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ギミック

レビューを読んだりして長らく知らなかった言葉に「ギミック」がある。「G.バースの作品はギミックが面白くて……」「このゲームはギミックが命です……」など。

gimmick
(1)(手品師などの)秘密の仕掛け, たね, トリック.
(2)(広告などで人目を引くための)工夫, 仕掛け, 手; 新案品.
 (C) Kenkyusha Ltd.

ボードゲームでは、ゲームのシステムに組み込まれた可動で立体的なコンポーネントを指すようだ。回す(魔法のコマ、サルの神殿、キャンディ工場、盗賊の親方)、くっつく(オバケだぞ?、おしゃれパーティ、グラグラ城のオバケ)、ずれる(ナイアガラ)、掘る(穴掘りモグラ、カヤナック)、振る(ザップゼラップ、イヌイット)など、枚挙に暇がない(play:gameギミック系ゲームリスト)。ドイツゲームの中では傍流になるかもしれないが、近年の子どもゲームには特に多いようだ。

「黒ヒゲ危機一髪」などMB社をはじめとするアメリカのゲームやその流れを引くゲームもギミックの一種だといえるが、それがゲームの全てにまでなってしまうとひょっとしたらギミックとは言わないのかもしれない。

この頃では私も何気なく使ってしまうが、決して一般的な言葉ではないと思う。ボードゲームになじみのない人には「仕掛け」などと翻訳して使いたい。いったいこれは何のジャンルで使われていた言葉なのだろう?

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人生ゲームM&A

朝日新聞1月10日(火)夕刊5面に「人生ゲームM&A」の紹介記事。カラーでゲーム紙幣をもつ開発チームの写真が載り、開発者の地引さんがこのゲームを開発するまでの経緯を報じている。発売までにルーレットを回した時間は30時間以上。「何百回も繰り返すと、どんでん返しの興奮や駆け引きの面白みや、意外性などの適正なバランスが分かる」とのこと。また部長の池田さんは「結局、勝ち負けの決め手は『運』。そこが、ゲームとしての最高の完成度だ」と述べている。シリーズ38作、累計1千万個という怪物タイトルだが、毎回毎回工夫を重ねていることが分かる。M&Aだけでも発売数はすでに10万個に達したという。

しかしこれだけ売れているボードゲームなのに、いわゆるボードゲームフリークからは単なる運ゲームとしてほとんど無視されている。国産ゲーム全体に言えることだが、ボードゲームサイトでレポートやレビューが挙がることも滅多にない。日本ボードゲーム大賞でも国産ゲーム部門のノミネートは見送られた。ここに、一般とフリークの埋めがたいギャップを感じるのである。

このギャップは一般の人が人生ゲームやウノ以外にもよいボードゲーム・カードゲームがあることを知らないのが一因だ。日本で長年にわたって販売されてきた国産ゲームと、海外から輸入されて間もない現代ボードゲームの知名度の差が歴然としており、ブロックスのようなルールも簡単で楽しいゲームの情報がもっと広がるべきだろう。

しかしこのギャップは、フリークが作り出しているものでもある。フリークの中には子どもの頃や学生の頃、人生ゲームに興じた人がたくさんいるはずだ。それがいつの間にか、もっと面白いゲームを追い求めているうちに、人生ゲームからはるか遠いところに来てしまったのである。自分の選択がゲームに影響を及ぼさず、誰が遊んでも運だけで勝ち負けが決まるゲームを遊ぶ気にはなれない。

このギャップは新しいボードゲームの情報がもっと広がらない限り、またフリークがさらに奇抜なゲームを追い求める限り、どんどん広がっていくだろう。一般の人には、人生ゲーム以外にもルールも簡単で値段も高くなく、面白いゲームがあることをもっと知ってもらいたいし、フリークには、たとえ食傷気味であっても定番の傑作ゲームを繰り返し遊び、ウェブや身の回りに発信していくことを望む次第である。