ビッグチーズ(The Big Cheese)
大山鳴動して鼠一匹
ネズミたちが競り落とした仕事で利益を上げるオークション&ダイスゲーム。1998年にアメリカで出版されたゲームを今年、日本の出版社がリメイクした。木製のネズミコマ、各種サイコロ、缶入りと、白黒のカードのみだった(チップやダイスは自分で準備しなければならなかった)オリジナル版からの大幅なグレードアップである。
毎手番、山札からカードをめくって仕事が出てくる。これを手持ちのネズミコマを使って競り。一番多い数を言った人が、その仕事を取る。仕事内容は「経営会議にプレゼン」とか書いてある割に、イラストはネズミがのんびり仕事をしている絵で和む。
競り落とした人は、手持ちのネズミをその仕事カードに乗せて、次の人の手番へ。このとき、前に競り落としていた全ての仕事カードからネズミが1匹ずつ返ってくる。最後のネズミが返ってきたら、その仕事は完了。サイコロを振って収入が入る。
サイコロは4面体から20面体まで5種類あり、どのサイコロを振るかは仕事カードに指示されている。「6」と書いてあれば6面体、「8」と書いてあれば8面体。そして出た目が収入となり、その数だけ得点トラックを進める。サイコロの目次第なので、「20」の仕事が一番儲かるとは限らないところがポイント。たくさんのネズミを投入し、何ターンも待った挙句、1とか2が出てがっかりとか。
そんなときは、ビッグチーズのカードである。これを競り落としておくと、サイコロの目がよくなかったときに、1枚消費して振り直しができる。ただし、もっとひどい目になることもある。
手持ちのネズミの数は全員分かるので、足元をみた競りが憎い。高騰が続いて、ほかの人のネズミがほとんどいなくなったときに、12とか20の仕事が来ると安く競り落とせる。「くそー、そんな値段で!」
そんなときは、拒否権のカードもある。これを競り落としておくと、ほかの人に競り落としてほしくない仕事カードを流すことができる。出し抜かれないための保険である。
得点トラックが最初にゴールに入った人の勝ち。
5人でプレイ。ケイコさんが20の仕事で20を出し、12の仕事で12を出すという奇跡でぶっちぎり1位。ダグラスさんが「アンビリーバボー!」を連呼していたのが笑った。私は、つまらない仕事にたくさんネズミを投入してしまったり、ネズミをたくさんもっているところでいい仕事が来なかったりとちぐはぐだった。カード運、ダイス運に大きく左右されることは間違いないが、それでもほかが競り合っているときに貯めておき、ほかがないときに出すというような逆行する動きをするとチャンスが増えるかもしれない。
The Big Cheese
J.アーネスト/ニューゲームズオーダー(2013年)
3~6人用/10歳以上/20分
ロストレガシー(Lost Legacy)
遺産は奴の手にあった・・・はず
カードをプレイして効果を使い、「失われた遺産」を探索するゲーム。日本ボードゲーム大賞を授賞した『ラブレター』の後継作として、ゲームマーケット2013春で発売された。今回のゲームマーケットで一番長い列ができたのは、このゲームを発売したワンドローと、制作したカナイ製作所だったように思う。ゲームマーケット後も、専門店で大人気となっている。
1枚だけの手札が織りなす思わぬドラマはそのままに、「失われた遺産」カードが最後にどこにあるか当てるフェイズが加わり、推理(またはギャンブル)の要素が加わった。
自分の番には山札から1枚を引き、1枚を出してその効果を使う。効果には、ほかの人の手札と交換したり、遺跡(場札)を見たり、指名した相手を(条件に合えば)脱落させたりするものがある。1枚なので、逃げ場なし。「今指名されたら脱落してしまう」「あのカードを引いてきたら終わりだ」というように、脱落は紙一重だ。このスリルがたまらない。
山札がなくなったら、脱落していない人の手札を公開し、強い(数字の若い)順に「失われた遺産」カードがどこ(誰かの手札か、場札)にあるかを当てる。当てれば勝利。この最後のフェイズのために、強いカードを手札に残すだけでなく、失われた遺産(中くらいの強さである)の位置も考えながらプレイしなくてはならない。どこにあるか分かっているのに無念の脱落ということもしばしば。
4人でプレイ。このゲームには基本セット16枚と、拡張セット16枚があり、ひとまず基本セットで3ゲームほどプレイした。アグレッシブなプレイで脱落者が続出し、どうしても山札がなくなる前にゲームが終わってしまう。そこで4ゲーム目は拡張セットに総入れ替え。手札からプレイできない上に、2枚捨てると脱落してしまう「負傷」でぎりぎりの状況に追い込まれる。脱落しても復活できる「聖女」を狙い、「死霊術師」で捨て札を山札に戻す。しかしその努力の甲斐もなく、2枚目の「負傷」を出して負けた。生き残った中で、見事「失われた遺産」を当てたのは長女。ドラマチックな展開が楽しめた。
「失われた遺産」を当てるフェイズが加わったことで、『ラブレター』のようなゲームの切れ味はなくなったが、その分考える要素が増えている。基本セットと拡張セットを組み合わせて遊ぶこともでき、好みによってじっくりにも、スピーディーにもできるところもよい。
Lost Legacy
カナイセイジ/カナイ製作所(2013年)
2~4人用/10歳以上/10分
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