Posted in 雑誌・書籍

『ボードゲーム・ストリート2011』書評

『ボードゲーム・ジャンクション』からわずか1年、安田均氏とグループSNEによるボードゲーム紹介本が刊行された。2010年シーズン限定の新作紹介で1冊作ってしまうとは実に意欲的だし、それだけ国内のボードゲームシーンが盛り上がっているということだろう。
176ページで100タイトル以上を紹介した『ボードゲーム・ジャンクション』に対し、今回は80ページで50タイトルとなっており、分量は絞られているものの、一部の同人・国産ゲームを除きほとんどが入手可能なのがうれしい。ボードゲームの寿命は近年どんどん短くなっているので、過去1年限定にしたのは正解だった。
構成は安田均氏によるゲーム紹介、秋口ぎぐる氏によるリプレイ、笠井道子氏によるライトゲーム紹介で、さらに秋口ぎぐる氏が「日本の同人ボードゲームが熱い!」と題して国産ゲームを多数紹介している。丁寧で分かりやすかった江川晃氏のレビューは、同氏がお亡くなりになったためもう読むことができない。つくづく残念なことである。
三者三様で読み応えがあるが、特に秋口ぎぐる氏のリプレイは1タイトルに5〜6ページをかけた渾身の作品。「おれの初期配置は108番、リモージュだ。フランス中部の都市だな。」(『ミスターX』)なんて、始めから引き込まれる。最後に収録されている「ボードゲーム大好き座談会」もざっくばらんで楽しそう。
安田氏は、2010年の総括として、インターナショナル性、デッキ構築型などのカード重視、ワーカープレイスメントからの発展の3つの流れを指摘する。ワーカープレイスメントについては、『プエルトリコ』で明確にその指向性が打ち出され、ドイツゲームがシビアで複雑化している一因となっているという。
ワーカープレイスメントは一般的に『ケイラス』が元祖とされているが、作者W.アティアはインタビューで『プエルトリコ』を参考にしたことを述べている。一方、てらしま氏のように、ワーカープレイスメントによって複雑なゲームを容易に習得できるという意見もある(ワーカープレイスメントの魔法)。また、私はワーカープレイスメントは2009年度の一時的な流行という認識であるが、安田氏の意見から、議論がさらに深まりそうだ。
また、「同人ボードゲーム」がどこまでを含むかというところも考えさせられる。秋口氏は「大手のゲーム会社を通さず、個人によって制作・販売が行われているアナログゲーム全般」を同人と呼ぶ一方で会社組織による作品は別という認識を示す。実際、会社組織といっても実質的に個人だったり、アマゾンなどで一般流通していたりして境界線を引くのは難しい。私は「同人」というと、個人またはサークルの「趣味」で作られ、原則イベント売り切りというものを思い浮かべるが、どうだろうか。
最後に、「邦題は流通しているものに」について、今回も配慮されていなかったのは残念である。これでは、購入したいと思ってネットで検索しても探せない。原稿執筆時点では未発売のものもあったかもしれないが、いずれも発売後1ヶ月以上経っており、変更は可能だったはず。独自の邦題をつけるのは第一人者の自負なのか分からないが、読者の利便を優先してほしい。以下、検索用に対応表を載せておく。
オートモビール→オートモービル(バネスト、テンデイズほか)
アローザ・ホテルの殺人→アロザ殺人事件(メビウス)
ディスカバー・インド→ディスカバーインディア(メビウス)
スノーテイルズ→雪国物語(ホビージャパン。※バネストではスノーテイルズ)
夜の狩人→シャドーハンターズ(メビウス)
トリックテイキング名人→トリックマイスター(メビウス)

Posted in 日本語版リリース

『サムライ・ボードゲーム』6月上旬発売

ホビージャパンは6月上旬、R.クニツィアの『サムライ・ボードゲーム』日本語版を発売する。2〜4人用、12歳以上、45分、4,410円。

サムライは、何世紀にもわたり、尽きることのない勇気、疑う余地のない忠誠心、そして和の象徴とされてきた。その名は、今日でもなお尊敬され、サムライの物語や伝説は人々の興味を駆り立てている。農民や僧侶や貴族たちは、サムライにとって重要な力の源となる階級であり、名誉と尊敬に値する。真のサムライになるためには、これら3つの階級の1つから支援を受けながらも、他の2つの階級とも強力な協力関係を結ばなければならない。

サムライの3つの力の源は、田畑と仏像と兜で表している。このゲームでは、この3つの力を、黒い彫刻されたコマで表現している。ゲームボードは島ごとに4枚に分けられ、それぞれを合わせることで日本列島を再現。ゲームで勝利するためには、その町や村に及ぼす力が1番になるように最も有利な位置に自分のトークンを配置して町や村を囲み、そこにある力の源となるコマを取っていかなければならない。(プレスリリースより)

1998年にハンス・イム・グリュック社(ドイツ)から発売され、『チグリス・ユーフラテス』『砂漠を越えて』と並んでクニツィア三大陣取りゲームに数えられる名作。すでに10カ国以上で発売されており、iPhone版もある。昨年の1月に発売された『サムライ・カードゲーム』はこの後継作にあたる。
「幸せなハンス」と書かれていた箱絵は「趣味日本」に。和風テイストのボックスアート、障子戸をモチーフにしたついたて、異国情緒ただよう日本地図ボードと、コンポーネントも魅力だ。