スライドして収穫してコレクション
南国の島で果実を栽培し、船で出荷したり、島に新しい施設を建てるゲーム。昨年のドイツ年間ゲーム大賞受賞作『ピクチャーズ』のデザイナーがデザインしたが、『ピクチャーズ』はシステマチックな作品ではないため、ユーロゲームの評価は未知数だったが、スライドパズルを取り入れた安定感のある作品といえる。コスモスサイズの大箱だが、プレイ感は軽め。
5×5マスの各自の島にはバナナ、ライム、ザクロ、オレンジ、マンゴスチンの収穫タイルがあり、手番には1枚を一直線にスライドして収穫する。収穫量はスライドしたマスの数となっており、広い土地があればそれだけ多く収穫できる。
島の周囲には船が停留しており、それぞれ必要なフルーツのセットを支払うと出港して、得点になると同時に1マス空く。当座はこのようにして島を広げていくが、フルーツは、中央ボードのビジネスタイルの獲得にも使える。こちらは指定されたセットを支払うとさまざまなタイルが手に入り、島に新たに置かれる。スライドしてフルーツをもたらすもの、さらにセットを作って高得点のアイスクリームやミルクセーキを作るもの、土地を塞ぐだけで高得点になるもの。
タイルが増えるほど、スライドするスペースが減って収穫しにくくなるところは、『ドミニオン』の勝利点カードのようだ。特殊能力と勝利点をバランスよく伸ばす必要がある。一定数のビジネスタイルが取られたらゲーム終了で、配達した船やビジネスタイル、アイスクリームやミルクセーキの合計得点で勝敗を決める。どこでゲーム終了フラグを切るかも駆け引きがある。あと1周あればこのセットができるというところで終わってしまうかもしれない。
ゲームのほとんどが各自の個人ボード上で行われているので、インタラクションが薄いのは今風である。タイルを長距離移動して大量のフルーツを手に入れても、他のプレイヤーは自分のボードに集中していてリアクションが弱くなりがち。そこがちょっと寂しいが、その分他のプレイヤーに邪魔されることなく、先の先まで見据えて思う存分、タイル移動や配置をしよう。時折起こるビジネスタイルやアイスクリーム(拡張ルールではジュース工場の位置)の取り合いは熱い。
Juicy Fruits
ゲームデザイン・C.シュテーア、イラスト・A.ヘラー
ディーププリントゲームズ+ホビージャパン(2021年)
1~4人用/10歳以上/20~50分