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パターン認識ゲーム『SETカードゲーム』10月上旬発売

セット日本語版ホビージャパンは10月上旬、頭脳を鍛えるパターン認識ゲームの往年の名作『SET(セット)カードゲーム』を発売する。M.J.ファルコ作、1~20人用、6歳以上、30分、1500円(税別)。
テーブルに並べられた12枚のカードから、図形の形、色、数、塗り方の4パターンについて「要素が全て同じ」または「要素が全て異なる」3枚=「セット」をいち早く見つけ出すゲーム。
見つけた人から「セット!」と宣言。確認して合っていればそのセットを獲得できる。カードを補充して続行し、山札がなくなり、テーブル上のカードでセットが作れなくなったらゲーム終了で、獲得セット数の多い人が勝つ。
「セット」ははじめはすぐ分からない。下の写真を見てみよう。左側の3枚は、形・色・数・塗り方が全て異なるので「セット」である。右側の12枚の中にもセットがあるので探してみよう。2枚が同じで1枚だけ違うのはダメである。実際のゲームではこれを誰よりも早く見つけ出して指摘しなければならない。観察力と共に、冷静であることも求められる。
1988年にアメリカで発売され、メンサセレクト、ゲームズ100、ドイツゲーム賞9位、アラカルトカードゲーム賞4位のほか、玩具関連の受賞も多い。国内ではメビウスゲームズから輸入版が流通していたが、絶版になって久しかった。
ルールは簡単で、プレイ人数も問わず、短時間で遊べる作品だ。
SET公式サイト
セット日本語版(コンポーネント)

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カルテット藤田篤氏に学ぶボードゲーム初心者への対応技術

ボードゲームポッドキャスト「今夜もアナログゲームナイト」第69回で、愛知県刈谷市で木のおもちゃ屋さんを営む藤田篤氏のインタビューが配信された。藤田さんが絵本やボードゲームによる子育てのノウハウと、自身が代表理事を務める「日本知育玩具協会」の理念と活動について語っている。温和な語り口の中に、「子育ては幸せにする実験」「子どもとの遊びは親の育ち直し」など胸を打つキーワードが散りばめられ傾聴に値するお話である。
第69回『子供とアナログゲームを遊ぶためのアドバイス(木のおもちゃカルテットオーナー 藤田篤 さん)』
このお話の最後で、子どもと遊ぶときのアドバイスが述べられているが、ここに「(子どもだけでなく大人の)初心者に対してどのようにボードゲームの楽しさを伝えるか」という永遠のテーマへのヒントが隠されているように思う。
藤田氏は、ボードゲーム愛好者が陥りがちなこととして「ルールを丁寧に教えた上で、分かったら始めるよ」というのがあるという。初めてだと何が分かったか分からないと。そこで雰囲気を軽く説明して、「やりたい?」と尋ね、やりたいと言ったら分からないところを手伝う。アドバイスをして勝てれば、またやりたくなる。ルールは後付けでだんだん分かってくるという。
また、ゲーム選びについて、自分が選んだおすすめが、絶対うまく行けないといけないというプレッシャーを自分にかけてしまいがちだという。「一発一中ってのはないよ」「イチローだってよくて4割」。「鉄板」のボードゲームだって、人と場所が変われば絶対に楽しんでもらえるとは限らない。
一方、完全に自由にゲームを選ばせるのも難しい。イラストを見て遊びたいと思っても、内容やプレイ時間が手に負えないことがよくあるからだ。そこではじめははっきりしたイニシアチブを取り、いくつか試してもらうか、できるものの中から選んでもらうことを薦める。いろいろな種類のゲームをバランスよく取り入れることも大切だ。「1つじゃなくて2つ、2つじゃなくて3つ、3つじゃなくて4つってゲームを知ってほしい。そうすると得意なゲームができる。」
薦めるボードゲームを絞りすぎず、また広げすぎず、このさじ加減こそ楽しんでもらう技術といえるだろう。
でも結局は「好きにしてあげる環境づくりや工夫は最大限するが、ゲームを好きになるかならないかはその子自身に委ねるしかない。だからこそそこまでのプロセスで技術を磨いてほしい」と、結局ボードゲームという遊びを選ぶのは本人であることに注意を喚起している。「ボードゲームは誰でも間違いなく楽しめる」という信念はしばしば、趣味の押し付けに陥りがちなので気をつけたい。
大人を決して子ども扱いしてはいけないが(正確には、子どもも本当は子ども扱いするべきではないのかもしれないが)、このお話は大人でボードゲームをほとんど遊んだことのない人に薦めるときにも大いに参考になる。
まずその人・その場に合いそうな候補をいくつか用意しておき、その中からどんなゲームかを軽く説明する。興味をもったようだったら、ルールのさわりだけ説明してとりあえず始めてしまう(反応がいまいちだったら次のゲームの概要を説明してどっちがいいか聞く)。適宜アドバイスをしながら1ゲーム(または1ラウンド)遊んでみて、だいたいルールが理解できたようだったら本番。もう少し慣れてきたら、候補の中から気になるものを選んでもらうようにしてもよいだろう。その際も、候補をあまり増やさず、メニューのようにして概要と所要時間を一覧にしておくのも一手である。
このようなプロセスは、初心者と多く接する人なら多かれ少なかれ取り入れているだろうが、細部まで臨機応変に対応できる技術を磨く余地は誰にでもあると思う。また、新しくボードゲームを始める人がどんどん増えている昨今、これまで新しい人に教える経験のなかった人にも機会はきっとあるはずだ。これはひとつの「技術」であるという認識のもと、身につけ、磨いてみてはいかがだろうか。