スキャンダルは押し付けあい
2人の女優が映画ヒロインの座をめぐって争うトリックテイキングゲーム。数寄ゲームズ(長野)がゲームマーケット2020秋に発表した国産ゲームである。2人用トリックテイキングゲームといえば『乞食と泥棒』(1984年)という名作があるが、こちらは運の要素を減らし、取りたいカードと取りたくないカードをめぐる駆け引きに焦点を当てている。
4つのスートのうち2スート(「ホリック」「スキャンダル」)は取りたくないスート(ラウンドの最後に多く持っているほうが失点)で、2スート(「コケティッシュ」「モード」)は取りたいスート(ラウンドの最後に多く持っているほうが得点)である。毎ラウンド、ランダムにスートの強弱を決めたら、トリックを開始する。マストフォローで、カードがなければ何を出してもよいが、強弱はそのラウンドで決まるというルール。
ポイントは配りきりではなく、1トリックごとに補充するところだ。そのため2人でも、相手が特定のスートをもっているかどうか分からず、イチかバチかで攻めるという場面が生まれる。そして補充はトリックに勝ったほうが公開の場札、負けたほうが山札から行う。いいカードは取りたいが、何を取ったか相手に分かるので対抗されるかもしれない。
補充できるカードがなくなっても、手札がなくなるまで続ける。獲得したトリックは公開情報で、終盤には自分が持っていないカード=相手がもっているカードとなるため、先の先を読んで出さなければならない。
ラウンドが終わったら、得失点を計算して、その数だけ「レッドカーペット」上のコマが行き来する。次のラウンドは、ビハインドしているプレイヤーが手札から何枚か伏せておき、最後に補充できるカードになる。そのためスート切れが起きやすく、欲しいカードと欲しくないカードをコントロールしやすくなるかもしれない(逆に自分がリードになると苦しい)。
3ラウンドでレッドカーペット上のコマが自分に近いほうが勝ち。一進一退になりやすく、勝負の行方は最後まで分からない。心奪われるイラストと相まって、1トリック1トリックに熱中できる作品。
ハリウッド センセーション
ゲームデザイン・しぶ/イラスト・坂本奈津希
2人用/10歳以上/30分