「○○専」という選択
新作のリリースが年々増加している一方、仲間と集まって遊ぶ時間は頑張ってもなかなか増やせない。先月行ったアンケートでは、次から次へと新作が発売される中、1つのゲーマーズゲームを繰り返し遊び続けられない現状が浮かび上がってきた。ボードゲーム愛好者は、やり込むのをあきらめて多くの種類を遊ぶか、購入する数を絞って1つの作品をやり込むかというジレンマにさらされている。
このような状況の中、長年の愛好者に、購入数も遊ぶ機会も少なくなっている方が見受けられる。しかも単に飽きたとか、ほかの趣味に移行したというわけではなく、新作が多すぎて追いきれないからという理由である。日本語版のリリースはこの5年で倍増し、年間100タイトルを超えるまでになった。かつては日本語版なら何でも買うということが可能だったが、今は難しい。つまりマニア特有のコンプリート欲求をどのように解消するかという問題なのだ。
そこで提案したいのが「○○専」。自分の好みに範囲を絞ってコンプリートするという方法だ。ドイツのボードゲームデザイナー、フリーデマン・フリーゼはインタビューでボードゲームを音楽に喩え、「メタル、パンク・ロック、ヒップホップなど全部聴かないのと同じで、好きなものにフォーカスすればいいんだ」と言っている。さてどんな○◯専があるだろうか。
・ウヴェ専、クニ専、フラガ専
好みのデザイナーで絞り、そのデザイナーの作品は日本語版であろうと輸入版であろうと徹底的にコレクションしてやり込む。ウヴェ専は多分それだけで満ち足りるぐらいの重さと発売ペースがある。
・アレア専、ルックアウト専、ハンス専
同様に出版社で絞る方法。グラフィックデザインや箱サイズが統一されているので、並べると気持ちいい。難点を挙げるとすれば当たり外れが大きかったり、会社の方針がぶれたりして、粒ぞろいになりにくいことか。国内ならオインク専も。
・大賞専
ドイツの多くの家庭は年に1タイトルだけ、ドイツ年間ゲーム大賞の受賞作を購入するという。ファミリー向けなのでルールがごてごてしておらず、長く遊び続けられる。物足りないならばエキスパート大賞も入れて年に2タイトルずつ、あるいはドイツゲーム賞1位も入れて年に3タイトルずつ。赤ポーンのマークが印刷されているものを選ぶと統一感もある。
・ゾンビ専、ピラミッド専、クトゥルフ専
好きなテーマで絞る方法。自分が持っているほかの趣味とリンクしているならアリ。
・トリテ専、ワープレ専、デッキビルド専
好きなゲームシステムで絞る。年によってトレンドがあり、最近は複合しているので難しいかもしれない。
・パーティー専、2人専
自分が遊ぶ環境に応じて、プレイ人数で絞る。
実際はこれらの中からいくつかを複合させることになると思うが、こうすればコンプリート欲求も満たされ、かつ新作もほどよいペースでフォローできるのではないだろうか。一番のメリットは、話題になっているからといってつい手を出してしまい、かといって自分の好みではないため積みゲーになってしまうリスクを回避できる点にある。
まずは自分のボードゲーム棚を観察して、並んでいるボードゲーム、よく遊んでいるボードゲームにどういう傾向があるかを考えてみるとよいだろう。管理人はドラ専。寡作なのでちょうどよいペースです。
シュピール’18:ルックアウトシュピーレ
ネオム(Neom)
ゲームデザイン・P.ソットサンティ、イラスト・K.フランツ、1~5人用、10歳以上、45分。
3世代にわたって未来の都市を建設するタイル配置ゲーム。プレイヤーは建築家となって適切なタイルを選び、魅力的な住環境と経済発展を両立させなければならない。各世代にはドラフトで7枚のタイルを選び、お金や資材を支払って自分のボードに配置する。タイルには商業、住居、工場、資材、防災の5種類があり、十字路やT字路が描かれていて、道路網がつながるよう、そしてできるだけ収入の高い組み合わせになるように配置する。災害が起これば、消防署があると延焼を予防できるだろう。最後に勝利点の最も高い都市を作ったプレイヤーが勝利する。
ジンジャーブレッドハウス(Hexenhaus)
ゲームデザイン・P.ウォーカー=ハーディング、イラスト・A.アルカートン、2~4人用、8歳以上、30~45分。
『クマ牧場』に続くウォーカー=ハーディングのパズルゲーム。魔法の森の魔女となってお菓子の家を作り、お菓子が大好きなおとぎ話キャラクターを捕まえる。お菓子の家は3×3マスの建築スペースに、1×2マスのタイルを重ねて建設し、覆われたマークの効果でジンジャーブレッドを獲得したり、おとぎ話キャラクターを確保したりする。おとぎ話キャラクターにはそれぞれ好物とするジンジャーブレッドがあり、それを支払うことで捕まえて得点にできる。お菓子の家はだんだん高くなっていき、ボーナスカードに描かれた条件を満たすことでさらに得点が入る。得点の高いおとぎ話キャラクターを捕まえられるように、効率の良いジンジャーブレッド集めがポイントとなる。
カヴェルナ:忘れられた部族(Caverna: Vergessene Völker)
ゲームデザイン・A.ウィルバー&U.ローゼンベルク、イラスト・J.C.ゴンザレス&K.フランツ、1~7人用、12歳以上、30~210分。
ファンのプロジェクトから初の拡張セットが誕生。最初から3人でゲームを始められるが資源を取りこぼしてしまうケイブゴブリン、森林スペースに部屋を作れるけれども山地スペースを掘るにはルビーを支払わなければならないエルフ、イヌもロバも食べてしまうが食料消費量が多いトロルなど、さまざまな長所と短所をもった8つの部族が登場し、それに応じて32の部屋も加わる。新しい部屋はこれまでの部屋と差し替えて使い、特別な配置ルールもある。ゲームごとに部族を変えてさまざまな展開が楽しめるようになっている。
カヴェルナ:洞窟対決2 鉄器時代(Caverna Höhle vs. Höhle 2. Epoche: Die Eisenzeit)
ゲームデザイン・U.ローゼンベルク、イラスト・K.フランツ、1~2人用、12歳以上、45~60分。
基本セットから続けてもう4ラウンドプレイするための拡張セット。2つの時代を続けてプレイするが、第2時代だけでプレイできるショートゲームも可能。第2時代はドワーフ4人ずつをもち、1ラウンドに4つのアクションができる。基本セットのゲームと同様、交互にタイルを取って自分の洞窟に配置していくが、第2時代からは新しい資源として鉄が登場し、鉄棒から始めて武器に加工していく。新しい部屋タイルが21枚加わり、洞窟も8マス増える。
アイス・オブ・スカイ:ドルイド(Isle of Skye – Druiden)
ゲームデザイン・A.プフィスター&A.ペリカン、イラスト・K.フランツ、2~5人用、10歳以上、60分。
昨年秋に発売された『放浪者』に続く2番目の拡張セット。フェイズ4のタイル購入フェイズが2部に分かれる。はじめは通常通りほかのプレイヤーのタイルを購入し、次にドルイドボードからタイルを購入できる。このドルイドタイルは通常の地形タイルだが、石板や巻物がついており、石板はゲーム終了までに特殊効果をもたらす。巻物は基本ゲームと同じく、勝利点やお金になる。最小限のルール変更で新しい展開の可能性をもたらす。
パッチワーク・エクスプレス(Patchwork Express)
ゲームデザイン・U.ローゼンベルク、2人用、6歳以上、20分。
ボードが9×9マスだった『パッチワーク』を7×7マスにして、時間トラックも短くして子どもでも遊べるようにしたライト版。タイルは明るい色と暗い色に分けられ、大きさも異なる。小さなものほど、終盤に穴を埋めるのに役立つだろう。
アグリコラ:ブブルクスデッキ(Agricola – Bubulus Deck)
昨年発売された「アーティフェクスデッキ」に続く、職業カード60枚と小さな進歩カード60米が入ったカードセット。ファンサイト「プレイ・アグリコラ」でバランス調整済み。『アグリコラ』新版にはAデッキとBデッキが48枚ずつ入っているが、2つの追加デッキを加えて基本ゲームのデッキが各168枚ずつとなり完成する。
ヌースフィヨルド:カレイデッキ(Nusfjord: Schollen Deck)
基本セットに入っている3種類のデッキの次のデッキ。新しい44枚の建物カード(No.401-454)と初の女性を含む長老カード、紙製のコインと差し替えられる金属製のコイン25枚が入っている。
建築士ティボール:王の使命のもとに(Tybor der Baumeister — Im Auftrag des Königs)
ゲームデザイン・D.ラッペル
オーストリア・ボードゲーム博物館と共同で昨年発売されたカードゲームのミニ拡張セット。カード24枚で3つのモジュールが入っており、ゲームに新しい展開を加えることができる。