞台に4つの会社で利益を上げるゲーマーズゲーム『モンバサ(Mombasa)』日本語版を発売する。A.プフィスター作、2~4人用、12歳以上、75~150分、6000円(税別)。
2015年にエッガートシュピーレ(ドイツ)から発売され、ボードゲーム愛好者から高い評価を得ている作品。ドイツ年間エキスパートゲーム大賞2016推薦、オーストリアゲーム賞フリーク部門賞、スイスゲーマーズ賞2位、ルーマニア年間ゲーム大賞ノミネートと各賞に選ばれており、次に発表されるドイツゲーム賞2016で上位になるのは間違いない状況だ。日本国内では輸入版がホビージャパンから発売されている。
植民地時代のアフリカを舞台に、投資家として全土に貿易拠点を広げ、株券を入手して財産を競う。カードのプロット、デッキ構築、セットコレクション、陣取り、特殊能力、ワーカープレイスメントと、要素がぎっしりつめ込まれている。
カードをプロットしてさまざまなアクションを行うが、使用済みカードはスロットに分けて休息させ、次のラウンドには1スロットからしか手札に戻らないところが新しい戦略性を生んでいる。1つ1つのアクションが深く、手応えのあるプレイ感でディープな会社経営が楽しめる作品だ。
内容物:得点計算用紙1冊、ゲームボード1枚、タイル類86枚、会社ボード4セット、マーカー類44個、プレイヤーボード4枚、カード類88枚、コイン60枚、早見表4枚、貿易拠点コマ60個、ルールブック1冊
・TGiWレビュー:モンバサ(Mombasa)