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『ゲームの教科書』

ヴィデオゲームの企画から製品化までの流れを紹介し、求められる技能やなり方を職種別に説明する本。ゲームの定義、ゲーム開発の流れ、開発者のなり方、1ヶ月でゲームを作る実践編という構成。
長らくヴィデオゲームを遊んでいない人間の感想だが、仕事がここまで細分化して多くの人が関わっているということに驚く。プロデューサーとディレクターとプランナーの違いなど、考えてみたこともなかった。
ボードゲームの観点でもこの本は示唆に富んでいる。自分なりに広げられそうなところを7点ほど。

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ボードゲームのイノベーション

ドイツのボードゲーム専門誌『フェアプレイ』のブログで、ボードゲームのイノベーションシリーズが掲載され、合計20タイトルが紹介された。
現代のボードゲームは、先行する作品が多すぎて個々のアイデアではもはやオリジナリティを追求できない段階に入っており、アイデアの組み合わせで新しさを打ち出しているという状態と言える。そして組み合わされる個々のアイデアには、必ずといっていいほど先駆けとなるゲームがある。そういうゲームを取り上げて並べると、ひとつの作品を分析したり評論したりする上で役に立つだろう。
『フェアプレイ』で20タイトルと後代への影響は次の通り。
1.『メモリー』―記憶、他の多くの作品へ
2.『チグリス・ユーフラテス』―最小比較、他のクニツィア作品へ
3.『天然ガス会社』―ボード周囲を回る得点表、他の多くの作品へ
4.『ボーナンザ』―カードの順番を変えない―ボーナンザシリーズへ
5.『アクワイア』―合併システム、『ビッグボス』などへ
6.『はげたかの餌食』―同時オープン・バッティング、他の多くの作品へ
7.『ラックオー』―カオスの整理、10日間シリーズなどへ
8.『フェレータ』―職業選択システム、『操り人形』や『プエルトリコ』へ
9.『森の影』―暗闇で遊ぶ、『魔法使いの夜』へ
10.『エボ』―ところてん競り、『アメンラー』や『ベガス・ショウダウン』へ
11.『キャントストップ』―バースト、『ヘックメック』などへ
12.『ベンハー』―コマの距離計測、『ドラゴンライダー』へ
13.『カラバンデ』―おはじき、いくつかの子どもゲームへ
14.『マジックザギャザリング』―TCG、他の多くの作品へ
15.『十字軍』―ダイスタワー、『将軍』へ
16.『古代』―ロンデル、『インペリアル』や『ハンブルグム』へ
17.『テーベの東』―時間消費、『ティナーズトレイル』へ
18.『ジェノバの商人』―コマ並べ移動、他のドーンの作品や『メトロポリィス』へ
19.『看板娘』―テーブルチェンジ、後続なし
20.『クレムリン』―手札なし移動、『インペリアル』へ
汎用性を持たなかったものや、正直うまく機能しなかったものも含めるなど、マニア雑誌の『フェアプレイ』らしいセレクトだと思う。ほかにもあったら教えてねと連載を閉じている。
例えば『ケイラス』のワーカープレイスメント(『大聖堂』『アグリコラ』)、『プエルトリコ』の全員行動(『レースフォーザギャラクシー』)、『サンクトペテルブルグ』のブースト(『ドミニオン』)などが思いつく。一方、ドイツゲームを語るのに欠かせない『カタン』は、総合的なゲームなのでイノベーションというと弱いかもしれない。
すぐれたシステムの原点になったのはどのゲームなのか、この機会に探ってみるのも面白いだろう。