日本の正体隠匿カードゲーム『タイムボム』をリメイクした作品がキックスターターで公開され、批判が起こっている。
批判されているのはアメリカ・ユタ州の愛好家たちがによる初プロジェクト『ドラゴンウェイク(Dragonwake)』。ヒーローかカルト信者のカードが配られ、各プレイヤーの前に並んだカードをめくっていく。遺物カードを全部めくればヒーローの勝ち、ドラゴンカードをめくるか、4ラウンドで遺物カードがすべて見つからなかったらカルト信者の勝ちとなる(ここまでは『タイムボム』とテーマ以外全く同じである)。上級ルールではめくられると効果を発動するアーティファクト、毎ラウンドはじめにめくられるイベント、各プレイヤーがもっているパワーカードが加えられる。目標額の1万ドル(133万円)は達成済み。
キックスターターのFAQで、この作品が『タイムボム』やそのクトゥルフリメイク『クトゥルフに関わるな(Don’t Mess with Cthulhu, 2014)』とどう違うのかという質問に対し、基本的なメカニクスは同じで、リメイク(reimplementation)と呼んでよいという回答が掲載された。『クトゥルフに関わるな』が絶版で手に入らなくなったので個人的に自作し、5年間遊んでいるうちに要素を追加して別ゲームになったので製品化することにしたという。『タイムボム』の存在は最近まで知らなかったといい、「既存のゲームと同じメカニクスを使って手っ取り早く儲けようという意図はありません」とコメントしている。
『ドラゴンウェイク』のプレイ写真
このような説明に対し、「ゲームが絶版になった場合、オリジナルのライセンスを取得せずに、自分のバージョンのゲームを出版できるのか?」「東アジアのデザイナーのアイデアを盗むアメリカのクソ野郎がまた現れた。こんなクソはうんざりだ。『沈んだ船乗り(『エセ芸術家ニューヨークへ行く』の類似作品)』『ワーワーズ(『インサイダーゲーム』の類似作品)』『バンブーバッシュ(『トゥクトゥクウッドマン』の類似作品)』……後を絶たない」といった批判がTwitterで寄せられている。
ゲームルールの著作権については、独自性が認められれば文面が同じでなくても保護の対象となるというドイツ連邦裁判所の判例(1961年)があるものの、日本を含め一般的にこのような考え方は採用されていない。このような事件はたびたび起こっているが、このような事情から通報や訴訟に至ることは稀で、道義的な問題として批判されることが多い。
『タイムボム』の作者である佐藤雄介氏によると、『ドラゴンウェイク』制作者側からのコンタクトはなかったといい、次のようにコメントしている。
「『タイムボム』と酷似しているとのことですが、『ドラゴンウェイク』のルールを知らないので、許容できるかどうかの判断ができません。ですが、『タイムボム』の追加ルール案は、私も山ほど考えてありますので、やめて欲しいというのが本音です。『シャーマンズ』というゲームが『タイムボム』からインスピレーションを受けているらしいのですが、『シャーマンズ』は独自の素晴らしいメカニクスを持っています。『タイムボム』とは全く別のゲームであり、このゲームが生まれるきっかけとなれたことを光栄に思います。『ドラゴンウェイク』が仮に、許容できない内容だった場合は、もちろん販売しないでいただきたいです。 私の収入源はボードゲームの売り上げです。決して金持ちではない私の財産を減らさないで欲しいです。『タイムボム』英語版はインディボード&カードと契約を結んでいるため、現状ではあらたに契約を結ぶこともできません。ゲーム制作のモチベーション低下の可能性もありましたが、今のところ問題ありません。この程度では創作意欲に影響は無いようです。最後に、このような無駄で面倒なコメントを作成するのは苦痛でした。小野め。」
『タイムボム』はアークライト社から2200円で発売中。
Don’t Mess with Cthulhu は「クトゥルフを懐かしむな」ではなく、「クトゥルフに関わるな」あるいは「クトゥルフにちょっかいを出すな」ではないでしょうか?
なるほど、それだとスッキリしますね!