秦(Qin)

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狭すぎず、広すぎず

古代中国の荒地に陣地を広げるボードゲーム。3月に初来日するR.クニツィアが昨秋発表した作品で、ファンが彼に期待するシンプルで独特の切れ味をたっぷり感じさせる。

手番には3枚の手札から1枚を盤上に置くだけ。タイルは赤・青・黄の3色あり、同じ色を2マス以上つなげると「郡」、5マス以上で「県」になり、自分の仏塔コマ(この時代、仏教は伝わっていなかったどころか、まだお釈迦様も生まれていなかったような気がするが)を置ける。郡には1つ、県には2つ。

さらに、自分の郡や県につながった「村」(灰色の中立マス)にも仏塔を置くことができる。手持ちの仏塔を最初に全て置ききった人が勝ち。

秦

ゲームをダイナミックにするのが「郡」と「村」の乗っ取りだ。タイルを置いて同じ色の領地がつながったとき、マス数が狭いほうは、付属していた村とともに飲み込まれる。飲み込まれたほうの仏塔は持ち主に返されるので、大きく出遅れるだろう(トップ叩きにはもってこいである)。

一番早いのは2マスの「郡」をあちこちに作って仏塔を置いていく作戦。「県」にするともう乗っ取られないので、ある程度の広さも必要である。しかし、2マスくらいの「郡」はあっという間に乗っ取られる。取ったそばから取られる事態になるだろう。

だからといって乗っ取りを防ぐために自分の陣地を広げていると、仏塔は置けない。「県」はいくら広くても仏塔が2つしか置けないからである。「県」が「郡」を乗っ取るのは、そこに付属する「村」を取るためにすぎない。狭すぎず、広すぎず、その加減は周囲の状況次第。非常に奥が深い。

さらにボードは障害物がない平原と、障害物(池)だらけの湿原の両面になっている。それぞれ戦略が変わり、別ゲームのような面白さがある。プレイ時間が短いので、両面を続けて遊んでもよいだろう。

3人プレイで両面遊んで1時間弱。湿原の面は、障害物のおかげで乗っ取られにくいので、小さい「郡」が乱立した。狭いエリアに逃げこんで小さい郡に稼ぎ1位。平原の面はうってかわって、どこからでも乗っ取られるので、枕を高くして寝られない。大国化するサガエさんの隙間に、別の色の小さい郡を挟み込んで(別の色なので乗っ取られない)また1位。どちらも終盤は激しいマークにあったが、逃げ切れるタイルを引く運もあった。くさのまさんは、ほかの2人と争いを避けて新天地に進出していく作戦だったが、乗っ取りがない分だけ出遅れていた(他人と絡んだほうがメリットが大きいというのは、クニツィア作品の特徴である)。

考えればきりがないと思いきや、手札が3枚しかないのでできることは限られる。戦略性のほどよさが心地よく、これまでの数多くのクニツィア作品と比べてもトップクラスに入ると思う。

Qin
R.クニツィア/エッガートシュピーレ(2012年)
2~4人用/8歳以上/20~30分

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