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『伝統ゲーム大事典 ―子どもから大人まであそべる世界の遊戯―』

著・高橋弘徳(大阪商業大学アミューズメント産業研究所研究員)、朝倉書店(2020年2月1日)。
ボードゲーマーの多くは、現代の欧米ボードゲームを中心に遊んでおり、伝統ゲームと言われてもピンとこないかもしれないが、『マンカラ』『ごいた』『投扇興』『彦根カロム』などと言われれば聞いたことぐらいはある人も多いのではないだろうか。これらをはじめとして、日本および世界各国で古くから遊ばれてきた伝統的なゲームを242種、分類して紹介する。
各ゲームの概要には、どこの国のゲームか、ほかのゲームとどのような関係があるかなどの解説があり、実際に遊べるように「使用するもの」「ゲームの準備」「ゲームの進行」「ゲームの終了と勝敗」が記載されている。ほとんどのゲームは紙に線を引いて、適当なコマを使うくらいなので、読んでいる内にやってみたくなったゲームはすぐに遊ぶことができる。
ゲームの分類は「盤のゲーム」「札のゲーム」「サイコロ」「動作のゲーム」「スポーツのゲーム」「言葉のゲーム」「飲食と五感のゲーム」「動物のゲーム」「くじと当てもののゲーム」「比べ合うゲーム」に分かれており、さらに細かい分類がある。索引では地域別や五十音順に探すこともできる。日本のゲームが圧倒的に多いが、名前も聞いたことがないような世界中のゲームも少なくない。
ボードゲームのシステムに関心のある方は、各分類の説明が参考になる。例えば陣取りゲームは、『囲碁』が紀元前から中国に存在しており、『リバーシ』が1870年代にイギリスで発明されるまで、2500年以上も空いているという。複数のゲームを歴史的・系統的に関連付けているのは大変興味深い。
現代のボードゲームも、つまるところこういった伝統ゲームの要素を抽出し、他のものと組み合わせ発展させて出来上がっている。単純であるからこそ、面白さの源泉が詰まっているともいえるだろう。ゲームデザインのヒントにもなりそうだ。
ゲームの紹介だけでなく、まくら投げや雪合戦から、マウスパッドや携帯電話を投げる大会まで、国内外で行われているゲーム(珍スポーツ)のイベントも集めている。遊びの世界は本当に奥が深い。

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海拓者(Kaitakusha – See Settlers)

迷走してもどの島に寄るか
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真っ直ぐには進めない船で島を巡り、建物を作りつつ向こう側を目指すボードゲーム。ゲームマーケット2020大阪で発表される予定だった作品で、関西のボードゲームカフェとプレイスペース付きショップ9店舗による「ボードゲームセレクション2020」で大賞に選ばれた。
各自、自分の船をゲームボードの四辺からスタートさせる。自分の手番には、3枚の手札から1枚を出して船を移動させ、移動先の島で食料やカードなどを得た後、島に船員コマを置く。船員コマを置いた島はレンガ・鉄・石の資源が得られることになり、何手番か使って集めた資源で建設も行える。
3枚の手札は前進がないだけでなく、同じカードが固まることもあって船は思いっきり迷走する。中央には得点チップがあるが、なかなかたどり着くことができないばかりでなく、たどり着いたとしてもほかのプレイヤーの船に囲まれ、脱出が難しい。しかもその中で、場札の建設カードに指示された資源をほかのプレイヤーより先に揃えなくてはならない。食料が不足すると船員が死ぬので、食料の調達も疎かにできない。
誰かがスタート地点の向かい側に到達するか、規定点に達したらゲーム終了。建設したカードの点数、種類によるボーナス、金塊や中央のタイル、到達したゴール地点の点数を加えて勝利点を競う。要素たっぷりで、どこに特化するかを手札と相談することになる。ほかのプレイヤーと狙いがかぶると得点が下がるが、手札のコントロールしにくさによって選択がライトになっている。
4人プレイで45分ほど。中央付近で渋滞が起こり、空き待ちで膠着状態になったところを、bashiさんが遠回りしてゴール。遠回りする内に集めた資源も上手に使って建設の得点も積み増した。手札運は大きいが、だんだんできることが増えていく拡大の方向ではなく、いろいろな得点方法が用意されている多様化の方向によって、僅差で勝敗が最後まで分からないゲームである。
海拓者
ゲームデザイン&アートワーク・コヤマタダシ(2020年)
2~4人用/10歳以上/30~45分