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ゲームマーケットのジレンマ

今回のゲームマーケットでは、イベント限定ではなく、後からでも買える作品が多くなったという印象をもった。これまで力を入れていたゲームストア・バネスト、ロール&ロールステーション、すごろくや、ボードウォークなどのほかに、イエローサブマリンが力を入れているのが大きい。売れ残っても、ショップに委託販売できる安心感で、多めに作るサークルも増えてきた。ものによっては、ゲームマーケット同時発売のところもある。
これによって参加者も、単価が下がる、ゲームマーケットに早朝から並んだり、ヤフオクで高値を出したりしなくても入手できるなどのメリットがあるが、その一方で、「どうせ買えるんだからここで買わなくてもよい」という認識が生まれ、当のゲームマーケットでは後回しされるという状況が生まれつつあるようだ。
サークルのほうでもすでに分かっていて、ゲームマーケット特別価格を設定したり、限定プロモカードを付けたりしているところもある。そうでもしないと、ゲームマーケットでわざわざ買う意味が少なくなってきているのだ。
多くの人に買って遊んでもらいたいのに、多く作るほど売れなくなるというこのジレンマを、「ゲームマーケットのジレンマ」と呼ぶことにする。その背景にあるのはレア度である。
今回のゲームマーケットでは、初出展のところは売り切れが目立ったが、2回目以降の出展では売れ残りが多かったという。初出展で売り切れたので、次は多く作っていくと売れない。残念なことだが、2回目&増産でレア度が二重に下がってしまうものと見られる。
もちろんレア度だけでゲームが売れるわけではなく、確固たる評判を得たところは出展何回目であろうと売れている。しかしそれはほんの一握りにすぎない。「売上の8割は全出展者の2割が生み出している」というパレートの法則である。この二極化は、すでに数年前から始まっていると見られるが、全体のパイが大きくなるにつれて、格差がより目立ってきたのだろう。
さらに今回のゲームマーケットでは、巨大キャプテンリノをはじめ、魅力的な日本語版が数多くリリースされたことや、給料日までだいぶあることなども、同人ゲームにとっては逆風になったかもしれない。参加者の財布の中身をめぐるワーカープレイスメントが、ゲームマーケットでは繰り広げられている。
しかし、二極化の結果どんどん長くなっているロングテールが、ゲームマーケットの魅力の源泉であるのは間違いない。単なるレア度だけでなく、人を選ぶがその人にはたまらない作品を求めて、愛好者たちは宝探しに余念がない。
エッセン・シュピールでは「スフィンクス・シュピーレ」という毎回ブラックなゲームを作ってくるドイツの個人出版社がある。H.ペールというヒゲのおじさんが『スポーツは命取り』『鼻ほじりゲーム』などの作品を発表しているところだ。一般的に売れるものでは決してないが、コンスタントに出展し、少人数であるが固定ファンがいる。ゲームマーケットでいえば、『佐村ァ後ろ後ろ!!』『ステステマーケティング』の芸無工房がこのポジションにいる。時事をパロディゲームに落としこんでくる異能に「(芸無工房の作品を遊べる)日本人でよかった」というファンさえいる。
そのようなわけで、メジャーを目指すのも結構だが、中には売れる売れないといった視点だけではなく、少量生産でも尖った作品を作り続けるサークルを私は期待している。豚の鳴き声でアイデア出しされていた「おっさん育成ゲーム」が(私的には)待たれる。

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『逃げゾンビ』日本語版、6月13日発売

アークライトは6月13日、ゾンビの襲撃から生き延びるカードゲーム『逃げゾンビ(Run, Fight, or Die!)』日本語版を発売する。R.ローニアス作、1~4人用、14歳以上、30~60分、4,800円(税別)。
『アーカムホラー』のR.ローニアス氏がデザインし、2014年にエイツ・サミット社とグレーフォックス・ゲームズ(アメリカ)から発売された。ゾンビの大群に襲われたホークンヴィルという街からできるだけ多くの住民を救出し、その得点を競う。
救出した住民は仲間になり、いろいろなスキルを使って手助けしてくれる。でも、ただ足手まといで厄介なだけな人物もいるかもしれない。救出した住民はそれぞれ勝利点になるが、役に立つ人物ほど得点は低く、厄介な人物ほど高い。たくさんの仲間を救出すると同時に、無事に生き延びることも考えなければならない。
B級ゾンビ映画テイスト満載のゾンビ・ゲームだ。
アークライトゲームズ:逃げゾンビ 完全日本語版
逃げゾンビ日本語版(コンポーネント)