ディスタウファー(Die Staufer)
布石と、最後の一手
シュタウファー朝・神聖ローマ帝国皇帝ハインリヒ6世(1165-1197)。父バルバロッサ王を継いで北海から南イタリアに至るまで版図を広げた。その部下となって、各地域を旅しながら各地域の支配を争う陣取りゲーム。ハンス・イム・グリュック社(ドイツ)から発売され、エッセン・シュピールのスカウトアクションで7位。行動によって手番がどんどん変わっていくダイナミズムが特徴だ。
手番には、貴族や公使のコマを補充するか、手元にあるコマをボード上に配置するかのどちらか。補充すると次のラウンドの手番が早くなり、配置すると遅くなる。先を急いで配置につぎ込んでしまうと、次のラウンドはみんなの手番を指を加えて眺めることになる。1ラウンドに回ってくる3回の手番を、補充と配置にバランスよく振り分けていかなくてはならない。
ボードは六角形になっており、6つの都市がある。それぞれの都市にはコマを置くマスがあり、ここにコマを置くことで、そこにある特権を入手したり、多数派形成で得点が入ったりする。各ラウンドにどの都市で得点計算が起こるかは予め分かっているものと前のラウンドの状況により決まるものがあるので、そこを中心にコマを配置していこう。
配置には、移動コストと配置コストがあり、その分手持ちのコマを支払わなければならない。移動コストは国王がいる都市から離れているエリアほど、多くのコマが必要となる。配置コストが高いマスほど、エリアの勢力が同数のときに勝てる。1点集中でコストの高いマスに配置するか、コストの安いマス2~3ヶ所に分散させるかも考えどころである。
配置コストに支払うコマは、『マンカラ』の要領で各都市に置いていく。このコマは、後のラウンドで回収できるところが面白い。そのため近くの都市でみんなが争っている間に、少し遠めの都市に布石を打っておいても損ではない。
各ラウンドに都市で行われる得点計算での最多賞、補充や配置のときに手に入る宝箱の得点のほかに、ゲームの最初に配られる契約カード(指定されたパターンでコマが置いてあると得点)もある。多様な得点をうまく組み合わせた人が勝つ。
5人プレイで120分ほど。手番が一定ではないことに加えて、配置か補充か、どれくらいのコストでどこに配置するか、考えることが多いためラウンドによっては待ち時間がえらく長いこともあるが、じっくり考える楽しさがある。目先の利益にとらわれず、大局観をもって先手先手を打つところと、陣取りゲームに特有な「後手番の有利」をうまく両立させるところが悩ましい。
Die Staufer
A.シュテーディング作/ハンス・イム・グリュック(2014年)
2~5人用/12歳以上/プレイヤー人数×20分
メビウスゲームズ:ディスタウファー
『イライラしないで』よりもっと
メンヘングラートバッハという、ドイツ西部・エッセンから60kmほどの都市の新聞記事を訳出。登場するミュッケ氏は、ミュッケシュピーレという出版社から『アタカマ』『地球温暖化』などの作品を出している。さらにボードゲームのパーツを販売するシュピールマテリアルは、シュピールに参加した方なら誰しも目に止めたことがあるだろう。そしてさらに、小さい出版社が連合で卸売をする「シュピールディレクト」には、2Fシュピーレなどが参加し注目を集めている。この3つのプロジェクトを統括しているミュッケ氏とはいかなる人物なのか、記事をご覧下さい。
メンヘングラートバッハ。ドイツでは近年、ボードゲームシーンが活況だ。メンヘングラートバッハはその基礎となる役割を果たしている。ここからたくさんのアイデアが生まれているほかに、莫大な数のパーツが送り出されている。
ボードゲームのパーツとして目に止まったものだけでも、床から天井までカラフルなコマが入った箱が積み上げられている。ブランクカード、ダイス、木製のコマ、ブランクのボード、ゲームのお金。この全てが、想像力に富んだボードゲームデザイナーが新作を製品化したり、アイデアをテストプレイしたりするのに必要なものである。メンヘングラートバッハ在住のハラルド・ミュッケ氏が、クリエイターのためのこの遊び場(シュピールプラッツ)の主である。ネット通販サイト「シュピールマテリアル」(www.spielmaterial.de)では、デザイナーたちが必要なものを注文してくる。
「ドイツとヨーロッパ中、いやたぶん世界中で一番、ボードゲームのコマやその他のパーツの品揃えがいいと思います」とミュッケ氏は語る。ホテル業のビジネスマネージャーを経て、今の仕事に就いた。「シュピールマテリアル」はミュッケ氏によれば「窮地から生まれた」という。自身もボードゲームデザイナーで小さなボードゲーム出版社を運営しているが、そこで自身のゲームを製品化するのに、いろいろな種類の良質なパーツを入手するのはとておたいへんなことだった。
そこで2000年から「シュピールマテリアル」でこの穴を埋めている。顧客はドイツのデザイナーが大半だが、ほかにも言語聴覚療法士、社会教育士、学校、大学もある。企業もボードゲームをパブリック・リレーションズの手段として開発している。
このためミュッケ氏は、自身のボードゲームを特定のテーマで開発したり、手持ちのアイデアを製品化するというかたちで手伝っている。ちょうど今、水資源マネージメントとのコラボで仕事をしたり、あるボードゲームをザクセン州の障害者団体のために作り変えたりしている。
ボードゲームの製造も彼の会社を通して行われる。ボードゲームは1000個以上で経済的にも見合ったものになるが、試作品や、50~500個の少部数でも製造することができる。「我々にはゲームを製造できるパートナーがいます」とミュッケ氏。
「箱やボードの大きさを設定し、契約を結ぶと、あとはやってもらえます。」おそらくボードゲームで儲けようとか、ドイツ年間ゲーム大賞を狙っているのでなければ、この方法で自作のボードゲームという夢を叶えられる。ドイツでは長年の間、きわだって活況なボードゲームシーンがあり、情熱的なプレイヤー、定期的なボードゲーム会、秋にエッセンで行われるシュピールのような大規模なボードゲームイベントがある。
そしてボードゲームデザイナーもドイツには数多くいる。ボードゲームデザイナーギルド(SAZ)には450名が加盟する。そこにもちろんミュッケ氏も属している。自身のボードゲームを開発しているが、ほかのデザイナーの作品を出版することもある。さらにすでにあるパーツをいわゆる「リサイクル」するコンテストもある。「大きな出版社はたくさん製造しすぎることがあるのです」とミュッケ氏。「例えば、ドイツ年間ゲーム大賞を狙って外したときなどです。」
そのようにして大量に余ったパーツをミュッケ氏は引き取り、そのパーツを使ったボードゲームのコンテストを開く。このようにしてプラスチック製の原油と採掘塔コマを使ったボードゲームシリーズが生まれた。
もちろん小さな出版社にとって、大企業に太刀打ちするのは難しい。そのためミュッケ氏は3つ目のプロジェクト「シュピールディレクト」に取り掛かっている。これは小さな出版社20社が組合を作り、一緒に卸売をしているものだ。「これがないと我々のような小さな出版社は消えてしまうでしょう」とミュッケ氏。店舗がメンヘングラートバッハにあるこの組合を通じて、業者は170タイトルのボードゲームを注文することができる。
「シュピールディレクト」は営業などおらず、メッセで活動している。この営業形態のメリットは、組合で利益を上げる必要がなく、コスト分だけ働けばよいことだ。小さな出版社はこうしてドイツのボードゲームの多様性に貢献することができている。
・RP Online:Viel mehr als Mensch-ärgere-dich-nicht