ピクチャーズ(Pictures)
これでもう完成?
積み木やひもなどで写真を表現し当ててもらうゲーム。『コンコルディア』『ナヴェガドール』などM.ゲルツのゲーマーズゲームをリリースしてきたPD出版にしてはいきなりの毛色の違う作品だったが、今年のドイツ年間ゲーム大賞でノミネートされた(大賞発表は20日)。
写真カードを4×4枚に並べ、積み木、ひも、カード、棒と石、キューブの中から1セットずつ持ってスタート。チップを引いて指定された写真を、手持ちのセットで表現する。他の人はどの写真なのかをメモに書いて予想し、答え合わせ。当たると当ててもらった方にも1点入る。セットを時計回りにずらし、次のラウンドへ。5ラウンドで全部のセットで表現して、合計得点を競う。
『ディクシット』『バルバロッサ』のようなターゲットヒント(一部のプレイヤーにだけ当ててもらうことを目指す)システムではなく、当たる人は多いほどよいストレートなシステムを面白くさせているのは、表現のしにくさである。写真は風景が多くて特徴が絞り込めないのに対し、表現するセットは殊の外シンプルだ。このギャップをどう埋め合わせるかが面白さである。
だいたいは構図で表現するが、似たような構図が他にあるときは、その差異を強調しなければならない。しかし強調しすぎると、構図のバランスが崩れてしまう。どの特徴を捉えるか、プレイヤーの工夫が試される。
一方、当てる方としては最初は絶望的に難しいが、慣れてくると直感的にわかってくるのが不思議だ。ゲーム内で暗黙のうちに表現のお約束事みたいなものが形成されてくるからではないかと思われる。写真がゲームを通じて変わらないので、見慣れてくるというのもあるかもしれない。
表現方法は基本的に模写で、とんちやウィットは伝わりにくいため、感覚としてはお絵描きゲームに近い。しかし『ピクショナリー』や『テレストレーション』とは違って、言葉から絵ではなく、絵から絵(正確には写真から抽象画)というところが新しい。もちろん描画の巧さは関係ないので、絵が苦手な人でも楽しめる。
今年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品『ノヴァルナ』『マイシティ』『ピクチャーズ』をすべて遊んでみたが、『ピクチャーズ』が一番大賞を取りそうだという意見が多数であった。ジレンマとか戦略性が好きなゲーマーには少々物足りないところもあるが、昨年の大賞『ジャストワン』と同様、ストレートなところこそ、広く薦められるポイントである。
Pictures
ゲームデザイン:C.シュテーア&D.シュテーア
イラスト:D.マイヤー/PD出版(2019年)
3~5人用/8歳以上/20~30分
リンクするワープレ『ネタ・タンカ』日本語版、7月17日発売
ケンビルは7月17日、『ネタ・タンカ(Nētā-Tanka)』日本語版を発売する。ゲームデザイン・H.リガル、イラスト・C.レニュ、1~5人用、14歳以上、60~90分、6300円(税別)。
オリジナルはラ・ボワット・ドゥ・ジュ(フランス)からキックスターターを経て2019年に発売された。北部ネイティブアメリカンの部族を率いて、新しい指導者ネタ・タンカとなるべく技量を競うワーカープレイスメントゲーム。
順番にワーカーを配置し、全員がすべてのワーカーを配置してから解決する『ケイラス』型のシステム。木材や毛皮を手に入れ、住居、トーテムポール、食料供給、民芸品などで勝利点を上げる。
アクションスペースが互いにリンクしており、隣接している2つのスペースの両方に自分のワーカーがあるとボーナスを獲得できる。ほかのプレイヤーとの競合は、アクションスペースだけではなく、このリンクボーナスの早取りでも起こり、優先順位で考えることが増える。
他にも、配置したワーカーが戻らず、次のラウンドで行うアクションが強制的に決まるスペースや、提供される資源数が有限のスペース、マジョリティ対決があるスペースなど、特徴的なアクションスペースがゲームを複層的にする。
配置が複雑になった冬マップ、制限をかけてベストパフォーマンスを目指すソロモードもある。
・ケンビル:ネタ・タンカ 日本語版