使うとあとが怖いアクション
ベルギーの建築家ヴィクトール・オルタ(1861-1947)は、装飾芸術だった「アール・ヌーヴォー(Art Nouveau、新しい芸術)」を建築に取り込んだ最初の建築家といわれる。彼の遺した建物は世界遺産にも登録されている(画像検索)。彼の時代、ベルギーの首都ブリュッセルで建築家となって名声を競うボードゲーム。ベルギーのパールゲームズがシュピール’13で発表した作品で、スカウトアクションで4位に入っている。効果の強いアクションやカードによる諸刃の剣が、ゲームをエキサイティングにしている。
基本はワーカープレイスメント。順番に1つずつ、助手コマをアクションスペースに置いてそのアクションを行う。大きく分けると資材を集めて建築する方向と、美術品を作って販売する方向の2つ。毎ラウンド、使えるアクションスペースの構成が変わるので、みんなの方向性をよく見て、アクションの優先順位を考える。
建物は、このアクションスペースに建てる。すると、建物を建てたアクションスペースを誰かが使うたびに、自分も同様のボーナスアクションができるのだ。資材を取れば自分も取ることができ、美術品を取れば自分も取れる。だからどんどん使ってほしいところだが、使う側からすれば無闇に得をさせたくないので難しいところだ。
「ブリュッセルボード」というアクションスペースでは、前に誰かが使っていても、助手コマを多く置けば使うことができる。ここでは資材やお金がたくさんもらえるなど効果が大きいが、その代償もある。ラウンド終了時、ここに最も多く助手を置いている人は、1人勾留されて裁判所送りとなってしまう(出る杭は打たれる?)。アクションは使いたい、でも助手が減らされるときつい。みんながそんなことを考えて出方を伺う。
もうひとつ悩ましいのが、著名人(おっさん)カード。これはアクションスペースで入手し、1ラウンドに1回「ブリュッセルボード」で起動できる。資材を調達したり、建物の得点を上げたり、裁判所から助手を戻したりと便利だが、ゲームの最後にその分報酬を支払わなければならず、支払えないと名声が引かれてしまう。効果が強い人ほど報酬も高く、首が回らなくなってくる。
さて、このようにして助手コマを置いてアクションを行うわけだが、置いた助手コマでそのまま、陣取りも行われる。縦の列では助手コマと共に置いたお金の最も多い人がボーナスカードを取り、街の中では、エリアごとに最も多く助手コマを置いた人が得点する。ボーナスカードは好きなところに差し込んで、ゲーム終了時の所持金・建物・著名人・美術品の得点をアップするのに使える大事なカード。ここまで考えて助手をどこに置くか決めなければならないのだ。
5ラウンドでゲーム終了。ゲーム中に入った名声に、ボーナスカードなどによる名声を加えて最も多い人が勝つ。
3人プレイで90分ほど。神尾さんが建築スペースを独占。これによって、誰かが建物を建てるたびに得点が入ってくる。鴉さんは著名人カードを貯めこむハイリスクな作戦、私は美術品を作っては売る割と地味な作戦である。でも美術品はなかなか収入がよく、神尾さんと得点が拮抗した。しかし、スタートプレイヤーの強みで美術品を選べる神尾さんは、後半になって儲かる美術品だけ作り始めた。建築も順調で、建物を完成させ、得点もマックスに。これによってゲーム終了時に50点という大量ボーナスを叩き出して1位となった。鴉さんが著名人ボーナスで2位、私は後半失速して最下位。
ブリュッセルボードによる助手拘束や、著名人カードによる最後の報酬支払いを恐れていては、得点を増やすことができない。しかしそれもやりすぎれば危険である。ワーカープレイスメントにあまり新味はないが、ローリスク・ローリターン、ハイリスク・ハイリターンのアクションを用意することで、エキサイティングなゲームとなっている。
Bruxelles 1893
E.エスプレマン作/パールゲームズ(2013年)
2~5人用/13歳以上/(25×プレイヤー人数)分
ホビージャパンより発売予定