11月16日(日)、東京ビッグサイトにて、ゲームマーケット2014秋が開催された。345団体が出展し、237タイトルの新作が発表された。参加者数は間もなく公式発表があると思うが、6月に行われたゲームマーケット2014春の6500人を超えるものと思われる。
今回も開場の午前10時前から長い入場待機列が形成された。午前1時(!)に到着したという猛者もおり、開場2時間前には、すでに400人が集まっていたという。待機列の先頭の方にお目当てを聞くと中古ゲーム、輸入ゲーム、同人ゲームとさまざまだったが、中古ゲームと答える方が多かった。もともと中古ゲームは一品物である上に、東京ボードゲームフリーマーケットが今年開かれなかったこと、中古ゲームを出展しているブースが今回少なかったことから、需要が高まっているようだ。
午前10時に開場すると、待機列の先頭から会場のあちこちに分かれ、やがて行列ができ始めた。歩行もたいへんなほどである。今回行列が特に長かったのところは、ちゃがちゃがゲームズ、ぼくのたからもの、いい大人達、Domina、カナイ製作所、ジーピー、テンデイズゲームズあたりが目についた。参加者は事前情報を集めて、会場限定や、少部数のところに優先して並ぶものである。
そんな購買客を尻目に、私は午前中ずっと、全ブースの国産新作チェックを行っていた(3時間かかった)。当サイトではリストを公開して情報提供を呼び掛けているが、新作が落ちたり、当日発表の新作があったりするのでチェックが欠かせない。ノーチェックだった好ゲームもあるので割と楽しい作業だ。
お昼にはゲームマーケット大賞審査員である草場純さん、朱鷺田祐介さん、秋山真琴さんと顔合わせ。創設が発表されたばかりのゲームマーケット大賞は、秋・大阪・春と3回のゲームマーケットで発表された新作の中から、広くお勧めできる一品を選ぶというもの。現在メーリングリスト上で細部を協議しているところだが、一度会っておくことで、議論をスムーズに進めるのが狙いである。今回の見どころなどについて、有意義な情報交換をすることができた。
顔合わせが終わると、小腹が空いたので昼食。今回は会場を出てすぐのところに、移動販売の屋台が出ていたのがありがたい。いつもだと会場の隅でカロリーメイトを頬張って済ませるところが、温かいうどんでお腹を満たすことができた。ちなみに(?)『うどんエイリアン』は完売、『ワンコジロー』は間に合わず。
午後は予約品の受け取りと、気になっていたゲームの購入。ここ数年はテーマが自分好みのマニアックな作品しか買ってこなかったが、ゲームマーケット審査員になったことで知らず知らずのうちに気合いが入ったか、先月ドイツで行われたシュピール’14よりたくさんのゲームを買っていた。初めてゆうパックを利用したが、かばんが軽くなってもっと買う破目になったのは言うまでもない。『エッセン・ザ・ゲーム』のようだ。
ポッドキャスト「ほらボド」のインタビューを受けてから、こちらもいくつか気になったブースでインタビュー。
Domina
ゲームマーケット2014春に『NightClan』を発表し、高い評価を得たサークル。『NightClan』は3000部以上のヒットになったという。2作目となる『Latria』も長い行列ができたが、500部用意していたので最後まで買えた。一般ブースのバックヤードには入りきれない量なので、荷物を2つに分けたという。占星術を用いて王位を狙うゲームで、7人までプレイできるのが特徴。
ワンナイト人狼
短時間・少人数で人狼を楽しめることでロングセラーとなっているワンナイト人狼は、ハロウィンver.、モンスターver.、どこでもいっしょver.、超人ver.と各種バージョンを取り揃えて出展。かわいいドット絵のキャラクターデザインだけでなく、役職も少しずつ違うところがコレクション欲をそそる。販売数はゲームマーケット2014春の2倍になったという。
ゲームストア・バネスト
初オリジナル作品の『グローブトロッター』をついにリリース。売れ行きは好調で、試遊してから買う方が多い。イタリア人デザイナーの作品で、カードプレイで世界を旅行するゲーム。はじめはルールが厳しく、手札が悪いとどうしようもなくなることがあったが、中野店長がデザイナーに伝えて改良してもらったという。また、TANSAN&CO.やcosaicを通して海外で印刷製造したノウハウは、その後「世界印刷」に結実することになった。編集者としての才能も見せた中野店長は、第二弾としてF.ラッキー氏の農場ゲームを計画している。
ジーピー
『カタンの開拓者たち:都市と騎士版』と、限定販売の『古代エジプト版』を販売。『古代エジプト版』は100部がすぐに売り切れとなった。『都市と騎士版』はトライソフトによる『騎士と古城』から10年以上経過しており、遊んだことのないユーザーが増えたことに加え、兜が着脱できる騎士コマなど見栄えがよくなって体験卓はいつもいっぱいだった。
いい大人達
ニコニコ動画のゲーム実況で人気を集めるグループ。初の製品版となる『紙とペンとサイコロだけで冒険者になれるゲーム』を求める長い行列ができた。また、体験卓ではメンバーが入ったプレイを観戦する人だかりができ、ニコニコ動画さながらに肉声でコメントをして盛り上がっていたのが興味深い。会場ではほかにも応募制で大賞を選ぶ「自作ゲームフェス」が行われており、ニコニコ動画とのコラボは目が離せない。
ちゃがちゃがゲームズ
今年のゲームマーケット大阪で話題となった福井の創作ゲームサークルが東京に初出展。450部の予約をさばくのにてんてこ舞いで、行列は閉場間際まで切れなかった。「大阪とは桁違い」とメンバーは語っていたが、大阪で話題になっていたものが、ついに東京で買えるようになったというのは大きい。新作ポストカードの『おさわり人狼』も話題を集めていた。
今回感じたのは、出展者と参加者の増加により、ロングテール現象が起きていることである。売れ行きのいいところとそうでもないところが益々はっきりと分かれ、2割の出展者が8割の参加者を集めるような状況に見えた。しかしゲームマーケットの魅力は、この多様なロングテールにある。テーマ的に尖りすぎているもの、システムが破たん寸前のものなど、明らかに売れ筋ではないゲームの中にこそ、参加者にとってお宝のような作品がある。そしてその中からまた新たなトレンドが生み出されていく。この多様性が、世界に誇る日本ゲームをこれからももっともっと面白くしてくれるだろう。
インタビューを終えるともう閉場時間。8時間会場にいて、ゲームを試遊することは叶わなかった。コミケのように2日間開催になったらいいなと思うが、それはまだ先の話だろうか。新幹線の時間があるため、急いでゆりかもめに乗って帰途についた。