ドラフトで恐竜コレクション『キューボサウルス』日本語版、11月17日発売
Engamesは11月17日、『キューボサウルス(Cubosaurs)』日本語版を発売する。ゲームデザイン:F.タンギー、イラスト:クリスティアン・デア・ネーデルランデン、2~5人用、8歳以上、20分、2200円(税込)。
キューブ調の恐竜たちをドラフトで集めるセットコレクションゲームで、『キューバーズ』のキャッチアップゲームズ(フランス)から今秋発売された。
各自4枚の恐竜カードを引き、自分の前に並べてスタート。自分の番にはカードを引いて、すべて自分の場に出すか、自分の場から1枚を戻して次のプレイヤーに渡す。次のプレイヤーは前のプレイヤーからカードが回ってきたら、同様にそれらをすべて自分の場に出すか、1枚戻して次のプレイヤーに渡していく。
恐竜はそれぞれ、ラウンド終了時に場に何枚あるかに寄って得点または失点になり、これを記録して次のラウンドへ。2ラウンドの合計で得点を競う。
得点になる枚数でラウンドを終了したいところだが、前のプレイヤーが失点になるようにカードを回してくるかもしれない。シンプルながら、手番ごとに悩ましい選択を手番ごとに迫られる。発展ルールでは集めると特殊能力が得られるDNAトークンも追加される。
内容物:恐竜カード 55枚、DNAの進化タイル 10枚、DNAトークン 40枚、ルールブック 1冊
ボードゲームとジェンダー平等
性別にとらわれない選択
2021年、「日本おもちゃ大賞」からボーイズ/ガールズ・トイ部門が廃止された。過去の受賞作品を見ると、ボーイズ・トイ部門は野球盤・変身ベルト・ロボットなど、ガールズ・トイ部門はアクセサリー・人形・料理や手芸などが選ばれてきたが、おもちゃを性別で分けず、テーマや機能によって分類し、どのおもちゃが好きか子どもに決めさせようというのが世界的な流れ。おままごとが好きな男の子、メカ好きの女の子がいてもいい。むしろ男性の家事参加と女性の理系選択を増やすのに推奨されてもいいくらいである。日本でも男の子のお世話遊び人形や女の子向けのDIY工具などが発売されるようになってきた。
ボードゲームでも「かわいいイラストなので女性におすすめ」「論理的なゲームだから男性向け」というような考え方は次第に薄れつつあるが、愛好者は圧倒的に男性が多く、女性は2~3割にとどまっているのが現状だ。社会生活基本調査によると将棋や囲碁の女性比率は15%ぐらいなのでそれよりはましだが、遊び・趣味・仕事などさまざまなレベルで「男はこうあるべき」「女はこうあるべき」というアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)が集積したものであり、一朝一夕に同数になることは難しいだろう。我が家で定期的に行われているボードゲーム会に女性が参加することは稀だ。近所のボードゲームカフェを覗いても、お客様はほとんどが男性である。カップルやファミリーで楽しむ女性は増えているが、趣味にまでする人はまだまだ少ない。
マンスプレイニングと教え魔
アメリカのボードゲームデザイナー、E.ハーグレイブはアメリカのボードゲーム愛好者が圧倒的に白人男性であること、ボードゲームの箱絵に女性や有色人種が少ないことを指摘し、ロールモデルを通したダイバーシティの推進を訴えている。
「(アメリカのボードゲームイベントに参加する)女性は口説かれます。しかも何度も何度も。まるで私たちがここに来た唯一の理由が恋人を見つけることだったかのように。あるいは、男性と一緒に来た場合、まるでその男性と何時間も愛情を込めて見つめあうつもりでもあるかのように、完全に無視されることもあります。何とかゲームをできたとしても、何もわからない人のように扱われることが多いです。どうやって手番を行うかをわざわざ教え、私たちが勝つとショックを受けて不信感を示すのです。」
典型的な「マンスプレイニング」(男性が女性に対し、見下したような口調で説明すること)である。これではボードゲームに興味を持った女性が逃げ出してしまうだろう。求められてもいないのに初心者に余計な口出しをして嫌がられる「教え魔」は、ボードゲームに限らず、ボウリング場・ゴルフ練習場・テニスサークル・ジム・将棋道場などにも出没する。女性がターゲットになりやすく、本人に悪気がなくてもセクハラになることもあるので注意が必要だ。
対等に協力する感覚
このような現状に対し、ボードゲームを遊んでいるうちに培われる「対等関係」や「協力関係」の感覚が役立つかもしれない。
テーブルを囲めばもう年齢も性別も社会的地位も関係なくみんな対等で、お互いを尊重しあい、同じルールで勝敗を競い合って楽しむ。現代のボードゲームは運もほどよく加味されており、誰でも十分勝ち目があるようにデザインされているため、世間でよく誤解されるように「頭のいい人ばかり勝つ」わけではない。ボードゲームを遊んでいると何となくではあるが、対等な感覚がつかめてくる。得意不得意はあっても、大切な仲間である。筆者は偉そうな人(偉い人ではない)にできるだけ関わらないようにしているが、それと同様に偉そうな人と思われないように気をつけている。いつも何か楽しそうで、自分の意見を押し付けず、相手の話に耳を傾ける。
また、「同じルールを守ってベストを尽くす」という共通理解のもと、たとえライバルであっても全体で楽しいひとときが送れるように協力するのがボードゲームの醍醐味である。スポーツで健闘を称え合うのと同じである。ドイツのボードゲームデザイナー、K.トイバーは「対戦相手が『また明日あなたと遊びたい』と思うようなプレイをしよう」という。
スポーツよりも距離が近いボードゲームでは、身だしなみや言葉遣いから始まって、負けそうになっても途中で投げない、長考しない(他の人を待たせない)、過剰なアドバイスをしない(自分で考える楽しみを奪わない)など、さまざまなマナーが発達している。これらは守らない人を排除するためのものではなく、逆に人と人の垣根を取り払って結びつきを強めるためにあるといえるだろう。「親しき仲にも礼儀あり」とは、礼儀があってこそ人は親しくなれるということだと思う。
以上、ボードゲームを通してジェンダー平等を考察してみたが、『レディース&ジェントルメン』というフランスのボードゲームでは、プレイヤーが上流階級の紳士役と淑女役の2人1組となり、紳士役は株取引でお金を稼ぎ、淑女役はそのお金でドレスやアクセサリーを買って舞踏会に出る。これを性差の非対称性を楽しむゲームと見るか、性別役割分担社会を戯画化したゲームと見るかで評価は分かれるところだが、ジェンダーギャップ指数で116位の日本と、15位のフランスとでは捉え方が違ってくるのかもしれない。
(月報司法書士10月号に掲載)