パズルライクに盛り上がる
ドイツで10年近く前に発売されたダイスゲームが今年、日本語版になった。オーストリアやアメリカでいくつかの賞にノミネートされているものの、ドイツでは受賞歴のない作品である。しかし日本では発売後もずっと人気が続き、絶版後も中古市場で高値がついていた。日本でだけ人気が高かったのはどうしてなのか、興味深い。
最初は3個だけダイスを振ることができる。1個以上確定させれば、残りを振り直しできる。この結果で、カードをもらう。ペアができれば「農夫」、出目の合計が15以上なら「職人」、スリーカードができれば「衛兵」。この辺りが最初の狙い目だ。カードを取ると、次の番からダイスが1個追加されたり、出目を変えたりすることができるようになる。その力を使って、フォーカード、ツーペア、出目の合計が20以上……といった上級のカードを取りに行く。
カードが増えてくると、考えることが多くなる。どのカードの効果をどのタイミングで使うか、センスが問われるからである。一か八か高いカードを狙ってもいいし、手堅いところを取りにいくのもよい。このあたりは性格が出て面白い。
以前アミーゴ版を遊んだときには、カードの効果の組み合わせを考えるのがダイスゲームにしてはテンポを悪くしていると感じた。一投するたびに、あの効果を使うか、それともこの効果を使うかと悩むのはまるでパズル。シンプルなルールの割にプレイ時間が長めで、ドイツで評価されなかったのもそのせいかもしれない。
しかし今回コザイク版を遊んでみて、このパズル風味こそが、このゲームの醍醐味であり、日本で評価されたポイントではないかと思った。カードを使う順番が決まって当初は無理かと思われたカードが手に入ったときの嬉しさ。あと一歩というところまでもっていきながら、最後の一投を外したときの悔しさ。取得条件がどんどん難しくなっていくのがチャレンジ精神を刺激する。
最後は、誰かが同じ出目を7つにして「国王」を取ると、そこから1周の間、それよりも強いゾロ目を出す挑戦をする。ダイスがより多いか、ダイスが同じ個数ならより出目の大きいほうが強い。1周の間に誰かが上回ればそこからまた1周。こうして誰も上回る人がいなければその人の勝ちとなる。
最初に「国王」を取れば、ダイスが1個追加される「王妃」もついてくるが、これで勝てるとは限らず、まくられることが多い。そのため、「国王」を取れる状態でも無理に狙わず、別のカードを取って力を蓄える作戦もある。誰が「国王」を取って終了トリガーを引くか、最後の駆け引きも独特の面白さがある。「このゲームは国王を取ってからがスタート」というのも分かる。
ダイスゲームにしてはじっくり考えるところと、最後に大役を目指して盛り上がれるところがこのゲームが日本で評価されたポイントではないだろうか。イラストも油絵調のアミーゴ版から擬人化された動物に変わり、より楽しそうになっている。
王への請願
T.レーマン/アミーゴ(2006年)・cosaic(2015年)
2~5人用/10歳以上/45分