「クニツィアめ~」なレガシーゲーム
建物タイルをプレイヤーボードにできるだけ隙間がないように敷き詰めるタイル配置ゲーム。R.クニツィアのデザインで、『ピクチャーズ』『ノヴァルナ』と共に今年のドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされている。近年、ローゼンベルクが精力的に取り組んでいるテトリスタイプのパズルゲームだが、クニツィアらしさが感じられる。
各自プレイヤーボードと、同じセットの建物タイルをもってスタート。カードをめくって、指示されたタイルを各自がプレイヤーボードに配置する。建物は川辺から置き始め、必ずほかの建物に接して置き、山と森、川をまたぐようには置けない。フリップ&ライトゲームのようなシンプルさだ。
ゲームが進むにつれて空きマスはどんどん狭くなる。置けないタイルや置きたくないタイルがあったら1点減らせば、そのタイルをパスしてプレイを続行できる。あるいはその時点でゲームから降りれば、減点はない。狙った形のタイルが来るまで減点して待つか、それともそれ以上のタイルを諦めて降りるかというジレンマがある。
タイルの順番はランダムであるため、綿密に計画して配置していくことはできない。しかしそれでも、「このタイルが出たらここに置けるように空けておく」「スペースを広く取って、何種類化のタイルが入るようにしておく」といった漠然とした計画は有効である。「両面待ち」とか「嵌張ズッポシ」とかいうセリフも出てきて、パズルゲームというよりも麻雀のような感覚すらある。
おそらく意図的なものだと思うが、タイルのパターンがそれほど多くなく、反転したパターンがない。裏返しにしておくことはできないので、「なんでこのパターンがないんだよ~! クニツィアめ~」と言いたくなる。
得点計算は、タイルの隙間で残っている木が1本1点、石が1本-1点、平原が1マス-1点。『フィット(Fits)』で見られた手法である。シナリオが進むと、周囲を囲まれた井戸や、連続する同じ色の建物のタイル枚数、3色全てが隣接する教会などから得点が入るようになる。
もうひとつ特筆すべき点としてレガシー要素がある。ゲームが終わるたびに、プレイヤーボードに剥がせないステッカーを貼り、プレイヤーごとに異なるものとなっていく。最終的には21ゲームの総合得点を競うが、1位を取ったプレイヤーに失点要素を増やしたり、逆に3位以下に得点要素を増やしたりして、次のゲームが接戦になるようにデザインされている。
レガシーの対戦ゲームでは、ゲームが進むにつれて格差が開いていくことがあるが、そうならないようにしているのはプレイヤー間のフラットな状態を目指すドイツゲームらしい。得点の高いボードほど不利な要素があり、得点の低いボードは有利な要素があるので、毎回ランダムにプレイヤーボードを配って遊んでもよい。これによってレガシーゲームの欠点のひとつである「毎回同じメンバーで遊ぶ必要がある」ということも解決される。
フラットな状態といえば、シナリオは3ゲームごとに封筒に入っており、封筒ごとに新しい要素が追加されるという趣向もそうである。急激にゲームを変化させず、新しい要素に慣れるまでじっくり回すことができる。1ゲームは慣れれば20分くらいで終わり、追加要素の確認も手間取らないので、1日で1封筒分ずつ遊べる。
降りるか続けるかのジレンマ、パズルなのに「待ち」がある賭け感覚、パターンの少なさによる苦しさといったクニツィアらしい悩ましさに、プレイヤーバランスを取るレガシーシステム、1プレイ時間の短さ、3ゲームごとの緩やかな変化というドイツゲーム的な遊びやすさがあって、ワクワクし続けられるゲームとなっている。
My City
ゲームデザイン・R.クニツィア/イラスト・M.メンツェル
コスモス(2020年)(+アークライトより日本語版発売予定)
2~4人用/10歳以上/30分
※「クニツィアめ~」とは、クニツィア作品のメカニクスの悩ましさに直面して、まるで対戦相手ではなく作者と対戦しているような感覚に陥った時、思わずつぶやいてしまう言葉である。