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男性的楽しみ方、女性的楽しみ方

妻の前で知り合いのゲーマーを列挙していたら、女性がいないことを指摘された。慌てて考えてみたが、ゆうもあ関連で何人か知っているぐらい。

実際、他のサイトのレポートなどを見ていても女性の登場率はかなり低く、女性がいるというだけで目を引くほどだ*1。もっとも、成人のボードゲーム愛好者は男性が圧倒的に多いというのはドイツもアメリカも変わらない。

女性が、子どもや夫の付き合いではなく自ら趣味としてボードゲームをあまり選択しないのはどうしてだろう。

女性が何人か集まってする趣味といえばショッピングやお茶。メインはおしゃべりである。おしゃべりの中で女性は面白かったこと、たいへんだったことといった体験を共有しあったり、控えめな自慢をしあったり、お互いにほめあったりしている。そのとりとめのなさがいいらしい。

こうしたおしゃべりが楽しいためには、お互いの共通項が多く、さまざまなパラメータが同等であるほどよい。年令、家計の収入、学歴、子どもの数…。同等でない場合は、焦点が当たるのを避けて別の同等なものを探すか、あるいは無理やり同等であるとみなしてしまう。

そこでボードゲームであるが、勝敗がつくという点がどうしても外せない本質であろう。同等であろうと努力さえしている女性の中に、勝敗という同等でないものが生まれるのがなじまないのではないか。

その点、男性は対照的で勝敗がつけることを好むようだ。その場限りのことであっても、序列をつけることや自分のポジションを知ると安心するのかもしれない。勝敗がつくことを好まない男性でも、女性のように同等であることに重きを置いているのではなくて「こんなことで序列がついてたまるか」という負けず嫌いであることが多い。

この男女の違いは、社会的な側面に大きく依存している。例えば平日の昼間、スーパーに行って女性を見ても不思議に思わないが、男性を見ると「この人の職業はいったい何なんだろう」と思ってしまう。それは男性は会社で働いているもの、女性は家で家事をしているものというケースが現代でもまだ多いからにほかならない。

男性は会社にいけば、それぞれ違った地位が与えられる。ところが家にいる主婦は主婦以上でも以下でもない。これが序列を求めてボードゲームを遊ぶ男性と同等であろうとしてボードゲームを避ける女性の違いになるのではないだろうか。

もちろん、男女で嗜好が分かれる原因はそれだけではない。子ども心やコレクション欲など男性の方が強いものもあるだろう。しかし、面と向かって勝敗が決まるというボードゲームの特性を考えたとき、このような男女の社会的性格が大きな原因になっていると思うのだ。

それではどうすれば女性がもっとボードゲームに親しんでくれるか。社会的な問題は現代の多様性によって解消されつつあるかもしれないが、一朝一夕に対策を打てるものではない。テーマ、コンポーネント、システムなどのゲーム自体の問題から、ゲーム会の形式、広報などゲームを遊ぶ環境までにわたって女性が好んで参加できる要素をもっと研究していく必要があるだろう。

参考

*1:レポートをアップするぐらいのマニアには男性がどうしても多くなるため、女性が参加するゲーム会はウェブに現れにくいという事情は差し引いて考える必要がある。

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アンケート(2)

週末までに約50通。とても参考になります。

「質のよい和訳を配布し、翻訳者にも何らかのメリットを還元する仕組みは作れないものでしょうか?」

アメリカではフリークが我先に英訳を作り、データベースサイト「ボードゲームギーク」にアップロードしている。ショップもこれを利用して販売しているようだ。つまり愛好者主体。一方、日本はショップ主体である。

新しいゲームが発売されると、メビウス、バネスト、広島などが和訳を手がける。中には同じゲームを別々に和訳していることも少なくない。これは労力の無駄ではないか、仕事を分担すればもっと効率的にルール和訳を作ることができるのではないかという声もときどき聞かれる。

日本の場合、ショップが和訳を手配しなければならない一番の原因は、和訳がショップにとって主要なサービスとなっているからであろう。今はどのショップでもレイアウトや図解、色使いや文体に気を使って読みやすい和訳を心がけており、そのために少なからぬ手間ヒマをかけている。ショップがこれを他人任せにすることはまずありえまい。

ショップと同じ質と量の和訳をボランティアに期待するのはまず無理だろう。「ボードゲームギーク」で公開されているボランティアの英訳はほとんどの場合文字だけの素っ気ないもので、日本のショップが現在提供しているような質には遠く及ばない。

私はこうしたショップ主体の体制が問題だとは思っていない。むしろ責任をもって質のよい和訳を量産しているという点ですばらしいと思う。我々にできることはまず、ショップがご好意で譲ってくださった和訳を誰にでも使いやすいかたちで管理するということ、それと同時に未紹介のマイナーなゲーム(年代ものや小さいメーカーのもの)の和訳を手がけて裾野を広げることになると思う。

そのために現在、play:gameのデータベースで和訳を管理する仕組みをpuppiさんと始めている。