ゲームが増えるほど遊べなくなるジレンマ
アメリカのボードゲームサイト”The Daily Worker Placement”(http://dailyworkerplacement.com/)では、大規模なボードゲーム愛好者のアンケートを行い、結果を4回に分けて発表した。2400人が回答し、アメリカ人が半数を超える。既婚率52%、男性75%で、年代別では25~34歳が42%と最も多いなど興味深い結果となっている。
その中に、ボードゲームの所有数と、1タイトルあたりの平均プレイ数を比較したものがある(SURVEY RESULTS #4: COLLECTIONS, TEACHING, AND LEARNING)。所有数は2つの山があり、10~25タイトルと、55~99タイトルがともに約15%である。その先は100~149タイトルが14%、150~249タイトルが10%とゆるやかに減少するが、1000タイトル以上も2%いる。
1タイトルを平均どれくらいの回数遊ぶかという質問では、3~5回という回答と、10回以上という回答が多い。もっと遊びたいという人が88%になるが、時間がない(77%)、仲間が集まらない(45%)、新しいゲームがどんどん出る(35%)という答えが多く、インストが面倒くさいという答えは16.5%に過ぎない。私の感覚もこれに一致する。
この平均プレイ数を、所有数別に分けたグラフがある。これによると、所有数が25タイトルまでは10回以上遊ぶという人が最も多いが、26タイトル以上になると5回という答えが最も多くなる。さらに150タイトルを超えると3回、1000タイトルを超えると1回しか遊ばなくなる。一方、10回以上遊ぶという割合は、50タイトルを超えたところから激減する。
ゲームを2倍に増やすことは割と容易にできても(自然とそうなるというべきかもしれない)、プレイ時間を2倍に増やすのは難しい。所有ゲーム数が30タイトルぐらいになったら、一度自分のプレイスタイルを見直してみよう。意図的に買い控えて、手持ちのゲームをもっとじっくり遊ぶという楽しみ方もある。
あるいはそれ以上増えても、ゲーム会に毎回遊びたいゲーム数タイトルの枠を用意しておいて、定番→新作→定番→新作というようにバランスよく遊ぶという方法もある。特に普段遊ばない人がいる場合には、たとえ新作を積んででも毎回遊ぶ定番を出していったほうがよいだろう。ゲームが増えるほど遊べなくなるジレンマは、せいぜいマニアの悩みにとどめておくのがよい。
私の場合、この頃の定例会は未プレイばかりになりがちで、それはそれで楽しいのであるが、これとは別に地元のカジュアルプレイヤーとド定番を遊んでバランスをとっている。
ビンジョー×コウジョー(Piggyback x Factory)
便乗してどんどん生産
工場の生産ラインを作って、さまざまな製品を作るボードゲーム。すまいる120円工房の『ススムカ×モドルカ』に続く第2作目で、ゲームマーケット2016神戸で発表された。タイトルにもなっている便乗のルールが面白いインタラクションを生み出している。カードテキストがなく、練り込まれたシステムだけでこれだけの展開を生み出しているのがすごい。
自分の工場には製造ラインが3本ある。ここに「熱する」「切る」「固める」「混ぜる」「組み立てる」という5種類の工程タイルを配置して、生産体制を整えよう。
工程タイルには「手作業」と「工場」がある。「手作業」は無料で配置でき、すぐに使えるものの生産するとなくなってしまう。「工場」は有料だが、生産してもなくならない。値段の高い「工場」ほど、短期で生産できる。序盤はこの2つをほどよくミックスして、簡単な製品が作れるようにすることを目指す。
手番の最初には、各製造ラインの工程タイルにあるコマを1マスづつ進める。これは時間が経って、その工程が進んだことを表す。次の生産では、工程が終わった(コマが進んだ)ところまでしか製造できない。無駄な製造ラインを作らないように効率よく回そう。
次に生産。市場から注文が出てくるので、その製品に対応する製造ラインを使って生産する。例えばプラスチックだったら、「熱する」と「固める」の工程が必要。この両方の工程が終わっている製造ラインから、コマを戻して製造する。製造すると収入が入る。
このとき、ほかのプレイヤーも「ビンジョー」できる。「ビンジョー」は収入が下がるが、1つ少ない工程(プラスチックだったら「熱する」か「固める」のどちらか)でできるため生産しやすい。ゲームは、どれくらい「ビンジョー」できるかが勝敗を分ける。ほかのプレイヤーの製造ラインをよく見て「ビンジョー」しやすいようにしておくことも大事だ。
それから、製造した収入を使って新たな設備投資か、投資を行う。設備投資では「工場」タイルを購入して、自分の製造ラインに追加。投資ではその金額だけ投資コマを進める。ゲームは先に60マネー以上したプレイヤーが勝つので、前半でどこまで設備投資して、どこから投資に切り替えるかの判断も重要だ。
4人プレイで60分。手作業を多めで回して小金を稼ぎ、できるだけ高い工場をタイルを各製造ラインに分散させて小回り重視。工程の多い製品は作れないが、「ビンジョー」がどんどんできるので回転がよい。ほかの人が大きな工場を目指すのに手間取っている間に投資に切り替え、先行逃げ切りで勝利。でもみんながこの戦術にすると工程の多いラインも必要になってきそうで、各プレイヤーの出方によって戦術が変わるのが面白い。
ほかの人が何を作ろうとしているのか、それに「ビンジョー」するにはどれが一番早いか。「ビンジョー」して安い収入を選ぶか、製造ラインをもっと進めて高い製品を作るか。プレイヤーの狙いが絡みあってインタラクションを生み出す。たった4ページのルールでここまでの展開になるとは思っていなかった。
ビンジョー×コウジョー
すまいる120円/すまいる120円工房(2016年)
3~4人/9歳以上/40~60分