Posted in レポート

ゲームマーケット2020春:新作レポート(1)

ゲームマーケット2020春は4月25~26日に東京ビッグサイト開催予定だったが、3月のゲームマーケット2020大阪に続き、新型コロナウィルスの感染防止のため中止となってしまった。そこで頒布される予定だった作品を、ゲームマーケット公式通販サイトからいくつか入手し遊んでみたレポートである。

ぬくみ温泉繁盛記(工藤さんのゲーム)

旅館を増築して人気旅館を競うワーカープレイスメントゲーム。ウヴェ的なシステムに和のテーマを調和させている。

はじめは受付だけの旅館でスタート。3人のワーカーをアクションカードに配置して資材やお金を集め、客室や風呂、菜園やいけすを増築していく。毎ラウンド終了時に従業員に給料を支払わなければならず、ラウンドごとにアクションスペースが増えてグレードアップされる。助っ人で特殊効果を得ることも可能。部屋や助っ人は収入や得点(人気点)をもたらし、最後に「個人方針」「全体方針」の条件を満たしていればボーナスも入る。

旅館が徐々に大きくなり、収入もあがっていくだけでなく、卵が鶏になり、鶏が卵を生んだり、菜園やいけすで野菜や魚が自家栽培(養殖)できるようになったりと、成長感が楽しめる。アクションスペースのところどころにダイスロールがあり、12面ダイスを振り、足りない部分は助っ人を足して高いものを目指せるところに夢がある。最高級の部屋「貴賓室ぬくみ殿」はここでしか手に入らないところがニクい。

DATA

ゲームデザイン・工藤さん、アートワーク・玉川千夏
1~4人用、12歳以上、20~60分、4950円

nukumionsen.jpg

アルヴィウム(フダコマゲームズ)

未開の大地をほかの種族と共同で開拓するフリップ&ライトゲーム。昨年秋の『インザルーイン』に続くフダコマゲームズの作品で、ピースを書き込むたびにシートが回るという新機軸で面白いインタラクションを生み出している。

各自自分の色鉛筆をもち、自分のシートにテトリス状の形状を記入してスタート。描き終わるたびに隣のプレイヤーに渡し、回ってきたシートに自分の色で同じ形状を描き込むか、1マスだけ空いているマスを塗りつぶす。1周したら、一番大きい四角形の面積が得点になる。これを3~4周繰り返す。シートの持ち主のエリアに隣接して描き込むと協力ポイントが得られ、協力ポイントが多いと自分のエリアも得点になる。

持ち主が得点できないように隙間をところどころ空け、隣接させて協力ポイントを稼ぐという付かず離れずのプレイ感が独特で楽しい。自分のシートがどうなっているか、一周して帰ってくるまでのお楽しみ。自分が見ていないところで描かれるため、意地悪な配置の仕方をしてほくそ笑まれると、自分のシートが帰ってくるのが楽しみ半分、不安半分になる。

DATA

ゲームデザイン・沢口游祐、アートワーク・たかみまこと
3~5人用、8歳以上、30分、3000円

aluvium.jpg

ANTIQUE OR GHOST?(POLAR POND GAMES)

骨董品を仕入れて展示するカードゲーム。『airship city 飛行船都市』など重厚な作品を手掛けているanalog lunchboxのメンバーによるカードゲームのプロジェクト第2弾である。展示品の価値は、場に出ている枚数と市場価値で変動する。

骨董品は6種類。はじめに各自、自分の前に2枚の骨董品を商品として並べてスタートする。手番には、他のプレイヤーの商品を1枚指定する。相手はそれを自分の博物館の展示品にして効果を手番プレイヤーに使わせるか、逆に効果を自分で使って手番プレイヤーの展示品にするか選ぶ。効果は骨董品によって異なり、市場価値が上下したり固定されたり、手札が増えたり、他のプレイヤーの商品と自分の展示品を交換したりできる。展示品が5枚になった人から抜け、全員が5枚展示したところでゲーム終了。各展示品について、場の枚数と市場価値で最終的な価値が決まり、その合計を競う。

各自予め配られるゴーストによって展示できない骨董品があり、しかもそれが最も市場価値が低いと呪いを受け取らなければならない。どの骨董品を集め、どの骨董品を相手にあげて効果を使うか、ものすごく悩ましい。

DATA

ゲームデザイン・須賀正樹、アートワーク・?
3~5人用、14歳以上、15~20分、2000円

antiqueorghost.jpg

ゲムマイスターの選択(天岩庵横丁に集う仲間たち)

予算、プレイ時間、カード枚数などにあわせて、ゲームマーケットの創作ゲームを集めてくるゲーム。ただしゲームのデータを見ることはできず、だいたいの雰囲気で推測しなければならない。

はじめに「カード180枚」「プレイ時間110分」「価格16000円」など、今回のオーダーが決められる。環状に並んだカード(ブースを表す)から、ダイスを2個振って、そのどちらかか合計だけ自分のコマを移動させ、止まったマスのカードを取る。これを繰り返してオーダーになったと思ったら抜ける。全員抜けたところでカードを裏返し、合計してオーダーに近いプレイヤーが勝つ。

分かるのは写真とタイトルだけ。知っているゲームもなくはないが、知っていたとしてもそのカード枚数やプレイ時間まで覚えているはずがない。「このタイトルからしてカードは入ってないだろう」「この大きさでキャラクターゲームだったら1時間くらいかかりそう」などと適当なことを言い合うのは『ファウナ』のような楽しさがある。2018~19年のゲームマーケットで実際に頒布された創作ゲームを1つ1つ、ボードゲームカフェ「天岩庵」の店主がもっている写真もすごい。

DATA

ゲームデザイン・小林林檎
3~6人用、10歳以上、20~40分、3080円

gemumeister.jpg

つづく

Posted in

ポイントサラダ(Point Salad)

あちら立てればこちら立たず
pointsalad.jpg
さまざまな得点方法が書かれた目標カードに沿って野菜を集めて得点を競うカードゲーム。タイトルは近年のゲーマーズゲームでよく言われる用語で、多くの得点方法を用意してゲームに深みをもたせる手法だが、これを凝縮して短時間カードゲームにしたのは、「複雑そうに見えるゲームもつまるところこれだけ」という皮肉も込められているのではないだろうか。
自分の手番にはこの目標カード1枚か、野菜カード2枚を獲得していく。目標カードの裏は野菜カードになっており、野菜カードが取られると、目標カードを裏にして補充する。こうして野菜も目標カードも目まぐるしく変化していく。
目標カードに合わせて野菜カードを選ぶか、集まった野菜カードに合う目標カードを取るかという選択があり、また次のプレイヤーにあまりに美味しい選択肢を残してはいけないという成約があるところはちょっと考える。とはいえ目標カードは多種多様なので何とかなるものだ。
目標カードの中に、ある野菜はプラス点になる代わり、ある野菜はマイナス点になるというものが結構入っており、この種のカードを多く取りすぎると取れる野菜がなくなったり、ほかのカードと相殺して得点が伸び悩んだりする。プラス点になる野菜の組み合わせが、他のカードでさらにプラス点になれば最高だ。これだけの軽さで目標カードのコンボまで狙える。ほかにも全員の中で最少・最多を問うものもあって、駆け引きもある。
戦略性は低くなる分、得点力の最大化・カードのコンボ・最多最少の駆け引きといったゲーマーズゲーム要素を、ミニマルな手続きでライトに楽しめる作品である。
Point Salad
ゲームデザイン・S.スタンケウィッチ&M.ジョンソン&R.メルビン
イラスト・D.マンギーニ
AEG(2019年)+アークライト(2020年)
2~6人用/12歳以上/15~30分