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3つのボードゲームテーブルを比較する

現在、クラウドファンディングで2つのボードゲームテーブルが出資募集を行っている。これと国産のボードゲームテーブルを比べてみよう。

  1. ORIGINSボードゲームテーブル(Makuakeで9月24日まで出資募集中)
  2. PROJECT IRONSIDEボードゲームテーブル(Kickstarterで10月12日まで出資募集中)
  3. ゲーミングテーブル マルコ(現在品切れ中、再入荷待ち)

1.広さ
ゲーマーズゲームまず大事なことは、テーブルの広さである。小さいとサブテーブルを用意したり、和室なら床に置いたりしなければならなくなって視認性が悪い。公民館などによくある細長机を2つ並べるとサイズは180cm✕90cm。プレイエリアの幅は3つとも150cmほどでやや狭いが、奥行きは全て同じかそれ以上。ORIGINSは奥行きがあって正方形に近い。スチール枠の組み立て式のIRONSIDEは組み合わせによって305cm✕90cmのような長テーブルや、183cm✕152cmのような巨大テーブルにもできる(別料金)。

ORIGINS:183cm✕122cm✕76cm(プレイエリアは155cm✕122cm)
IRONSIDE:162cm✕105cm✕72-76cm(プレイエリアは152cm✕91cm、組み合わせにより拡張可能)
marco M:165cm✕106cm✕76cm(プレイエリアは149cm✕90cm)

2.アクセサリ
ボードゲームテーブルと称するからには、ボードゲームを遊びやすい仕掛けがある。ダイスがテーブルから転がり落ちない外枠、カードを取りやすいクロス、テーブル周りのカップホルダーなど、さまざまな工夫が凝らされている。クラウドファンディングのほうはオプションなので別料金のことも。ORIGINSはテーブルにビルトインされていてデラックス、IRONSIDEはオプションが豊富で、macro Mはシンプル。

ORIGINS:カップホルダとトークントレイは外枠上にビルトイン、撥水加工のクロス、コーナーにダイスタワー・積み重ね式トレー、プレイエリアを仕切るディバイダーも取り付け可。
IRONSIDE:カップホルダは外枠の外側に取り付け可、ほかにカードホルダ、トークントレイ、荷物掛けも取り付け可。外枠上に乗せるアームレスト、クロスの上に敷いて模様を変えるマットもあり
macro M:カップホルダは外枠からの引き出し式

3.通常のテーブルとしての使用
昔のこたつ板は、麻雀ができるフェルトの面と、食事などで使う通常の面があった。ボードゲームテーブルでは、上に天板を敷くことで通常の面にできる。外枠の高さが十分にあれば、ゲーム途中の状態でセーブできる。クラウドファンディングではオプション別料金。こちらもORIGINSがデラックスで、IRONSIDEはオプション豊富で、macro Mはシンプルである。

ORIGINS:3枚の天板を外枠の上に並べ、コーナーで固定
IRONSIDE:6枚の天板を外枠の上に並べる。6枚の板に足をつけるとサブテーブルにもなる
macro M:5枚の天板を外枠の中にはめこむ

4.椅子
デザインをテーブルに合わせ、機能をもたせた椅子もある(別料金)。

ORIGINS:天板を収納可能なベンチ
IRONSIDE:なし
macro M:脚のデザインを合わせたチェア

5.お値段
このように、ボードゲーム愛好者にとっては至れり尽くせりのボードゲームテーブルだが、お値段もそれなりにする。macro Mのお得感が際立つ。

ORIGINS:26万9000円~31万9000円、天板・ダイスタワー・積み重ね式トレー・ディバイダー付き39万9000円(クラウドファンディング限定、送料込)
IRONSIDE:628ドル(8万6000円)、天板594ドル(8万1000円)、アクセサリー類セット299ドル(41000円)(クラウドファンディング限定、送料込)
macro M:12万1000円(天板付き、送料込)

とことんまでデラックスを突き詰めてお値段もそれなりのORIGINS、さまざまなオプションでカスタマイズできるIRONSIDE、シンプルでお値段もオトクなmacro M、買うとしたらどれを選ぶ?

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ブーンレイク(Boonlake)

ゲーマーズゲームの粋

どこかの湖の周辺の未開の地域に入植して牛を飼うボードゲーム。『グレートウェスタントレイル』『マラカイボ』のプフィスターが昨年秋にdlpゲームズ(ドイツ)から発表した作品で、Engamesが日本語版を出している。ボードゲームギークのエッセン注目作ランキング5位で、現在、国際ゲーマーズ賞に2部門(マルチプレイヤー、2人プレイヤー)でノミネートされている。

プレイ時間は4人で約3時間。ゲーム説明も1時間ほどかかるゲーマーズゲームだが、各プレイヤーの手番後に全員がアクションできるためダウンタイムが短く、プレイ時間の長さを感じさせない(ついでにいえばインストもワクワクする内容ばかりで楽しい)。

手番には7枚のアクションタイルから1枚を選び、そのアクションを実行する。盤上にタイルを配置し、タイルの上に入植し、入植者を家へ、家を入植地へとアップグレードする。牧草地タイルには牛も置くことができる。アクションのたびにカードプレイがあり、コストを払ってアドバンテージを得る。ゲーム中に4回行われる決算でさまざまなものが得点となり、合計を競う。

ゲーマーに嬉しいポイントはまず、リソースがカツカツであること。したいことはたくさんあるのに、お金も人も資源も常に足りない。お金は中間決算でまとまったものが入ってくるが、1手番くらいで使い切ってしまい、あとは臨時収入やカード売却で手に入るのが2~3金くらい。人は入植やアップグレードのたびにコストとして支払い、なくなると多くのアクションができなくなる。資源はゲーム中ほとんど増えない。1足りない現象は当たり前。その中でやりくりするのが腕の見せどころである。

次がアクションフォロー。どのアクションタイルを選んでも、手番プレイヤーの後に他プレイヤー全員が同様のアクションを(コストを支払って)実行できる。カードを売ることもできるので、何もできないで終わることはない。これでダウンタイム(待ち時間)が短縮でき、ずっとゲームの没頭できる。

そして165枚もあるカードと、12種類の「レバー」による展開の多様性。カードはどんどん補充されるので、手札が常時10枚くらいある。カードには即時効果、持続効果、ゲーム終了時得点の3種類があり、ちょっとしたアドバンテージがプレイの指針となる。「レバー」とはプレイヤーボードにある窓に取り付けるもので、決算までに各1回だけ使ってさまざまな追加ボーナスを得られる。これもどの「レバー」を選ぶかで得意分野が変わる。

アクションタイルは7枚あり、使われたタイルは一番下に下がる。上の方のタイル(最近使われていないタイル)ほどお得だが、それでも多く使われるのは「開拓者」「入植」「雇用」「牧畜」の4枚くらいなので、4人プレイだと同じ人が同じアクションを取る流れになりやすい。残り3枚のタイルをはさんでどのようにアクション選択の流れを変えるのかが勝敗のポイントになりそうだ。

牛も出てくるし、カードには名前も付いているが、「牛は隣接する入植地の数だけ得点」とか、カードの名前と関係のない特殊効果とか、特殊アクションを起こす「レバー」など、ゲームは高度に抽象化されており、テーマよりも、複雑なメカニクスの中で最適解を見つけることに没入感があるのが今風。リソースがカツカツであることで分析麻痺を抑え、待ち時間の少なさでストレスなく、カードやレバーの選択で遊びごたえとリプレイアビリティを高める。まさに粋を極めた作品といえるだろう。

Boonlake
ゲームデザイン:A.プフィスター/イラスト:K.フランツ
DLPゲームズ+Engames(2021-22年)
1~4人用/14歳以上/80~160分(プレイヤー人数✕40分)