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つくもがみ、遊ぼうよ


大きなサイコロに乗った江戸の子供たちのカバー絵、帯には「勝負に勝たないと、双六のマスに閉じこめられちゃう―!?」、カバー裏は「つくもがみすごろく」。そんなボードゲームの香りに惹かれて購入した小説。

この小説の世界は、百年を超えた古い品物が「付喪神(つくもがみ)」と化して、やんちゃな子供たちとさまざまな謎や怪異に挑むお江戸妖怪ファンタジーである。その第1話に出てくるのが、絵双六が付喪神となった「そう六」。名のある絵師に描いてもらったおかげで、観賞用として楽しまれたため、無事に齢100年を超えられたという。ものを大事にしないやんちゃな子供たちを戒めるため、双六の世界に引き込んで勝負を挑む。ところが1マス目から「そう六」も予期しなかった事態に・・・・・・というお話。

ボードゲームの世界に引きこまれる話は『ジュマンジ』や『ザスーラ』でも見られたものだが、ただ双六で勝負しているだけではなく、現実世界とリンクして謎を解いていく筋書きが面白い。

もうひとつ面白いのが、古い品物が百年経つと喋ったり、影の中に入ったり、小さな人形の姿になって歩いたりできるという設定。万物に魂が宿っているというアニミズム(汎霊説)は、日本人にもなじみのある感覚である。

深夜のボードゲーム棚で、ボードゲームたちがあれこれ喋っている様子を想像してしまった。「最近、遊んでくれないよね」「なんか忙しいみたいだよ」「俺なんか、もう10年くらい遊んでもらってない」「えー、そんなに!」「また新しいの買ってきちゃったし」「今の主人の代には、もう遊んでもらえないかもな」「ヒマだし、ドイツ語教えてやろうか?」

つくもがみ、遊ぼうよ
畠中恵/角川書店(2013年)

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ドイツゲーム史の公開講座、動画公開

6月2日に東京で行われたドイツボードゲーム現代史の公開講座(当サイトニュース)の動画が、Youtubeで公開された。

30年にわたって開催されている「SF乱学講座」において行われたもので、講師は澤田大樹氏。「(批評のための)捏造ドイツボードゲーム現代史」と題して、ボードゲームは(面白い、つまらないだけではなく)どんな言葉で語りうるかを考察した。

キーワードはプレイヤー間の干渉・立ち回り方が勝敗に影響を与える「ポリティクス(政治性)」。直接攻撃、インタラクション、ソロプレイなどという言葉で語られるゲームの作られ方のトレンドを、歴史的に位置づけるべく、アメリカの『アクワイア』がイギリス、ドイツに影響を与えて次々と傑作が生み出されるまでの流れを仔細に追った。今後は、ドイツゲームがこれまで重視して来なかった物語とストーリーがゲームに取り入れられると考える。

熱弁の講演は2時間30分ほどに及び、動画では3分割されている。「捏造」と題したのは、これを叩き台にして議論を深めたいという講師の狙いが反映されており、この講義から、国内のボードゲーム評論が発展することが期待される。