成敗(Say Bye)
殺していけないときもある
浜の真砂は尽きるとも 尽きぬ恨みの数々を 晴らす仕事の裏稼業 へへっ お釈迦様でも気がつくめぇ(必殺仕事人III)
小学生の頃から必殺シリーズが大好きだった。時代劇にありがちな勧善懲悪ではないストーリー、政治と財界の癒着や腐敗、それぞれ影を抱えて生きる登場人物、暗殺シーンに流れる勇ましい音楽。TVスペシャルも見逃さず、サウンドトラックを揃えて毎晩のように聴き、友人と好きな殺し屋を語り合った。主人公の中村主水(藤田まこと)はもちろんのこと、三味線屋の勇次(中条きよし)、飾り職人の秀(三田村邦彦)、鍛冶屋の政(村上弘明)など、キャストも魅力的である。
だから『ラブレター』のカナイ製作所から昨年発売された新作が、必殺ものだと知って飛びつかないはずがなかった。プレイヤーは「成敗人」となって、協力して悪党を倒す。
はじめにプレイヤー人数の悪党が場に並べられ、そのわきに「状況カード」が裏向きに並ぶ。これが成敗すべき憎き悪党である。最終的には成敗人が1人ずつ悪党を受け持って戦い、基本的には相打ちにならないで倒せば、成敗は成功となる。
ゲームは、悪党の状況を調べると共に、成敗人を強化し、誰がどの悪党を担当するか決めていくという流れである。手札には「支度カード」というものがあり、これを自分の前に出してアクションを行う。1人の悪党の状況カードを全部見る「聞き込み」、表になった状況カードを捨てる「対策」、攻撃力を上げる「特訓」(思い出すなー、鍛冶屋の政が汗だくで懸垂しているシーンとか)など。カードを裏にして出すことで、各成敗人の特殊能力を使うこともできる。
悪党のわきに並んでいる状況カードは、悪党のステータスを変化させる。攻撃力と体力を上げる「用心棒」、状況カードを増やす「金の力」、成敗人の力を減らす「待ち伏せ」など、成敗人にとって不利になるものがほとんどで、多いほど対策も難しくなる。協力ゲームだが、こっそり見た状況カードや、手札の内容をしゃべってはいけないというルールがある。「あいつは強い。お前はこっちに行け」「こっちも今の私では無理です、先生!」といったヒントだけで担当を決めなければならない。
厄介ながら味わいがあるなあと思う状況カードが「病の伴侶」。このカードがある悪党は、殺してはいけない。かといって、殺されてもいけない。どちらも生き残るように調整して向かわなければならない。
支度カードに書いてある数字は時間を表し、合計で10になるまでしか出せない。もう出せなくなったら、悪党を1人選んで、その担当となる。こうして全員が担当を決めたら、いよいよ戦闘。成敗人と悪党の1組ずつ、スピードの早い順に一撃ずつ攻撃して、勝敗を決める。成敗人が全員生き残って、成敗が成功すれば全員の勝利。1人でも負ければ敗北だ。
最初に聞き込みした越後屋が、実は病の伴侶がいることが分かる。しかし攻撃力が高く、生き残るのは容易でなさそう。滝本道元を見たtomokさんこと源斎のじいさんも頭を抱えている(後で分かるが、攻撃力と体力が急激に上がる「妖刀」をもっていた)。神尾さんから攻撃力∞(先手になれば必勝)の「必殺」カードを送られたtomokさん、神尾さんが無理だという青柳宗重にアタック。こいつは何とか倒して、私も法海という坊主(汗)を倒したが、神尾さんが滝本を倒せず、鴉さんも越後屋にもやられて敗北。難易度はデフォルトで難しめらしいが、簡単に成功してしまっては面白くないだろう。再戦希望。
支度カードを出すたび、状況カードが明らかになるたびに、成敗人と悪党のストーリーができあがっていくのが面白い。それはまるで、自分自身で時代劇を演じているかのようである。
成敗
カナイセイジ/カナイ製作所(2012年)
3~8人/10歳以上/30~60分
ゲームストア・バネスト:成敗
フラッシュポイント(Flash Point: Fire Rescue)
今燃えようとしている火がそこに
2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロでは、消防士やレスキュー隊の果敢な救助活動が注目された。彼らの活動は死と隣り合わせで、実際に命を落としたニューヨーク市の消防士は343人にのぼる。事件から10年後、同じアメリカで発売されたこの協力ゲームは、火事で家の中に取り残された10人の命を知恵と勇気で救助する。建物が崩壊するのが先か、7人以上救助するのが先か?
消防士たちが到着したときには、すでに家の中に炎が広がっている。順番にアクションポイントを使って、家の中に入り、炎を消し止め、要救助者を屋外に運び出す。でも決して容易な仕事ではない。
まず要救助者が、家の中のどこにいるか、はじめは分からない。「?」マーカーのところにいくと、2:1の確率で要救助者が登場するが、誤警報のこともある。せっかく家の奥まで入ったのに、そこには誰もいなかったなんてことも。消防士のアクションポイントは限られているので、無駄な動きは敗北につながるだろう。「オレはこっちから入って、奥を探索する。援護の消火活動を頼む!」「了解!」チームワークが大事だ。
そして1人手番が終わるたびに炎が拡大する。待ったなし。サイコロで決めた座標にまずは煙マーカーを置き、すでに煙マーカーがあれば炎マーカーに変える。すでに炎マーカーだったら、このゲームのタイトルにもなっている「フラッシュポイント(引火点)」だ。爆発して周囲四方向が延焼し、壁が壊れる。周囲にも炎マーカーがあると、恐怖のショックウェーブ。その直線上で離れているところにも延焼や壁の損壊をもたらす。さらに、炎マーカーに隣接する煙マーカーが全部炎に変わるフラッシュオーバー。連鎖反応で炎が広がっていくのは恐ろしい。
消防士が炎に包まれると、ノックダウンして救急車に運ばれ、そこから再起を図る。しかし要救助者が炎に包まれれば、残念ながら手遅れとなってしまう。無事に救助できれば、次の「?」マーカーをサイコロで決めた座標に補充して次の人の手番となる。
経験者向けゲームでは、最初から相当火の手が広がっており、爆発も何度か起こっている。また、引火するといきなり爆発する危険物が屋内にあり、連鎖で炎が広がる高温点マーカーも登場する。しかも要救助者を屋外に運び出すだけでなく、救急車に乗せなければならない。難易度は3段階だが、新入隊員レベルでも十分厳しい。
一方、消防士のほうもグレードアップしている。まず強力な放水銃を備えた消防車。消防士が自ら乗り込まなければならないが、うまく使えば一挙に炎を消し止められる。おそらく1人は、消防車の運転手専属になるだろう。さらに、各プレイヤーは特殊技能をもった専門家を担当する。「?」マーカーをめくって要救助者がいるかどうかを確認できる赤外線走査員、要救助者が自力歩行できるように治療する救急救命士、消火用のアクションポイントが多いCAFS隊員、放水銃を1回の手番に2回動かせる操作技師など8種類。どれを選ぶかから、ゲームは始まっている。
新入隊員レベルでプレイ。tomokさんの消防車が活躍し、6人目までは何とか救出し終わる。ところが7人目がまもなくというところで、相次ぐ爆発のため壁が予想以上に壊れており、建物が崩壊して敗北。リベンジを誓うのであった。
協力ゲーム、連鎖反応、各プレイヤーの特殊能力など、いたるところに『パンデミック』(2008年)の影響が見られるが、カードが一切なく、ランダム要素がサイコロで決められていることと、テーマが身近であることで、より分かりやすく、感情移入がしやすい作品である。
Flash Point: Fire Rescue
K.ランジング/インディー・ボード&カード(2011年)―ホビージャパン(2012年)
2~6人用/10歳以上/45分