消える大金
ハンザ同盟(Die Hanse)。ボードゲームでよく出てくるテーマである。12~17世紀の約500年間にわたり、北ドイツを中心にバルト海沿岸の貿易を独占した都市同盟で、最盛期には200以上の都市が加盟していた。リューベック、ハンブルク、ブレーメン、ケルンのドイツ4都市が代表的だが、ブルッヘ、フローニンゲン、クラクフなど現在のベルギー、オランダ、ポーランドにある都市、さらには北欧やロシアにまで広がっていた。ボードゲーマーの聖地エッセンも加盟している。
ハンザ同盟は、各地に商館(Kontor)を建てて現地での事務や外交を担わせ、織物やニシンを中心に取引した。富裕な商人は、お金持ち=当時最も高価な貿易品だった胡椒をもっている人という意味で「胡椒袋(Pfeffersack)」と呼ばれ、がめつさへの軽蔑と、富裕への羨望の眼差しを人々は向けた。
このゲームでプレイヤーは金にがめつい「胡椒袋」となり、北ドイツに商館を拡大することを目指す。今はなきゴルトジーバー社の、黄金期を飾る作品のひとつだ。
はじめは、小都市の商館1つしかもっていない。ここから道がつながっている都市に商館を建てるところから始まる。どの道にも金額が書いてあり、その金額を支払わなければならない。小都市から近くの大都市に商館を建てるのは安いが、やがて大都市から大都市に商館を建てていくことになる。道が長かったり、山が険しかったりすると、支払う額はぐんと上がる。このお金をどう工面するかが、ゲームの中心だ。
大都市に商館を建てると、次の手番からそこで収入を得るか、商館を増やすことができるようになる。収入はその大都市での空き地の数。最初は商館が少ないから高収入が得られるが、自分で商館を増やしたり、ほかの人が参入したりすると収入が下がっていく。ゲームが進むにつれて資金繰りが苦しくなるという、独特のプレイ感がここにある。だからその大都市から再び別の都市に商館を建て、版図をどんどん広げていかなければならない。
大都市の中で商館を増やせば収入が下がるが、その大都市の多数を取ると、得点が入る。最終的にはこの得点で勝敗を決めるので、どこで収入を諦めて得点を狙いに行くかがポイントだ。商館を一気に2軒建てられる「通行証」もあるので、ほかの人がいきなり多数を取りに来る可能性もあり、油断できない。
小都市に規定数の商館が建てられるか、全ての大都市で得点計算が終わるか、みんな手詰まりでパスをするかしたらゲーム終了。地域ボーナスと残ったお金の得点を加えて多い人の勝ち。現在から見れば特殊能力もイベントもない、シンプルなドイツゲームである(シンプルだからといって時間がかからないわけではない)。
5人プレイで90分。36ギルダー収入があって、45ギルダー支払うなどというように金額が大きく、「胡椒袋」になった気分。序盤はウィーンを封鎖して、ほかの人が拡大して来られない作戦で安定した収入を得る。しかしこの封鎖に手間がかかり、拡大が遅れたため高い通路を通らなければならなくなり、ジリ貧に。このころ、羽振りがよかったtomokさんの都市にみんなが商館を建て始め、tomokさんが凋落していく。みんなが収入を求めて空き地の多い都市を目指し、みんなが集まって誰も収入できなくなるというのを繰り返した。「お前ら、来るなー!」最後は、得点の大きい大都市を手中にしたcarlさんが1位。減っていく収入の中で、カツカツの陣取りをするのがしびれた。
Pfeffersäcke
C.コンラート/ゴルトジーバー(1998年)
2~6人用/12歳以上/60~90分
絶版