シュピール’18:3日目(カルカソンヌ世界選手権)
ドイツで行われている世界最大のボードゲームイベント「シュピール」のレポート。このイベントは毎年、木曜から日曜の4日間で行われるが、土日は人が増え、会場内はさらに混雑する。ただでさえ広い会場の移動が困難になり、試遊はもちろんのこと、購入して持ち運ぶのも大変だ。人だかりでぶらぶら見て回るのもままならない。ピンポイントで見て回ることにした。
屋台が並ぶ半屋外のガレリアが大混雑。ちょっと油断するとすぐ仲間とはぐれてしまう
午前中は朝一番で試遊に入り、その後は第13回カルカソンヌ世界選手権を観戦することにした。会場は喧騒のホール内から静かなザール・ラインラントへ。隣のザール・ドイチュラントではゲーマーズゲームの団体戦「ヨーロッパ・マスター」が行われている。日本代表は、延べ700人が参加した日本選手権を制した藤本巌郎氏。
3勝1敗で迎えた予選最終戦、優勝経験のあるモイズィス氏(チェコ)と対戦する藤本氏。これで勝利し、予選を突破
藤本氏は決勝トーナメントでも、優勝経験のあるリツァルドプロス氏(ギリシャ)と、予選で破れたロイシュナー氏(ドイツ)を破り、ファイナルに進出。対戦相手はルーマニア代表
ルーマニア代表を50点以上の大差で下し、日本代表としては第9回の望月隆史氏以来4年ぶり2回目の優勝を果たした藤本氏。『カルカソンヌ』作者のK.-J.ヴレーデ氏、ほか上位入賞者と
藤本氏によれば、ファイナルは序盤から草原戦になっており、中盤で草原が有利であることから勝利を確信したという。一番厳しかったのは、予選で敗北を喫したロイシュナー氏との、決勝トーナメントでの再戦。わずか1点差で勝利し、ファイナルに進んだ。
カルカソンヌ着物をまとったメビウスママのツイートを見て、会場内から日本人が続々応援に現れ、優勝の喜びを分かち合った。また準優勝したルーマニア代表には、健闘をたたえてメビウスママから個人的にカルカソンヌバッグが贈られた(この「メビウスママ賞」は、毎年あるらしい)。
終わって再び会場へ。
イエロ社(フランス)の『伝説の森(Legendary Forests)』は、昨年のゲームマーケット大賞『8ビットモックアップ』(さとーふぁみりあ)のリメイク
同じくイエロ社(フランス)から、『リトルタウンビルダーズ』(Studio GG)が発売される予定となっている。写真は試作品
プレイしたゲームは2タイトル。
『シティ・オブ・ローマ』は初日のスカウトアクションで1位だった作品。別エントリーで紹介する予定。12歳の子どもと一緒に遊んでいて、途中でお母さんが迎えに来たが、シュピールは子どもが小さい頃から毎年参加しているという。
『グラビティ・スーパースター』は重力が縦横無尽に変化するボードで星集めをするゲーム。手札からカードを出してアクションを行い、全部使うか、1手番パスすると手札が戻ってくる仕組み。相手をつぶすと星を奪えるので、近いところにいるとどちらが先に仕掛けるかで緊張感がある
夜は、ジーピーの社長さんたちと再びリュッテンシャイダー醸造所へ。『ウボンゴ』を取り入れたスポーツのアイデアや、新作がどんどん増え、そのほとんどが1年で消える現状では、フォローするコストパフォーマンスがどんどん悪くなっており、それよりもロングセラーを切らさず製作販売していくことがよいのではないかという話など。
一足早く、日曜日に帰国する。
アズール:シントラのステンドグラス(Azul: Stained Glass of Sintra)
右から行くか、左から行くか
『ドミニオン』以来9年ぶりとなるドイツ年間ゲーム大賞、ドイツゲーム賞をダブル受賞したタイル並べゲームの続編。タイルの取り方は同じで、異なるプレイ感を生み出している。
中央の丸いタイルに4枚ずつ、ランダムに置かれたステンドグラスタイルから1色を選び、その色のタイルを取って自分のボードに配置する。ボードには縦長の窓タイルが並んでおり、ステンドグラスはワーカーコマの置かれた窓タイルにのみ置くことができる。置ききれなかった分と、中央から最初に取ったときに受け取る「1」タイルは失点。
手番の最初にワーカータイルを右にいくつでも移動することができるが、左に戻すには1手番休まなければならない。戻ることが多いとその分、ステンドグラスの建設が遅れることになる。
1つの窓タイルにステンドグラスが揃うと得点が入る。この得点は、その窓タイルの得点に加え、その窓より右にある窓タイルで完成したものが全部加えられる。そのため、右側から先に作っておいて、左側を後で完成させたほうが得点が高いが、上記のようにワーカーを戻すのに1手番かかるところがジレンマとなっている。
また、各ラウンドの色があり、完成した窓にその色のステンドグラスがあるとボーナスが入る。さらに、完成した証にスタンドグラス1つをボードに残しておくが、これがゲーム終了時ボーナスのもとになる。この2つのボーナスのため、色のコントロールも考えなくてはならない。
完成した窓は裏返しになり、また別の色のステンドグラスを置けるようになる。もう1度完成すると、窓は取り外され、ゲーム終了時の得点計算に使われる。
『アズール』のゲーム終了条件はプレイヤーボードの状態に依存していたが、このゲームでは6ラウンド(中央のタイルが6回なくなる)で終了となる。最後に、ボード上に残っているステンドグラスで最も多い色の枚数と、取り外した窓の枚数をかけ、最終ボーナスとして、マイナス点(ラウンドごとではなく、ゲーム全体で計算)を差し引いて得点の多い人の勝利となる。
今回の流れはワーカーを戻さないように、左側からじっくり作っていく方向だと思っていたが、完成しても得点が低い。その間に右側を多く完成させておいた船山さんがどんどん得点を伸ばし始める。最終ラウンドに残った大量の要らないタイルで大失点して最下位。
『アズール』と比べお互いの得点状況が見えやすく、逆転がより生まれにくいかもしれないが、得点計算とワーカーの移動のジレンマが心地よく、よりタクティカルになっている。透明なステンドグラスコマも相まってまた違った魅力がある作品だ。
Azul: Stained Glass of Sintra
ゲームデザイン・M.キースリング/アートワーク・C.クイリアムス
プランBゲームズ(2018年)
2~4人用/8歳以上/30~45分